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レイクツリー家の晩餐の誘い

お疲れさまです。

いつも読んでくださって、ありがとうございます!

本当に嬉しいです。

は、もしかして60話目です。あとがき書きますw

少し早めの投稿します!


 噂はまことしやかに流れる。王城、王都、王城に勤める者の口から、市井の者へと、近隣の領へと。学園もその例外ではなかった。

 ビンチョスは、瀟洒なレイクツリー邸の門をくぐる。広い庭はすでにライラックの盛りを超え、美しく剪定をされていた。所作の落ち着いた老年の執事が、ポーチで出迎えをしてくれる。


「エアリル様がお待ちです。どうぞこちらへ」


 賓客用の応接間に通されると、程なくエアリルがバルを従え現れた。


「ようこそマイク、先日の書簡は興味深く読ませてもらった。僕ができることは、全て終わっているよ」


 さすがエアルだ。すでにアスパーニャへの抗議文を済ませ、送っているらしい。


「仕事が早いね。今日はご招待をありがとう。お腹を空かせてきたよ」

「期待をしてくれて良いと思う。姉上も今日を楽しみにしていた」


 色々あったので、晩餐のお誘いは流れるかと思っていたが、エアルは招待状を送ってくれた。


「リュミエール嬢の体調はどう?」

「もうすっかり良いんだ。魔力酔いの一番の薬は休養以外にないからね。来週には学園にも戻るよ。それより、スルト侯爵家の件はびっくりしたよ。スルト領地でとれる銀の産出は特化していたから、まさかゴーティ領の銀を内密に採掘していたとは思いもしなかった」


 聞きたかったリュミエール嬢の体調を聞けたのは、僕には一番の収穫だった。


「おやぁ、スルト侯爵家のことなんて書いていなかったけど、話が早いな。銀の採掘に関しては、王城に調査を依頼していたのは、ゴーディ頭首のハウネ様だよ。アイシュア様もやることが増えて大変だ」

「今しばらくは証拠固めに泳がせるとおっしゃっていたな。新領主となるならば、ちょうど良い功績になる。僕も少しお手伝いをすることにしたんだ。アイシュア様は書類仕事は得意ではないからね」


 納得した。アイシュア様から相談を受けていたらしい。

 若いながらも、エアリルの仕事は完璧だ。


「それはいいね。最高の参謀だ」


 互いに、揶揄うように笑い合うと、控えめなノックの音がした。


「お食事の準備ができております」

「行こうか、マイク」


 晩餐の間に案内をされると、リュミエール嬢が入口で待っていてくれた。淡い茶のシフォンの生地に、銀糸で花の刺繍をされている上品で美しいドレスだった。


「お久しぶりです。ご体調が戻られたと聞きました」


 手を取り、口づけを落とすふりをする。


「マイク様にもご心配をおかけいたしました。お見舞いをありがとうございます。美味しかったですわ」


 気に入ってもらえて良かった。


「今日は父も母も一緒なんだ」


 おう、それは緊張をする。殿下方とは軽口もきけるが、レイクツリー公爵に対峙するのは初めてだった。席につき、挨拶を交わす。エアルとリュミエール嬢の美貌は、母君であるルシエラ様似だった。


「ビンチョス伯爵家の方々にはお世話になっている。エアリルとも仲が良いと聞く、歓迎するよ」


 レイクツリー公爵は好意的に迎えてくれた。普通であれば伯爵家三男にする挨拶ではないから、これはビンチョス家の功績を知っている家の対応である。王家に近しい程、我が家を知ることになるから。


 前菜から凝った料理がならんだ。レイクツリー湖で取れる小鮎のフリッターは軽く食べやすい。マリネの酸味で口がさっぱりする。メインの塩釜で焼かれた牛は、柔らかく塩分もちょうど良かった。


「口に合ったかな?」

「はい、大変美味しくいただいております」

「これはマイセスインから届いた肉でね。一度は断ったんだが、何度も届いてね。肉には罪はないだろう?美味しくいただいている」


 隣国マイセスインか…あの国も王政で、酪農が有名な国だ。最近あったことと言えば…何か聞きたいことでもあるのか。


「姉上への釣書きは、すっぱりお断りをしたはずですが」


 エアルが、眉根を寄せる。


「どうやら、思いのほかご執心らしい。困ったものだよ」

「お父様…」


 リュミエール嬢に望まない婚約の打診か。思ったより気分が悪い。隣国は遠い。


「失礼ですが、レイクツリー公爵家に来るとしたら、高位貴族様になりますね?」

「よく分かったね。中々断りづらくてね」

「お名前は伏せますが、最近あの国では尊き方の有責にて、婚約破棄があったと聞きます。そのせいで自国では新しい婚約者を探すのが難しくなったとも…レイクツリー公爵家にそのような話を持ち込むとも思えませんが、いや、詮無いことです。お忘れ下さい」


