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シュシュの広告塔

お疲れさまです!

いつも読んでくださって、ありがとうございます。


「シュ~シュ♪シュー」


 思わず、小さく鼻歌がでてしまう。テアドア商会はとても親切な店だった。ミミーズリィの皮を必要な太さに切ってくれて、値段もお手ごろ。たくさん買ったからと、粉末になった物まで付けてくれて、大層エアルが喜んだ。


「ふふ、ご機嫌なのはよろしいですが、姫さまは何を作っておいでなのですか?私にも手伝わせて下さいませ」


 マシュー手芸店で手に入れた、絹の端切れを大きめな長方形に切り、丁寧に刺繍を施す。


「ふふ、まだ内緒なの。でも一つはあなたの分よ」

「まぁ、でしたら尚更お手伝いをさせていただかないと」


 メイヤがそう言って、興味深げに端切れを見ている。


「こちらの生地に刺繍を?大物は無理ですわね。小花などでよろしいのですか?」


 マリアベルの分、お母様、あ、自分の分もそれから…。


「ジュリアス様にもお贈りしましょう。思い出させて下さったのは、ジュリアス様ですもの」


 メイヤを診察にきていただいた時に、長い金髪を革ひもで括っていたのを見て、少し不便そうに見えたのだ。


 前世でのアイデアを使うのは気が引けて、あまり目立ちたくはないし、実際、作り方も詳しくはないから、前世の物を過度に持ち込むのは、やめておこうとマリアと決めた。元が緩い乙女ゲーだったせいか、今世はそこそこ住みやすく、上下水道もあれば、食事も口に合う。不便がないのだ。それに髪留めなら世を変えることもないだろう。


「だったら、白のシルク地に金糸で幾何学模様を入れてもらえるかしら?」

「承りました。何かできるか楽しみです」

「時間のある時にいくつか作って、都度シュシュにしても良いわね」


 休日をシュシュ作りで費やそうと決めた時だった。扉を開けて、覗きながらエアルがノックをしている。


「入っても?」

「もちろんよ。どうしたのエアル?」

「姉上にお茶会の誘いが届いております。それから、先日のマリアベル様との街歩きの件で…」

「お茶会ねぇ…マリアとの街歩きの件から聞くわ」

「では、姉上たちに声をかけた時に現れた、護衛以外の者たちですが、市井の善意の方々だったらしいです。何かあったかと、心配をして集まられたそうです」

「まぁ…そうだったの。人数が多かったから、護衛を増やしたのかと思ったわ」


 納得をしたのか姉上が笑顔を見せる。

 実際のところをマイクに聞いたのだ。尊き方々からの手の者ではないかと、マイクにしては、歯切れが悪く…「差し出がましいとは思ったんだけど…」と、街歩きをする二人の話を聞き、知り合いに頼んだそうだ。マイクには最初の街歩きをお願いしたから、きっと心配をしてくれたのだと思う。

 尊い方々からの影でなければ良い。そう言ってお礼を言ったのだが…テアドア商会に関しては、けむに巻かれた。想像はできるけど、知らない方が良いってことか…。


「姉上にいただいた、ミミーズリィの粉末はとても興味深いですね。色々と試したいです」

「お店の方が、おまけで付けてくださったのよ。次もよろしくお願いしますって、言ってらしたわ」


 嬉しそうに姉上は言うけど、普通はありえません。粉末の方が高いそうですから…姉上を送ってくれたヘンリーが、首を傾げて言っていました。


「そうですか…でも次回はゴーディ領からたくさん送って下さるそうです」


 禍根は切っておきます。


「あ、お茶会はどちらから?」

「王妃様と…ベラオーク侯爵家ですね。僕宛にも来ていました」

「王妃様は出席ね。ベラオーク侯爵令嬢とはあまり馴染みがないのだけれど、明日マリアにも聞いてみましょう」

「そうですね」


 話ながらも、姉上の手は止まらず、ワインカラーの生地に小さなヒナゲシを刺繍した布の、長辺部分を裏から縫い、表に返すとミミーズリィの皮を通し結んだ。端同士も縫い合わせ、くしゅくしゅとした輪を作りだす。


