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王妃様のお茶会 4 そして…

お疲れさまです。

いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。

嬉しいです!

誤字報告をありがとうございました!


 王妃とのお茶会は和やかに進んでいく、王妃は各テーブルを侍女を引き連れてまわり、声掛けをしている。王妃のいないテーブルでは、当たり障りのない会話が続けられた。自領の名産の生産性や国民性などを質問されても知らない。そんなこと、ミネアに聞きなさいよ。

  隣に座るのはカロヌロア国公爵家の娘だと聞いた。自分と同じ赤いブロンドを持ち、なかなかに愛らしい娘。わたくしの方が素晴らしいけど、体つきもまあまあ。


「殿下とは仲がよろしいのかしら、先ほど手を振られていたわよね」

「王立学園での同クラスですわ。今度、授業でダンスパートナーを務めますから、気にかけていただけたのかと…」


 微笑んで首を傾げる、耳元のイヤリングが揺れた。

 美しいドロップエメラルドは、今日のドレスに似合いそう。


「あなたのイヤリングを気にいったわ。譲って下さらない?今日のドレスに似合うと思うの」


 困ったように眉根を寄せると、断られた。


「それはできません。兄からのプレゼントですから」


 婚約者とか言うならまだしも、兄ならいいじゃない。形見でもあるまいし。


「あら、そう。出し渋りますこと、ならお兄様のお買いになられた倍で、買い取って差し上げますわ」

「それも無理かと…これは兄が()()()きたグリーウルフから出た魔石ですから。兄自らで風の守りを入れてくれましたので、このような色なのですわ」


 なんだ。魔石か。そんな物をわざわざ()()()きて、贈る公爵家もたいした事はないわね。

「あのねぇ」そう言い募ろうとした時だった。


「ナーラ、そこまでにしてちょうだい。ゴーディ家公爵令嬢、失礼をしました。あまりに美しかったのでナーラが欲しくなってしまいましたのね」

「いいえ、気にしておりませんから」


 ミネア、またわたくしの言葉を遮ったわね。


「まぁ、グリーウルフと言えば、第一級魔獣になっている恐ろしい魔物ですわ。その大きさの魔石ですと大層強かったのでは?輝石としても値がつけられませんわね」 


 王妃の叔母が吃驚したように、その価値を告げた。やだ、そんなに高いなら、もっと欲しくなる。

 もともと、アスパーニャ国王女であるわたくしたちが、なぜこんなに、肩身の狭い思いをしなくてはいけないのよ。旅行者って何?王妃にいたっては、見目麗しい双子の王子に紹介さえしてくれなかった。見せびらかすだけで、戻すなんて許されないわ。王子たちはまだ学生と聞く、ゆっくり話をして、仲良くなればお互いに良い思いもできるし、この国は裕福だから正妃が無理でも、お母様のように寵妃になってあげても良い。


 それにね、ミネア。私はわかっているのよ。第一王子と親し気だったレイクツリー公爵令嬢を、あなたは許していないわ。同じタイプですものね、淑やかで、楚々とした令嬢。美しさもあちらが上だわ。そろそろご退場を願うころよね。


「あっ」


 そう思っていた矢先に、ミネアの手が滑ったらしい。

 ミネアの落としたカップが、豪奢なテーブルクロスを伝い、紅茶の水色が流れて令嬢たちのドレスを汚す。ドレスの汚れた令嬢は場にいられないから、退場。その時にミネアを糾弾してくれれば、なおいい。私が宥め役ってところね。


