そろそろご退場。
お疲れさまです。
いつも読んでくださって、ありがとうございます!
体調不良につき、少しお休みをいただいてしまいました。
やっと復活をしました。コメント等をありがとうございました。
今後とも、よろしくお願いを申し上げます。
「あっはっはっ、本当オモシレー女だな、コリンヌは」
執務室にシルヴァの笑い声が響く。
「シルヴァ、笑い過ぎだ。さすがに人払いがしてあるとは言え、外に聞こえる」
そういう自分も口元が緩む。クノンスからの報告は、確かに面白い話だった。
王妃のお茶会も終わったというのに、アスパーニャの王女たちはなぜか帰ろうともせず、薔薇園のある花壇にふらふらと現われた。加護中であったコリンヌは、集中が途切れたことで、土への制御をしきれず、結果として彼女たちは土に足を取られ、転んでひどい有様だったらしい。俺たちを探していたそうだから、なんにせよ、お手柄だ。
「で、アイシュアはどうしてここに?」
不思議そうに、シルヴァンが聞いた。マリアベルと帰るはずだったアイシュアが、クノンスと共に執務室に訪れたのを、私も気にはなっていた。
「私はクノンス殿に門前で呼び止められて、第二騎士団に動いてもらいたいとだけ、聞いております」
アイシュアは、アスパーニャの件は何も知らないはずだが、クノンスが必要だと手配をしたのなら、異存はなかった。
ノックの音がすると、ビンチョスが何枚かの書面を持って現れる。ビンチョスの表情が硬い、
「ご苦労だった。…リュミエールの様子は?」
「…エアリルが付き添い帰りました。詳細は妹のエリーチカより簡易ながら、書面にて報告が上がっております。まず、こちらから確認をして下さい」
ビンチョスが書面を回す。お茶会の細部を書かれた内容は、想像をはるかに上回る内容だった。
「わざと…お茶を倒したというのか…王家のお茶会で?」
「エリィは加護的にも目ざとい娘です。何か違和感を感じ、注視をしていたのでしょう」
「何の目的が?お茶をこぼす事で目を引き、薬でも盛りたかったのでしょうか」
アイシュアの言うことには一理ある。薬を盛る際にはよく使う手だ。
「大事になる前に、リュミエール嬢が覆水盆の術を使い、元に戻した…確かにそれだと、祝詞を使う間もなかっただろう」
逆に考えれば、魔力酔いを起こしながらも、お茶会を乗り切ったのだ。控室を出るまで悟られもせず。リュミエールの持つ、貴族子女としての矜持を感じた。
「マリーに、イヤリングを強請ったとは?王女とて、我が国の公爵令嬢から、何か取り上げようなどと許せるものではない」
「出し渋ったとは…なんて言い方だ」
シルヴァが吐き捨てるように言うと、アイシュアが頷く。
「この王女を第二騎士団にて、引き出せば良いのですか」
アイシュアが行った言葉に、クノンスは首を振る。
「市井に降りた弟から、上がった書簡です。三日ほど前に、王都南西のレイニー療護院に、平民街で行き倒れていた者が何人か運び込まれました。その一人が、ジルニス・スルトと名乗っているそうですが、スルト侯爵家に連絡を取ったところ、相手にされなかったと話しております。書簡を届けましたが、目の前で破られる始末。仕方なくこちらに持ってきたそうです」
皆で回し読む。内容はひどい物だった。第三騎士団への不平不満から始まり、このままでは、騎士としてやっていけなくなるので、一先ず王都に帰ろうとした。その際に豪商の娘たちに護衛を頼まれた。道行も一緒ならば人助けにもなると考え、共に王都へ戻ってきたが、女たちの雇っていた別の護衛達に襲われ怪我をして動けない。レイニー療護院にいるから早く迎えに来てくださいとある。
「兄上、この豪商の娘と言うのは…」
「ああ。カルナラとミネアだろうな」
ジルニスも顔だけは良い。男漁りの末に王都まで連れてきてみたが、必要がなくなったので手放したのだろう。不快感が沸き上がる。
「……どう考えても自分で選択をして、第三騎士団から脱走をしてきたと思えるのだが」
「その通りです。アイシュア様、念のために第三へ書簡を出して確認をしたところ、二週間ほど前から、無断で姿を消し皆で探していたそうです」
クノンスが別の書簡を出してくる。
「王立の犯罪者用療護院の転院届けです。どのような訳があったとしても、騎士団を無断で脱走をしたとなれば刑罰が必要となります」
