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親友に報告


 リュリュと思いが通じ合った日に、レイクツリー家に寄らせてもらい、エアリルには付き合うことをきちんと話した。

 まるで父親に対する挨拶のように、二人でエアリルの前に座る。前に来た時には、当たり前のようにリュリュの側に座るエアリルが羨ましく思った。その場所に僕はいると思うと感慨深い。

 エアリルとの付き合いは長いが、こんなに緊張をするのは初めてだった。


「僕から告白をしたんだ。リュミエール嬢はそれを受け入れてくれて…真剣に付き合いたいと思っている。僕は伯爵家三男坊でその…もらえる貴族籍もない。でも、このまま文官を目指し、シルヴァン殿下の側近を務められるように頑張るつもりだ」


 リュリュは気にしないと言ってくれた。両親にはこれからの二人を認めてもらいましょうとも。

 エアリルは香りのよい紅茶を一口くちにつけると、呆れたように僕を見た。


「姉上にまだ話していないの?君に関しては心配はしていないよ」


 暗に僕の家族のことを示しているらしい。

 リュリュが僕を伺うように見る、美しい紫の瞳が僕を映した。


「それはまだ。近いうちに」


 家族にも了承を取りたいと思っている。反対をされることは考えていない。でも、人づてではなく僕から話したい。


「そう。まぁいいけどね」


 さして問題もなさそうにエアリルが微笑む。リュリュもすぐに問い詰めるようなことはしない。正直、金銭面での心配は僕にはない。ビンチョス家は伯爵籍で領地無しとは言え、諜報関係で副業を頂いているから。でも、爵位だけは考えないといけない。公爵家のお嬢さんと将来を見据えて付き合いたいのだ。色々と準備も必要になる。


「領地にいる両親にも近いうちに手紙を出しておくから、心配しないでいいよ」


 リュリュが少しだけ不安そうに、エアリルに言う。


「わたくしから書きましょうか?」


「ちょうど、父上に相談したいこともあるから、僕から出しておきます。マイク、姉上のことをよろしく」


 エアリルは姉の不安を取り去るかのように微笑み、少し硬さの残る声で告げる。


「ありがとう…エアリル」

「姉上、お茶をするなら制服を着替えた方がよろしいのではないですか?」

「あ、そうね…」

「僕はここに居ます。エアリルと話もありますから…」


 僕がそう言うと、嬉しそうにリュリュがメイヤとともに部屋を後にした。


「急だね」


 リュリュがいなくなった部屋で、エアリルがすんっとした表情で言った。うん、怒っているよな、わかるよ。


「僕も…叶うなんて思っていなかった。正直、彼女から言われるまで」

「姉上が、ヴィンセント殿下と踊られた後に、君を追って出て行ったから、何か決心したとは思ったけど…忌憚なく言えば想定外だった。これからどうするつもり?」


 エアリルらしい、率直さだった。別れろではなく、これからの話。


「両親に相談をして、余っている爵位を調べるかな。王都から離れればあるかも」

「マイクは王都から離れられないだろう?それにうちの両親が今後いくら大人しくしてるとは言え、許されるのは伯爵位からだよ」


 先日、災厄の件でエアリルとご両親が話し合ったのを見ていたが、確かにそこまでは甘くなさそうだ。

 晩餐の席で会った時も、僕をビンチョス家の駒くらいにしか見ていなかった。


「できうる限りの努力をしよう」


 今はそれしか言えない。


「僕は…マイクが厄災での…姉上の希望になってくれることを祈る」


 そう言って、エアリルは悲し気な色をのせた瞳を伏せた。

 厄災のことを思えば、リュリュを連れて逃げてしまいたい。手に入ったのは幸いだけではなく危惧や不安もセットで来た。


「彼女の側にいる努力も最大限に…いや、僕の生涯をかけて」


 そう言うと、エアリルは少しだけ寂しそうに、目を細めて笑う。


「僕から姉上を取る気が満々じゃないか」

「そろそろ…外でも呼ばせてほしい。昔の約束を。君の親友としてエアルと」

「……こんな時ばかりずるいな」


 エアリルも不安なのだ。姉を守ろうと。いつでも毅然とした態度で周りを牽制しながら、子供らしいこともなく過ごしてきたと思う。


「そりゃ、これからは君の面倒もみたいし」

「それを言うなら僕のほうだよ。だいたい君は子供の頃から…」


 目が合って、息を零すように笑みがこぼれる。


「よろしく頼むよ」


 先ほどと同じ「よろしく」なのに、柔らかさののった声だった。


「こちらこそ」


 リュリュが戻ってきて、三人での会話も弾む。


「…今度の日曜日に植物園に行きませんか?」

「三人でかい?」


 エアリルが目を丸くする。


「楽しそう!エアル忙しい?」

「んー、植物園には飽きるほど行ってるしなぁ…ああ、街歩きでマイクのお勧めの店のランチをご馳走になれるなら付き合って上げてもいいよ」

「エアルったら」


 愛らしく、弟をとがめるリュリュが微笑んだ。


「姉上、僕をダシにしたいなら、それくらいの見返りは必要ですよ」

「ダシになって下さい!」


 そう言って両手を合わせる。


「いや、そうはっきり言われると」


 笑いながら、三人で約束を合わせた。いつか、遠い未来に思い出して三人で笑えるといい。そんな思い出を今は積み重ねたい。




お疲れ様です。

いつも読んで下さって、本当にありがとうございます!


デートシーン書きたいなとずっと思っていました。

でも、彼なら報告が先だろうと思い入れたエピです。

次回は少し甘酸っぱくしたいです。いや、マジでw

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― 新着の感想 ―
植物園デート+街歩きランチデートなのかな? (´・ω・`) 決戦前のちょっとした甘酸っぱい息抜きになると良いですね〜。 (*´ω`*)
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