マリアだけが知っている。 リュミエールフェイバリット
お疲れさまです!
いつも読んでくださって、本当にありがとうございます!
これは王立学園に通う少し前のお話し。
八歳の時のお茶会から意気投合をした私たちは、本当に仲良くなった。
文通から始まり、十歳の頃にはお茶会を、十五歳になる頃には、避暑の時期にお互いの領地に招待をしたり、元々は同じ公爵位同士で顔見知りだった親同士も、子供たちの交流を経て徐々に親交を深めていった。
今日は、リュミのお母様でいらっしゃるルシエラ様のご実家の、王都からほど近い別荘地としても名高い、ロンウッド領へお邪魔をしてピクニック。
アイシュアお兄様とエアリル様もご一緒。
本当はピクニックで日帰りのはずでしたが、急な天候不順で山を抜ける街道沿いは、がけ崩れが危険なため、大事をとって一泊することになりました。
ルシエラ様のご実家は伯爵位とは言え、ご領地を賜っているだけあって、とてもご立派なお屋敷。
ご挨拶をさせていただいた、前ご領主のリュミのお爺様とお婆さまも本当にお優しい方々で、お爺様は王都でお会いしたことのある、リュミの伯父様にとてもよく似ていらしたわ。
夕食前にリュミのお婆様とルシエラ様から、淑女のお茶会にお呼ばれした際に、お婆様から聞かれました。
「マリアベル様、リュミエールと同じお部屋で本当によろしいの?」
「はい。せっかくお部屋をご用意していただいたのにすみません。でもお友達とのお泊り会に憧れていたんです」
「ふふ、私も学園に通うようになってから、お友達のお家に泊まりにいきましたわ」
ルシエラ様がやわらかくお笑いになりました。
「夏にレイクツリー領にご招待を受けた際には、貴賓館へ泊まらせていただけて、レイクツリー湖が一望できる本当に素敵なお部屋でした」
「マリアと同じお部屋にお泊りできると思っていたのに残念でしたわ」
リュミが柳眉な眉を少しよせる。
「仕方ないわ、まだ学園に通う前ですもの。侍女や護衛の方々も他領の者と一緒だと休まらないでしょう?」
「ええ、お互いに気を使ってしまいますものね」
ルシエラ様とお婆様が頷き合いました。
「不測の出来事でしたし、今日は許しましょうね。でもあまり遅くまでお喋りをしてはいけませんよ」
ルミエラ様のお許しを得て、私とリュミは目を合わせて何度も頷きました。
その後の夕食会はとても和やかな中で行われました。
私たちがお茶会の間、お兄様はエアリル様と、お爺様ご自慢の馬と仔馬を見せていただいていたそうです。
「では、お兄様おやすみなさいませ」
「ああ、また明日な」
ジェシカにも散々言い含められそうになりましたが、無事、本日の推し活終了。
たしかに淑女としては、お風呂上りの夜衣に着替えた姿を見せるのは、はしたないかもしれないけど、お兄様への挨拶は譲れない。エアリル様もリュミにご挨拶にきていましたし。
頭にポンと手を置いていただいて「寝冷えすんなよ」と微笑まれるだけで、顔がにやけてしまう。
お兄様が素敵すぎてしんどい…。
「マリアベル様はぶれませんねぇ」
侍女のジェシカが呆れたように溜息をつきました。
お兄様をお訪ねするにあたり、人払いをお願いした手前、溜息をつかれても仕方ないけれど…。
推しの頭ポンだよ。一回でも減らせないでしょお?
