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Shall we ダンス? 2

おつかれさまです。

いつも読んでくださって、ありがとうございます。

遅くなりましたが、上げました。


 万雷の拍手でダンスを終える。二人して貴礼を取るとフロアから降りた。


「僕は絶対嫌ですから」


 戻ってきた途端にビンチョスにそう言われた。


「つれないな。それはそうと、あの二人はどうするんだ、リュミエール嬢はエアリルと、マリアベル嬢はアイシュアか…それとも講師に頼むのか、エアリルも来ているようだし。ビンチョス、何か聞いているか?」


 マリアベルが誰と組むのか、何故か気になった。

 パートナーと組むのであれば、学年が違っても授業は参加できる。ビンチョスは曖昧に首をふる。


「リュミエール嬢は、バルルーサと一曲は組むとだけ聞きました」

「私は仕事中です」


 端的に答えるアイシュアの言葉が終わらないうちに、わぁ…と小さな歓声が上がる。ちょうどマリアベルとエアリルがフロアに上がったところだった。


「エアリルと組むのか?」

「聞いてはおりませんでしたが…昔は家で講師を呼んで、ダンスレッスンを一緒にしていた事もありますし…ありえないことではありませんが、その、丈も…」



 マリアベルは女性からしても背が低い。エアリルは成長期とはいえ、少年といった背丈である。ヒールを履いたマリアベルより少し高いエアリル。二人はお似合いであった。


「ああ…」


 背丈かよ、と思うが視線を外せず。

 曲が始まり、礼を取り合う二人は、ふっと零れるように微笑み合うと幼けなさは消え、表情を変えた。

 テンポの良い曲に合わせ、スローからのクイックステップ、エアリルがリードを取っているように見えるが実はマリアベルのようだ。


 エアリルとの距離が近く、見つめ合う視線は甘い。


「マリアベル嬢はダンスが得意なのだな」


 感心する兄上にアイシュアが答える。


「ええ、体を動かすことは、昔から好きですから」


 まんじりともせず、アイシュアの目はマリアベルを捉えている。

 ストロベリーブロンドを靡かせ、魅惑的に微笑んだマリアベルの細い腰を引き寄せる。エアリルの口元が上がると、マリアベルはエアリルの肩においていた手をほどき、エアリルの汗で張り付いた一筋の髪をかき上げた。


 まるで恋人たちの戯れのように。

 最後まで互いから瞳をそらさず、踊り切った。


 終わるとそれまでの緊張感は霧散し、エアリルのエスコートでリュミエール嬢の下へ帰る。マリアベルは途中、アイシュアに気が付いたが、ニコリと微笑むのみで何も言わなかった。


 何だか落ち着かない。エアリルの側から、今すぐにマリアベルを引きはがしたい。あの小さな手をとりたい、美しい新緑の瞳で自分を見て欲しいと願った。


 物語みたいに恋に落ち、熱に浮かされたようにパートナーとして選ぶことなどありはしない。少し前の自分がなんて愚かだったのだと、可笑しくなる。

 きっと最初から、惹かれていたのだ。気が付いてからは落ちるのは早い。


「兄上、次の実技試験のパートナーをマリアベルに頼んでまいります」


 兄上は一瞬、虚を突かれたような顔をしたが、微笑んだ。


「構わないよ。二曲目もシルヴァンと踊ろうとは思わない」


 マリアベルの下まで向かおうとした俺を止めたのは、アイシュアだった。


「お待ち下さい。なぜマリーを」

「なぜ?マリアベルに次の実技試験のパートナーを頼みたいからだ。兄の許可が必要か?」

「っつ…必要はありませんが、マリーが断った時には…」

「その時には諦めるよ。王家の意向も使わない。真摯にクラスメイトとして頼むだけだ」


 俺を止めようとした手を握りしめると、アイシュアは頷いた。


「わかりました」


 俺は、フロアを横切り、マリアベルのいる場所まで歩く。

 さざ波のように女生徒たちの期待に満ちた声がする。


「マリアベル」


 振り向いたマリアベルは、まだ息が上がっているのか、頬が赤かった。


「シルヴァン殿下、いかがいたしました?」

「次の実技試験のパートナーをマリアベルに頼みたい」


 俺を見上げ、きらきらとしたグリーンの瞳が瞬く。


「わたくしをですか?」


 クラスメイトだからとか、そんなことは言わない。


「ああ、マリアベルがいい」 


 そっと手を差し伸べる。

 待っている時間が、とても長く感じる。

 レース手袋をしている小さなぬくもりが添えられた。


「承りました」


 歓喜の声を出さなかった自分を褒めたい。


「ありがとう!マリアベルと踊るのは初めてになるから、よければ練習に付き合ってもらいたい。予定があるのならば合わせる」

「はい。よろしくお願いいたします」


 花が綻ぶように微笑んだマリアベルを目の当たりにして、一瞬で熱が上がった。


「では、後ほど連絡をする」


 目元が赤くなっていないかを気にしながら、踵を返すと皆のもとに向かう。

 浮足立つとはこのことを言うのだと、ぼんやり思った。

 

「兄上、マリアベルにパートナーを受けていただけました」

「そうか、私も誰か考えておこう」


 フロアには、何人かの生徒達が実技試験を行っていた。その中心で踊るキリアンとスルト侯爵令嬢の姿を見止める。


「キリアンが面倒をみているのですか」

「同じ爵位同士で見ていられないと…そうだろう?侯爵位を持つ令嬢に頼めるのは、伯爵位からになる。この学園に伯爵位以上をもつ令息が何人いるのだろうね。しかも格上の侯爵令嬢を誘うには、顔見知りでなければ敷居も高い」


 二人の間には笑顔もない。キリアンが何か苦言を呈しているのか、表情も固かった。


「キリアンには礼を言わねばな」


 礼を言うのはスルトでは?と思ったが黙っている。

 ビンチョスが隣で思案気に、フロア内を伺っているのが気になったのか「何かありましたか?」とマルカが尋ねた。

 ふっと笑みのこぼれたビンチョスが答える。


「いや、シルヴァン殿下の行動で、フロア内が噂であふれています。しばらくはうるさくなりそうですねぇ」

「知ったことか」


 兄上が、笑いをこらえ切れないように口元に手をあてた。


シルヴァンは最初から、マリアベルに決めていた気がします。



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― 新着の感想 ―
ようやくシルヴァンも自分自身の本音に向き合えたのですね。 (*´ω`*)
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