 薄く微笑むとレイクツリー公爵も、ワインを口にした。


「いや、大変参考になったよ。マクシミリアン君」


 急に名呼びか、思い当たる節はあったらしい。


「どうぞマイクと、レイクツリー公爵様」

「ありがとう、私のことはミンストで良い」

「ミンスト公爵、大変光栄です」


 それからは、レイクツリー公爵領への誘いやエアリルの薬科作業のことで盛り上がった。


「では、私と妻はまだ公務も残っている、ここで失礼をするよ。ああ、エアリル、見てほしい書類がある。執務室まで来てもらっても良いか?」

「わかりました。マイク少し待っていてくれ」


 リュミエール嬢も一緒に行くかと思ったが、にこにことエアルを見送る。


「メイヤ、新しい紅茶を淹れてくれる?」

「はい。少々お待ちくださいませ」


 あ、僕が好きなヤツ。リュミエール嬢がブレンドをしている物だった。 


「先ほどはありがとうございました。助かりましたわ」


 マイセスインの縁談の件か。あれは自分が嫌だったからだ。手が届かなくても、目の届く場所にはいて欲しい。

 最近やっと自覚をした。僕は目の前の美しい人が好きだ。

 偶然、今日のドレスが、僕の色だったことで浮かれるくらいには。


「お気になさらず、偶々、耳にしただけですから」

「でも、マイク様はいつもわたくしが困った時に、手を差し伸べて下さいますから…それも含めてです」

「レイクツリー公爵家のお役に立てているならそれだけで…」


 自覚してからは最悪だった。伯爵家の三男坊、目立たず騒がずの諜報一家。自分で功績を上げることもできない、殿下方の従者をしていても子爵が精一杯だ。どうあっても公爵家令嬢とは、釣り合わない。

 そして、そんな計算をしてしまう自分にも呆れる。


「お優しい方」


 少し寂しそうにリュミエール嬢が微笑む。


「エアリルとは親友ですから、当然です」

「…そうですわね。エアルとはこれからもよろしくお願いします」


 あれ?なにか間違えたか?


「戻りました。どうかした?」

「いいえ。エアルとこれからもお友達でいらしてとお願いしたのよ」

「また、母上みたいなこと言ってたんですか、姉上は」


 笑いながらエアルがリュミエール嬢の隣に座る。エアル、僕はエアルみたいに、何も言わずに傍に座れる権利が欲しい。


「そろそろ部屋に戻りますわ。マイク様、今日はありがとうございました。また学園で」

「ええ、お会いしましょう」


 当たり障りのない挨拶をかわす。僕はその日の間違えに気が付けないままだった。



 レイクツリー公爵夫妻side



「あなた、リュミエールの縁談の話は、晩餐の際の会話ではありませんでしたわ」


 妻が少し怒っているみたいだ。


「うん、でもビンチョス家の子だろう?ついでに聞いておこうかと」


 自分でも少し動いてみたが、思うように情報が集まらなかったのだ。あまり長引かせてもマイセスインに有利になる。


「殿下方の従者になるくらいだ。やはり優秀だね」

「リュミエールが気にしておりましたわ」


 頬に手をあて、考えている。


「わかったよ。降参だ。可愛い娘が気になる相手の色を纏っていたから、少し意地悪をしたかっただけなんだ。ちゃんとマイセスインは断るし、彼のことも認めているよ。まだ若いんだ。二人がどうなるかなんて、わからないだろう?それに、マクシミリアンはリュミエールのドレスを褒めていなかった」


 妻が、ふふっと吹き出す。


「言質はとりましたわ。あなたお忘れにならないでね」


 どうにも娘同様に、かわいい妻には敵わない。 


これから少し話が進むので、その前の閑話的にいれました。

うん。見事にすれちがった。

それもまた、甘酸っぱい。好物(笑)





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