表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

守るのは…


お疲れさまです。よろしくお願いします。

 春まだ浅い、ひんやりとした朝の空気に瞼が震えた。

 覚醒する意識の中で、昨日の入学式のことをゆっくりと思い出す。 

 三人目の悪役令嬢であるコリンヌ・マイオニーは、誰の手も取らずに現れた。

 その場に推しがいなかったから?とも考えられるが、その後も同学年のエアルとも、アイシュア様にも近づくことはなかったらしい。

 柔らかな掛布の中で寝返りをうてば、青みがかった銀色の髪が目についた。背を覆える程に伸ばした髪は、貴族子女としての嗜みに近い。

 本当はもう少し短い方が、自分としても扱いやすくて良いのだけど。


「遠目から見ても可愛らしい方だったわ」


 温かみのあるオレンジ色の髪がちらつく。

 にこにこと殿下方に打ち解けた様子は、コリンヌをヒロインとして選んだ時のイベントのようだった。


「エアルか、アイシュア様がお好きなのかしら…」


 もし、エアル推しなら、悪役令嬢は私である。もちろん邪魔をする気はないが、そう取られる場合も多々あるのではないかしら?

 高位貴族になればなるほど、自分の派閥が良かれと思ってしてくれる行動が多い。

 姉から見ても、エアルは綺麗だし、優秀でとても人気が高いから、コリンヌがゲームの通りにシナリオを進めるならば、きっと忠告という名の呼び出しも受けるだろう。

 その時に、私の名前をだされたら?

 エアルの事は信じている。でも、好きな人の肩を持ちたくなるかもしれない。

 断罪をされた時のリュミエールは、髪を切られ、喉をつぶされてから修道院送りか、エアリルによって領地監獄での幽閉である。

 喉を潰されたことによって、怨嗟も吐けず、病にかかっても人を呼べず、冷たい獄中で生涯を終える。


「ナレ死…」


 ふるりと震えたのは、気温のせいだけではない。もし、ゲームの強制力があったら?


「もしもの時は、絶対に助けにいくからね!大丈夫、監獄なんて、赤髪兄妹が物理でぶち壊してやるわ!」

 以前、ゲームの強制力を話した時に、親友がかけてくれた言葉が蘇った。

「エアル様にかぎって、リュミを幽閉するなんてあり得ないけどね。どちらかと言えばお嫁に行かせたくなくて、領地に二人で立てこもりそう」

「赤髪兄妹…なんて心強い。だったら、マリアがもしもの時には、銀髪姉弟が必ず駆けつけるわ。エアルに舌戦で勝てる人なんていないもの」

「わかるー!」


 くすくすと二人で笑いあう思い出に後押しをされる。

 

「大丈夫。大丈夫だからね。リュミエール」

 

 自分と、リュミエールであった孤独な少女に言い聞かせるように、小さく呟いた。

 控えめなメイヤのノックが聞こえる。


「どうぞ、入って」

「おはようございます。リュミエール様…お顔の色が優れませんが、御気分がお悪いのでは?」

「いいえ、今日から授業が始まるでしょう、少し緊張をしてしまって眠れなかったの」


 カーテンを開ける手を止めると、メイヤが私を覗き込む。


「朝食は食べられそうですか?医師を呼びましょうか」

「大丈夫よ、もう起きるわ」


 悪役リュミエールの時には、メイヤは冤罪をかけられ、心を壊してしまうキャラだった。

 起きてはいない事とはいえ、申し訳なさがある。彼女も守らないと。


「リュミエール様?」


 じっと見ていたせいか、訝しげにメイヤがそっと、私の額に手を添えた。


「お熱はないようです…お風邪を召されたのでなければ良いのですが」

「色々とごめんなさいね。メイヤ」

「な、何がですか、何かご心配ごとでも?今後の授業でしたら、リュミエール様は優秀でいらっしゃるので、全く心配はありません!クラス替えで、マリアベル様とは離れてしまい、少しお寂しいかもしれませんが、わたくしがおります。今年からはエアル様もバルもおりますから、大丈夫ですよ」

「そうね。ありがとう、メイヤ」

「お守りいたします!」


 この後、メイヤに事の次第を聞いたエアルが、殊の外心配をし、薬湯を飲まされ、制服の上からは暖かなショールを追加、馬車内ではひざ掛けまで用意をしてくれた。

 教室の前まで手を引いてエスコートをすると、持っていてくれた鞄をメイヤに渡し「後は頼んだよ」と念をおす。

 エアルとメイヤ、そしてエアルの従者であるバルも添えて、ぞろぞろと現われた私を、生温い目をしたマリアが、可笑しそうに見ていた。


「昼に様子を見にきますから一緒に食べましょう。胃に優しい物を届けるように言ってあります」

「本当に大丈夫なのよ、エアル。心配しないで」

「姉様を守るのは弟の特権ですから、姉様であっても取り上げられません」

 

 ……うちの子、もしかしたら、過保護(スパダリ)すぎるのではないかしら。

  




コリンヌ、まだ暴れませんでした(笑)

エアルが暴れました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