「それは何ですか?」

「こう使うの。メイヤ、ちょっといい?」


 姉上がメイヤの髪を後ろで束ねると、今つくった輪で括った。

 なるほど、中に通した皮が伸び縮みをするから、束ねやすい。刺繍の部分がリボンのようで愛らしい。


「まぁ…」


 メイヤが姿見で確認をしている。


「結ぶより簡単で、可愛いですわ」

「ふふ、喜んでいただけて嬉しいわ。メイヤの分よ。いくつか作りたいからお手伝いをしてくれる?」

「はい。ありがとうございます。これならいくらでも作れそうです」


 そっと、姉上は僕を覗き込む。


「いずれは、養護院の方で作れたら…を思うのだけれど大丈夫かしら?」


 費用的な物なら問題がない。流行れば養護院も助かるだろう。市井向けなら、絹でなくてもいいし。


「これなら僕も欲しいですね。勉強中や書類仕事の時に、たまに髪が邪魔なので」


 肩まで伸ばした髪はいつもは紐で括るが、これなら簡単で外しやすい。


「良かった!エアルのは何色にしましょうか?男性用なら、もう少しボリュームを減らした方が良いわね」


 嬉しそうな姉上に、メイヤがあまり根をつめないで下さいねと、やんわりと釘をさす。

 流行らせるなら、少しばかり広告塔になってもいいか、ジュリアス様にもつけてもらえるなら、なお良い。ああ、広告塔としてはもっと良い人もいる。たぶん、姉上が作れば断らないと思うし、ミミーズリィのお礼にもなるかな。 


「王妃様のお茶会には参加の返事を出しておきます」

「今、添え文を書くわね」


 ライティングデスクに向かう姉上を見ながら、少しばかり悪戯心がわいて、言ってみる。


「青で姉上とお揃いが良いです。昔はよく、服などの色を合わせましたよね」


 年頃になって、さすがにそれはなくなったが、髪や瞳が同じなので、自然と身に着ける服の色も似てくる。


「本当?嬉しいわ、燕の刺繍をいれましょうね」


 あまりに姉上が喜ぶので、冗談だと言えなくなった。


「あ、お母様のも同じにしましょうか?」


 母上とも明度の違いこそあれ、同じ色だ。


「よろしいと思います。奥様ならカナリアですわね」

「ふふ、お母様が持っていたら、お父様も欲しがりそう」


 さすがに母や父とお揃いは勘弁してほしい。


「すいません、姉上とだけでお願いします…」



陰陽の双子side


 上機嫌で兄上が美しい黒髪を後ろで纏めた。


「気に入ったようだな」

「ああ、紐で留めるのは面倒なんだ。簡単で良い」


 リュミエール嬢が作った、髪を纏める小さな布飾りは兄上にも届けられた。

 濃紺に金糸で小さな山羊を刺繍してある髪飾りを、兄上は殊の外気に入り愛用をしている。


「あの、ミミーズリィの皮を、こんな使い方をするなんて思いませんでしたね」


 マルカも感心したように見る。


「マルカ、この布飾りの登録は出ているか?」

「聞いていません。調べますか」

「作りは簡単だ。すぐに真似をされるだろう。彼女のことだ、養護院で出すように勧めてやってくれ」


 さすが兄上だ。よく気が付く。いや、彼女のことだからか?聞いてみたい気持ちはあるが、山羊に蹴られそうなのでやめておいた。


次に向かう前の箸休めエピです。

マリアベルのシュシュはきっと苺柄w


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― 新着の感想 ―
定番のお揃いの装飾品ネタですね〜。 髪飾りや簪は良くあるけどシュシュは珍しいかも? (・∀・) 恐らくゴムの代わりの位置付けなんでしょうけど、ミミズが髪に絡みつくイメージをしてしまい何とも言えない気…
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