バタフライエフェクト
閑話休題
少し上の、俯瞰された場所からのお話しを入れてみました。
それは、創世の島と呼ばれ神々に長く愛された島国の話。
この世界の行く末には道筋があり、それは水の巫女が自分を愛してくれる伴侶に出会える、叙情詩だったかもしれない。
火の姫騎士が愛する男を支え、時に従える話。
土の乙女が国母となり、国を繫栄に導く物語だったかもしれない。
とはいえ、それも決められた枠組みでのこと。
『面白い』
誰かがそう呟いた。人というのは本当に面白い。
愛で人を生かし、愛で人を殺し、欲で繁栄もすれば、欲で国も殺す。
だから放って置いた。
枠組みの中の魂が変わったとて、ほんの百年。
ならばこの退屈を幾ばくか、満たしてもらおう。
それは小さな蝶の羽ばたき。
双子の王子は毎日のように城に会いにくる、令嬢たちに辟易としていたはずだったが、現実はそんな事もなく、会うことすら稀だった。
兄は子供の頃から我儘で周りに迷惑をかける妹を疎んじていたはずだった。ところが、実際は下の者にも思いやり深く、ひたすらに自分を慕う、幼気な姿を見せる妹を兄は殊更可愛がった。
身体の弱かった自分の代替えとして、教育を受けてきた姉は、孤独の中で家族を顧みることはなかった。美しいが感情も乏しく、弟である自分に笑顔さえ見せたこともない。姉に憎まれているとさえ思った弟は、いつの頃からか姉とは疎遠となった。しかし、実情は療養先の領地に共に来てくれた姉は、いつも自分を案じ、誰よりも優しかった。
彼女たちの行動が、周りの者に波状効果をもたらす。
王子たちの学友と選ばれた少年の一人は幼学院で、主席を脅かされることもなく、傍付き候補となった少年の口からは、王子たちへもたらされる噂話に彼女たちが上がることもなかった。
蝶の羽ばたきは、土の乙女が現れることで再びおこる。
光満ちた手が彼女を掬う。
『次は何を見せてくれるのか』
うっそりと微笑んだ誰かの独り言は雑踏にごちた。
次からコリンヌ大暴れになるか?




