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王妃様のお茶会 2

お疲れさまです。

いつも読んでくださって、ありがとうございます。

嬉しいです!


 色とりどりの花が咲いたように、子女たちのドレスが揺れる。マナーハウスとはいえ、自分たちの邸のマナーハウスから比べると、かなり広く内装も細やかで美しい。


 王室のメイドに案内をされた席はルドヴィカ王妃と同じテーブルらしく、中央の一番目立つ場所にあるテーブルであった。もちろん、王妃が現れるまでは席に着くことは決してない。


「八重咲の小薔薇。マリアの好きな花ね」


 リュミエールが、テーブル中央に活けられた薔薇をみて微笑む。私たちの姿をみとめると、何人もの寄子派閥の子女たちが挨拶にきた。如才なく、挨拶を交わしていく。

 スッとリュミエールが扇を口元にあてた。「マリア、要注意よ」そう言っている。


「ごきげんよう、マリアベル」


 子女たちから囲まれた間から声がした。同じように扇を口元にあてると顔を上げる。ベラオーク侯爵令嬢、スルツ伯爵令嬢を引き連れたエリザベスである。ここで態と名ではなく、一線を引いた家名で呼ぶ。 


「ごきげんよう、スルト侯爵令嬢」


 呼ばれたエリザベスは一つの事に気が付く。いつもなら親戚でもある自分は同等とみなされ、マリアベルまでの道が開けられるはずだった。しかし、今は違う。


「あなたたち、マリアベルと話があるの。場所を開けなさい」

「私はないわ。皆様、先ほどのお話を教えてくださる?ヴィンセント殿下のお使いになっている髪留めの話だったかしら、そんなに流行っているの?」

「レイクツリー公爵令嬢様の御考案だったとか、今、たいへん手に入りにくいとされておりますのよ」

「ジュリアス様もお使いになっているとか?」


 リュミが淑やかに頷いた。


「弟のエアルが使っているのに、ご興味を示されてお贈りいたしましたの。お気に召していただけたのは、幸いですわ」


 エアリルの名が出たことで、スルツ伯爵令嬢の顔に喜色が浮かぶ。


「マリアベルっ」


 エリザベスが、さすがにここで声を荒げるのは良くないと理解はしたらしい、憤怒を押さえ低く呼ぶ。


「スルト侯爵令嬢、わたくしを名呼びするのを控えていただけませんこと?兄、アイシュア・ゴーディがゴーティ領領主として、父から引き継ぐことを、先ほど陛下の了承を経て決まりましたの。今後、新しい領主を迎えるにあたり、兄とはいえ、スルト侯爵家との付き合いも控えたいと、現当主である父ハウネ・ガーディが申しておりましたわ」


 傲慢ささえ含み、艶やかにに微笑むと、意を述べる。


「な…そんなこと許されるわけ…」

「どなたの許しが必要?王国のいと尊き、貴き御方。陛下のご了承へ得ておりますのよ」


 すでに話はついたこと。嘆息を浮かべエリザベスを見ると、手にした扇をぎりぎりと握りしめていた。


「マリア、そろそろ席に行きましょう。スチュワードたちが気を揉んでいるわ。私たちが動かないのならば、こちらの方々も着けないのだから」


 高位の者の務めですわ。そう言いたげだ。

 リュミはちらりと、ベラオーク侯爵令嬢に視線を流した。


「ベラオーク侯爵令嬢。先日はお茶会のお誘いをありがとう。でもわたくし、あなたとの交流はご遠慮をさせていただくわ。後ろ暗いご令嬢とのお付き合いはエアルからも止められておりますの」


 急に向かった矛先は自分を貶めるものであった。ベラルーク侯爵令嬢が、声を抑えることもなく叫ぶ。


「わ、わたくしのどこが後ろ暗いと!」

「レダクーゼ・ポーリン様が離縁をなさったのはご存じかしら?彼女は今、ご実家であるレイクツリー領のモルデ男爵家へとお戻りになられているわ」


 激高をする者に対し、なんの抑揚もない言い方である。瞳はどこまでも冷ややかだ。


 あの、ダンス講師が自分と娘を守らなかった夫に見切りをつけ、離縁をしたのは聞いていた。

 領地を持たない貴族にとっては、親派閥の言葉は何よりも重い。それはわかるが、娘まで巻き込む()()がおこり、ダンス講師としての矜持まで折られたレダクーゼの怒りは深かった。


「色々、ご相談に乗らせていただきましたの。これ以上の説明は必要かしら?」


 口元に扇を当てたまま話す。直接口を聞くことさえ、厭われている。その事実にオルガーニャは顔色を失くす。


「示唆されたことさえ、気が付かないなんて恐ろしいことね」


 たおやかな首を傾げて、リュミエールは補完した。


「中央のお席になります」


 スチュワードが恭しく二人を促すのをただ見送る。

 自分たちの席は、中央からほど遠い席であったことも許しがたいことであった。


「許さないわ…マリアベル…」


 怨嗟の言葉を呟くエリザベスに、オルガーニャもスルツ伯爵令嬢エヌメラも声掛けはできなかった。



*  *  *



 自分が現れるまでの、お茶会会場での話を聞いた王妃控えの間の面々は、心を揺さぶられる。シルヴァンにいたっては高揚をしたようにほんとりと頬が赤い。


「見たかった…」

「シルヴァが出ていくまでもなかったな」


 ぼそりと呟く片割れに、ヴィンセントは口元を緩める。


「そう、自分たちに掛かる火の粉は自分たちで払ったということね。頼もしいこと」


 ルドヴィカは満足そうに笑うと、侍女に髪を整えてもらい、仕上げに大振りなパールのネックレスをつける。


「いいよね。王国のいと尊き、貴き御方」


 おっとりとした陛下の言葉に可笑しそうに微笑む。


「あら、その通りでしょう?わたくしの旦那様は」

「わたしの妻もだよ」


 準備も済んだことだし、夫の手を取る。


「あなたたちの準備も良いわね」


 夜会のような煌びやかさはないが、襞襟は控えめに、黒のウエストコートは左右対称に見えるように、片側のみ、金糸での羽の刺繍が入っている。襟元には中央にダイヤをあしらった、王族紋章のラベルピン。


 ヴィンセントは中指と小指に金の指輪を、シルヴァンは赤いルビーの指輪を一つ中指に付けていた。


「着飾った息子たちを見るのは楽しいわ。シルヴァンがアクセサリーを着けているのも珍しいことね」

「今日は争うこともなさそうですから」

「ヴィンセントの髪留めも今、流行っているのでしょう」

「ええ、髪も傷めずに纏めるのが楽なのです」


 中々、尻尾を掴ませない息子たちにまぁいいわ、と頷く。


「あなたたちは、微笑むだけで良いわ。今日はわたくしが主役ですからね。アスパーニャの王女たちは来ているのね。お茶会で紹介しますから、控えの間から出さないように」

「かしこまりました」


 何名かのメイドが頭を下げ、出ていく。


「さぁ行きましょうか。楽しくなってきたわ」


 こうなった妻は母は誰にも止められないな…三人は大人しく見守るのみである。



始まりました。お茶会です。

マリアベルとリュミが頑張っております!

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