そして、コリンヌの逆襲。
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温室に飛び込んできた侍女に、話を聞いたエアリルが顔色を変えた。
「姉上が魔力酔い?どういうことだ」
「お茶会の際に祝詞なしの詠唱をしたそうです。会場にわたくしは入れませんから、詳細はわかりかねますが、マイク様が門前まで送って下さっております。エアリル様にお伝えするようにと」
「わかった、バル、メイヤ、行こう」
「はい。アイシュア様、マリアベル様も付き添っておられます」
「了解した。御前を失礼しても?」
アイシュアが私たちを伺う。揃ったように頷いた。
「ああ。大事にするように伝えてくれ」
様子をみに行きたいが…ビンチョスが付き添っていることに胸がざらつく。
「失礼いたします」
エアリルたちは礼をとると、急くように場を後にした。
「何かあったのでしょうか…」
コリンヌが心配そうに、エアリルたちの去った後を見ている。
「魔力酔いは、私にも治せないから…とにかく安静にして加護力が戻るのを待つしかない。一応、後から文で聞いてみるよ。体調だけなら、私でも癒せるからね」
ジュリアスが、コリンヌの頭に手を置く。
「…お願いします」
ぺこりと頭を下げた。
「ほら、今日は薔薇園の方も加護を広げるんだろう。顔を上げなさい」
「わかりました。薔薇園は私一人でも大丈夫です。ジュリアス様はレイクツリー家に文を書いて下さい」
「わかったよ。文を出したら行くから」
日よけ帽を被り直し、コリンヌが温室から出ていく。
「コリンヌはレイクツリー公爵令嬢と仲が良かったんですか?」
キリアンが、不思議そうに聞く。
「ハンカチを頂いたお礼に文を出したら、返事をいただいたそうだよ。とても喜んでいたね」
メイドに文の準備をさせながら、ジュリアスが答える。
それにしても、コリンヌはずいぶんとジュリアスに懐いたものだ。
「俺たちが、顔出していた時には元気そうだったよな」
「ああ、何かあったのならその後だ」
思いだしても、おかしなところはなかった。
「ビンチョスが戻り次第、私の執務室へ」
シルヴァンがカウチから立ち上がると背伸びをする。
「どうにも、お茶会は鬼門らしいね」
「後でマカロンは届けさせよう。私たちだけでは消費しきれない」
「ん。」
残念そうなシルヴァンに声をかけ、キリアンたちにお開きを申し出る。執務室に戻る私たちが、薔薇園でのコリンヌの活躍を聞いたのはその後だった。
* *
「リュミエール、大丈夫かなぁ…」
俺は光の祝詞を諳んじ、続けて土に触り加護を唱う。ジュリアス様に祝詞を忘れると、ひどい魔力酔いを起こすから、絶対にやってはいけないと言われたことを思い出す。
俺は一度だけ、忘れて使ってしまったことがある。その時は体の力がごっそり抜けるというか、立っていられなくなって、目を回し倒れた。
それ以来、祝詞が間に合わない場合は必ず加護神の名を唱う。ゲーム内なら無詠唱なんて当たり前でも、ここではヤバいのだ。
ざわり…と植物たちの空気が変わった。
「どした…?」
顔を上げると、派手なドレスを着た女性が歩いていた。向こうも俺に気が付いたらしく、近づいてくる。なんか知ってる顔だ。たぶん、名前も知っている。
「庭師なの?どこから内城に入れるか知ってる?」
黒髪のミネアが話しかける。
「広い庭ねぇ、足が痛くなったわ。答えなさい」
こっちが、カルナラだ。
二人して俺を凝視している。これは当て馬イベントで…もし、俺の勘が当たっていれば、リュミエールが具合が悪くなったのはこいつらが原因だ。
「王子たちは庭に出ることはないの?」
「さっきまで会ってましたよ。私」
二人は急に喜色ばむ。
「え、どこで、まだ居るのかしら」
「どうすかね、でも知ってても教えない」
「はっ?」
膝をつき、地に両手を添える。これが俺のスタイル。
「地母神テラーアウに送り子のコリンヌが乞う。緑なす大地に奮う光の御力を、この地に与え賜え」
土を掘り返し、緑が揺れた。ざわざわと。
「きゃ、なに?」
土にヒールが取られたのか、カルナラが派手に転んだ。寸前に手を掴んだミネアを巻き沿いにして。
「こんなとこまで入り込むから、そんな目に合うんだよ。さっさと国に帰れ」
「な、な、私たちが誰だと思って…」
「知らね。ただの闖入者だろ。ここはすでに内城だからな、見回りの騎士呼ぶぞ」
「私たちは王女なのよ!あんたこそ侮辱罪で、反対にひどい目に合わせてやる!」
そうカルナラが叫んだ時だった。
「コリンヌ、こんなところにいたのか?」
ジュリアス様とキリアン様が、つる薔薇アーチの向こうから声をかけてきた。
背を向けて座っていた俺は、きゅるるん♪と音がでそうなほど、態度を変える。
「ジュリアスさま~キリアンさまぁ、この人たちが、加護力を使っていたら急に…」
「誰だ。ここは一介の者は入れない場所だぞ!」
キリアン様がカルナラ達と俺の間に入る。
きゃーすてきぃ!
「大丈夫?さ、手を…」
ジュリアス様が手を取って立たせてくれた。
「ありがとうございます。こわかったですぅ、王子たちは庭に出ることないかって…くすん」
「わ、わたくし達はアスパーニャ国の王女ですわ。王妃様のお茶会に呼ばれていて…そう、迷ったのです。そして道を聞こうとしたところ、この庭師の娘が…」
ミネアがヒールを脱いで立ち上がる。
「コリンヌは庭師などではない。大地の加護を持つ乙女だ!」
キリアン様が大変怒って下さってます。ありがたや。
緑が多く、果物や香辛料、穀物などの生産が高いアスパーニャ国で、もっとも知られているのが、地母神テラーアウだ。
「…この娘が」
「私はカロヌロア国光神殿、副神官を勤めている、ジュリアスと申しますが、うちのコリンヌに何か問題があったのでしょうか?」
どーもー光神殿のコリンヌでーす!超イケメンジュリアス様に睨まれて、びびってますね。
「も、問題どころではないわ、いきなり土が掘り返って、足を取られて転んだのよ!」
「加護中に入ったからだ。コリンヌはキュービス侯爵家の寄子にあたる。何かあるなら、私が聞こう」
キリアン様が従者に視線を送ると、従者が見回り騎士を呼びに走った。
表向きは丁寧だが騎士たちに連行をされる、泥だらけの二人を見て、俺は心の中でガッツポーズをした。妻と嫁の仇は討ったぞ。返り討ちにしてやった!
その後に、ジュリアス様からこっそり「やりすぎだ」と御叱りの言葉を受けた。
…バレテーラ。
前話でビンチョスが、しっとり終わったのに
コリンヌに任せるとこうなりますw