「ご、ごめんなさい、誰かナフキンを…」


 慌てるところまでが、ワンセットだわ。

 一緒になって慌てるはずの、レイクツリー公爵令嬢が何かを呟いた。紫水晶のような瞳に紗がかかったように銀色がのる。


「…no…crying…spirit…milk」


 ふんわりと浮いた幾つもの水滴が、どんどん丸くなり、ソーサーに集まった。


「は?」

「覆水盆に返らず…です。エリーチカ様ドレスは大丈夫ですか?テーブルクロスは変えなくてはいけませんわね」

「リュミエール様、ありがとうございます。ドレスも無事ですし、さすが水のご令嬢と名高い、なんて繊細な魔力制御でしょう」

「いいえ、そのようなこと…ミーネ様は火傷などされていませんか?」


 ミーネを慮るように聞く、レイクツリー公爵令嬢が微笑んだ。


「え、ええ。ありがとうございました」


 虚を突かれたように、ミネアが頷く。忘れていたわ、この国の者は加護力が高い。自国では一握りしかいない加護持ちも、この国では庶民でさえ持つという。

 何も言えなくなった私たちは、ぼんやりとテーブルが綺麗になるのを見ているしかなかった。



*  *  *



 話は少し遡る。王都西にあるレイニー療護院に、酷い怪我をおった三人の男性が運び込まれた。二名は言葉が通じない。片言でカロヌロア国公用を話すが、名前ぐらいしか聞き取れなかった。三人はご丁寧に足を折られている。まるで追従を許さないように。市井の者が神殿に運び込まなかったのは、寄進が必要だったからだ。そこまでの義理はない。着る物しか持たぬ彼らを、無料でも診てくれるレイニーに運びこんだのは、至極当然であった。


「だから、俺はスルト侯爵家嫡子、ジルニス・スルトだと言っているだろう、なぜ、我が家からの迎えが来ない!」


 広くもない三人部屋に押し込められた俺の怒声は、隣に眠る者たちにも聞こえたらしく、皆、迷惑そうに背をむける。


「ええ。そうお聞きしたので、スルト侯爵家の方へ使いをだしたのですが、息子は第三騎士団の監督のため、家を空けている。王都に居るはずがないと…王城騎士団へ確認をお取りしますか?」


 俺と同様にひどい目にあった、あの女の侍従たちは他国の者だ。事情を聞くために外国語を話せる平民の男を呼んだらしいが、話にならない。


「それは駄目だ!」

「ですが、それが一番早いのでは…」


 その日、国境近い街にいた俺は公休で、街ではましなバーで酒を飲んでいた。その時にあったのがナーラ。大商人の娘だと言っていた。着ている物は悪くはない、豊満な体つきに、色気のある顔。後から騒がれても困るので、身分を隠し俺は恋に落ちたフリをして、閨を共にした。わるくはなかった。

 話を聞けば、用事があって妹と王都へ行くと言う。良かったら一緒に行かないかと誘われた。こんな辺境に辟易としていた俺は、戻りさえすれば父上が何とかしてくれると思い頷いた。

 しかし、王都に着いた二日目、そろそろ侯爵家に戻ろうかと思っていた頃、ナーラの態度が変わり、ナーラたちの連れていた護衛達に暴行され、貧民街と言われる場所に捨てられた。


 足を折られ、殴られた傷から目覚め、話せるようになるのにも何日もかかった。

 騎士団に連絡を取られたら、勝手に抜け出したのがばれてしまう。騎士団にばれる前に、父上に連絡を取らなくては…。


「書簡を書く、便箋とペンを…」

「その手でですか?」

「お前が代筆をしろ、サインは私がする」


 通訳をできるくらいなら、字もかけるんだろう。


「…わかりました。少々お待ちください」


 緩慢な動きで、俺の言うことも半信半疑な男に苛つく。


「家に戻れたら、お前に褒美をやる。急げ」


 金をちらつかせれば、少しはまともな返答を返せるようになるか?


「おい。お前、名は?」


 茶の瞳が俺を捉えた。


「アルバルトです。平民ですので家名はありません」

「そんなことわかっている!」


 やはり、平民は使えない。



少し長めにとった伏線をひとつ回収できました。('◇')ゞ

茶色には用心した方が良いのが、三悪ですw


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