「アイシュア、ジルニスを迎えに行ってやってくれ」
「承りました」
「カロヌロアの貴族とあろう者が…」
今まで冷静に報告を述べていたクノンスだが、苛立ちは隠せなかったらしい。
「知らなかったとは言え、アスパーニャの王女に手をだしたのだ。責任は取るべきだな」
「あの王女たちが、カロヌロア貴族に嫁入りするのか?冗談ではない」
「ああ、冗談でも嫌だな。だから、早々にご退場を願おう」
足を組み替え、その場にいる全員に告げる。
「スルトの醜聞だ。ジルニスが侯爵家を継ぐことは難しくなった。ジルニスがアスパーニャへ行くか、カロヌロアの市井に下るか…だが王女たちの行った非人道的行いもこのままにはしない。アスパーニャ国王とて、この事を知れば娘たちを廃嫡するのではないかな」
ちらりと、ビンチョスを見る。先ほどから一言も発することはない。
「醜聞を撒くのはビンチョス家にお与え下さるのですか?」
クノンスが聞く。
「ビンチョス一族に頼むしかないだろう」
クノンスと共に、ビンチョスが静かに微笑んだ。
* *
エリーの書いた書面を見た時から、頭が冴え冴えとしていた。怒りがすぎると人は正常な判断はしづらいと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
この場にいて、アスパーニャの王女、ジルニス、スルト侯爵家をどう追い込もうかを考える。
王城から家族たちの待つ自邸へと兄上と戻り、執務室での殿下方との話し合いを告げる。今日は久しぶりに、市井に降りたアルバルト兄上が顔を出していた。家族揃っての夕食は久しぶりだ。
メニューは牛肉のブルギニヨンだった。マデラワインが効いていて美味い。
食事がすむと、エアルから以前、土産にもらったお茶が配られる。これは僕がだすように命じた、リュミエール嬢がブレンドをしていると聞いたお茶だ…具合は大丈夫だろうか。
「これ、好きよ。爽やかで、喉に良いのでしょう?」
「ああ。エアルがそう言っていた」
エリィが「これから喉を使う、私たちにぴったりね」と微笑む。
母が居住まいを正し、周りを見回すと口を開いた。
「マイク、わたくしたちの務めを教えてちょうだい」
「はい。母上とエリィはまず、お茶会であったことを、まことしやかにお流し下さい。誇張はいりません。クノー兄上はジルニスの件はなるべく、スルト家の耳にはいらないように情報操作を、アイシュア様が迎えに行き、ジルニスから、その口述を取るまでは会わせません。アルト兄上は市井の一族へ、アスパーニャの王女たちの醜聞を撒くようにと。父上は陛下へのご報告をお願いします。それでは…祝詞を唱えます」
瞳を閉じ、胸元に手をあてる。すべての音が消える。
「ケイリューケイオウス神の送り子である、マクシミリアン・ビンチョスが願う、ビンチョス家マーキュリオの、集い子たちが撒く伝話の速さを。人々の口に上がりし、口話のすべてを我が一族へともたらし賜え」
「「「もたらし賜え」」」
家族たちが思い思いに呟くと、音がもどってくる。
ごっそりと力が抜け落ちた気がする。
情報を司るケイリューケイオウス神の加護を持つのは僕だけだから、大きな催事の際には僕が願う。
家族たちはケイリューケイオウス神の持つ杖であるマーキュリオ神の加護を持つ。ビンチョス家は諜報だけではなく、噂を撒くのも上手いのはこのためだ。
「お腹すいたな」
「マイクは相変わらず、加護を使うとお腹がすくのかい?」
久しぶりに会ったアルト兄上が、柔らかく笑う。
「うん。何だろう、ケイリューケイオウス神は腹ペコなのかな?」
「ふはっ、早くお腹いっぱいになってもらわなくてはいけない。妻がパイを持たせてくれた。食べるかい?」
「もちろん。義姉上のパイは美味いからね」
リュミエール嬢が、嬉しそうに王都のカフェで、季節のパイを食べていたのを思い出す。
あれは桃だったか。明日、お見舞いのカードと共に届けさせよう。そう考えると、ざわついていた気持ちが少し上を向く気がした。
いまだ、声がウィスパーな李池ですw
今しか歌えない歌を歌いにカラオケに行きたいです。
やっと、アスパーニャに返せます。他面々にも
ご退場を願います。
ビンチョスさんち、やっと書けましたw