「場所は変われど、毎日のご挨拶ですもの」
「はいはい。さ、リュミエール様がお待ちですよ、戻りましょう」
案内された客間には、すでにリュミが待っていてくれてハーブティーを勧めてくれた。
「後は休むだけだから、メイヤも部屋に戻って…」
「姫様がおやすみになられるまで、控えております」
「ジェシカ、私も大丈夫よ。メイヤさん、ジェシカの案内を頼んでよろしいかしら?」
「え…はい。それは勿論構いませんが…」
「メイヤさん、よろしくお願いいたします」
さすが、ジェシカだわ。こちらの意図を読んでくれているみたい。
メイヤさんは一歳年上のリュミ付きのメイドで、エアリル様の療養地にて召し上げられた方。
小さい頃からご一緒だったからか、リュミを妹のように思っているようで、普段から過保護ぎみ。
「マリアベル様、早めの御就寝をお願いいたしますね」
「わかったわ、ジェシカ。また明日ね」
「…それでは姫さま、おやすみなさいませ」
「ええ。メイヤ。また明日」
後ろ髪を引かれるようにチラチラと振り返りながら、部屋を出ていくメイヤを見送った私たちは、隣同士のベットでいくつかの枕をクッション替わりにして、ヘッドボードに凭れながらお喋りをする。
これから通う学園のこと、お互いに淑女課で一年間は過ごすことに決めているから、二年になったら普通科へ、私は騎士課の授業を取ることになっている。
「リュミは選択授業は何を取るの?」
「領地学と芸術選択をしようと思ってるの。マリアは卒業後はゴーディ領へ?」
「領地学は一緒ね。ええ、お兄様のお手伝いが出来ればと…婚約が決まらなければだけど」
「わたくしもよ…結婚は家のための政略と諦めていますけど、出来れば領地に籠りたいわ。せめてエアルが成人するまで」
エアリル様は、多少お身体は小さいとは言え、最近は大きな発作はおきていない。お兄様が十二歳の頃には、すでにエアリル様の倍以上だったけど、元々騎士を輩出する我が家と比べてはいけない。
頭脳だけで言えば、どのヒーローに比べても特出しているのだから。
それに飛び級をして入学をする頃には、そこそこ体格もできていて、卒業時にはヒロインを抱えるスチルもあったはず。三悪ヒーローズの中での伸びしろは一番高い。
「ねぇ、リュミはどんな方がお好きなの?」
恋バナだ。
今まで聞いても何となくはぐらかされていたけど、断罪回避に立ち向かう前に聞いておきたい。
私はお兄様命だけど、それは期間限定だとわかっている。でもリュミは違う。選べるはず。
「お父様がお決めに…」
「あ、それはなし、私もお兄様より素敵な方が現れるとは思っていないけど、強くて大胆不敵、笑顔が屈託なくて笑うと口角の上がる方が良いわ、手が大きくて懐は広く、魔物でも美味しくたくさん食べる方」
リュミの瞳が丸くなって、くすくすと笑いだした。
「もう、マリア、そんな方はアイシュア様しか思い浮かばないじゃない」
「あ、片えくぼでも良いのよ。赤毛じゃなくても…」
リュミが横になって、ごそごそと自分のベットの片方を開ける。
「マリア、こっちこっち」
声を潜めて、いたずらを仕掛けるみたいに手招きするから、枕を持って移動する。
「うちの扉前の護衛は耳が良いの、だから内緒話はこっそりとね」
「ふふ、喜んで。それでリュミの好きなタイプは?」
「あのね…笑わない?」
照れくさそうに、頬を染めるリュミが可愛い。
ああ、リュミに請われれば、きっとどんな人でもメロメロだわ。
「何?もうそんな方いるの?」
「ううん。でもね、こんな方に弱いなってタイプはあるの…」
「うんうん」ごくり…。
「狐顔の方…つり目がちで、涼やかな目元。糸目って言うのかしら?あのね、飄々としていて…あ、前髪で隠れてても良いの、それから…体格はそんなに鍛えてなくても良いし…いつもにんまり笑顔か無表情」
たぶん私の顔がチベットスナギツネになっていたと思う。灯りをしぼっておいて正解。それとこの世界に獣人設定はないから、狐獣人はいない。良かった。
いや、リュミ的には残念?
「そ、そう。じゃあ八重歯かギザ歯ね」
きゅっとリュミが私の手を握る。
「さすが、マリアわかってる~でね、関西弁」
「いや、関西ないから。ここ」
思わずつっこんでみた。
「そうなの。でもね、うちに出仕している文官の方に似たようなアクセントを持った方がいて…」
「長髪や、きのこ頭の目隠れも好き?」
「!」
何度も頷くリュミに『やっちまったなぁ』と頭の中でおじさん二人が餅つきを始めた。端役、癖ありキャラ好きとは…悪くはないけど、三悪のヒーローズになびかないはずだわ。
唯一、前髪隠れキャラで引っ掛かりそうなのはヴィンセント殿下…でもそれはバッドエンドのスチルで見れるから狙ってほしくない。
でも普段、落ち着いた物腰が多いリュミと、年相応にはしゃぐのは楽しくて、あれこれと夜分遅くまでお喋りをしてしまった夜でした。
マリアベル ビーラヴドで一区切り。
次に行く前の箸やすめ的な感じであげました。
李池は好きですよ。癖ありな糸目(笑)




