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お茶会 2

お疲れさまです!

いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。


 穏やかな雰囲気の中、お茶会は緩やかにすすむ。

 できればマリアかリュミエールの側に座りだかったが、アイシュアとエアリルに挟まれた二人を見て、オセロの四角とられた気分だった。

 縦長のお父さん席にヴィンセント殿下、その隣の近い角にシルヴァン殿下が座り、キリアンとマイク、そして俺。末席なのは仕方ないが、女の子同士固めるとかしてくれればいいのに。


 自宅に招いたからなのか。両殿下の服装がとても緩いのにも吃驚した。ヴィンセント殿下は白いシルクのシャツに腰に濃紺のサシュベルト、緩めの黒パンツ、左手に指輪を二つ。腰から覗く金の鎖は懐中時計か。長い黒髪は一つに束ねて片側にたらしていた。

 シルヴァン殿下も同じくシルクのシャツだったが、襟元と袖口に幾何学模様を重ねて刺した、灰金の刺繍が入っている。ローズグレーのベストはボタンを留めてなく、細身の黒パンツを合わせていた。アクセサリーはないが、赤い瞳と金茶の髪で十分だった。

 二人とも足が長げぇ、きちんとシャツを留めてないので、首元に色気がある。シンプルでもイケメンが着ると高そうに見えるんだな。実際高いんだろうけど。

 そこではたと気が付いた。あれぇ、マリアもリュミエールもエアリルも制服着てませんか?アイシュアは兼帯こそしてないが、簡易な騎士服だし。普段通りすぎて、見過ごしていた。

 その俺の疑問はキリアンが代わりに代弁をしてくれた。


「失礼ですが、アイシュア殿たちはなぜ、騎士服と制服なのかご説明を願えませんか」

「ああ、両殿下宛に文は出していたのだが、ここに来る前に養護院に寄っていたのでな」

「もらっているよ。了承している」


 シルヴァン殿下が、大きめに切り分けたチョコレートケーキを口に運ぶ。一口が大きいのだが、所作がきれいなせいか、気にならなかった。


「慰問ですか…しかし、ドレスで行っても良かったのではないですか。むしろ予定を変更すべきだったのでは?」


 それに答えたのはマリアだった。


「子供たちと約束をしておりましたの。第二土曜日は誰かが必ず訪れると、制服だったのも約束をしていたからですわ」


 リュミエールが持っていたカップをソーサーに戻す。


「ええ。王立学園は市井の者でも勉学に励めば、その門扉は開かれていますから、養護院の子たちにも希望が灯ります。何度も訪れるうちに、仲が良くなった子たちに制服が見てみたいとせがまれてしまいました。それに養護院の子供たちは嘘に敏感です。迎えに来る。すぐ戻るから待っててね…そんな言葉で去っていった親たちも多いですから。信じていないと言いながら、待ちます。だから、せめて私たちだけでも約束に真摯でありたいのです…っ出過ぎたことを申しました」


 ヴィンセント殿下が紫紺の目を見張るようにして、俯くリュミエールを見ている。その金輪の光彩がとても良くわかった。


「…いや、出過ぎてなどいない」 

「私と姉様は勉強を見てあげたり、時間のある時にはアイシュア様とマリア様は剣を教えてあげたりもしているんです。アイシュア様がたまに本気すぎて怖いと…」

「ふはっ、エアリル、それ顔が?」

「ビンチョス、お前にも剣を教えてやろう」


 笑い交じりに言うアイシュアと明るいエアリル、マイクの声に場が救われる気がした。


「養護院はどこですか?」


 ぜひ、どこの養護院か教えてほしい。俺も行きます。


「レイクツリー家が出資、ゴーティ家が支援をしている王都西の院だったか、隣に療護院も併設されている」


 知っていたのか、ヴィンセント殿下が口をはさむ。


「ええ。子供は体調を崩しやすいですし、近隣の方々に安く診てあげるかわりに、私が作った試薬の治験をお願いもしています」 

「あの赤い咳止め?うちのチビ共も世話になってるヤツ。咳してなくても飲みたがる」

 マイクが斜め前に座ったエアリルに笑いながら言う。

「赤いのはゴーティ領の岩イチゴのシロップなんだ、以前アイシュア様たちから分けていただいた事があって、色々試したのだけれど、薬効成分を一番邪魔しなかったんだ。子供にも大人気だよ」


 にこにこと頷きながら話す二人に、シルヴァン殿下が「俺もシロップを飲んでみたい、咳止めじゃない方」と口にした。


「実は本日、今後のゴーディ領の特産品の一端となればとお持ちしております」

「コンフィチュールとシロップ。シロップは水か炭酸で割っていただいて、飲むと美味しいですわ」

 小悪魔ベリーのイチゴシロップ。最高だ。買います。

「それは楽しみだ。キリアンがちょうど純度の高い氷をたくさん送ってくれてね。うちの氷室番が吃驚していたよ。ありがとう」

「恐縮です…」


 ヴィンセント殿下が、上手く回している。キリアンは加護の影響で氷の魔法に長けていたはず。先ほどのやり取りが尾を引いていたのか、少し言葉を濁していた。


「そういえば、兄上、マイオニー嬢に頼み事があったんだろう?」


 聞き役に徹していたが、シルヴァン殿下に急に話を振られた俺は、くわえていたクッキーを落としそうになって、慌てて嚥下する。


「ああ、そうだった。マイオニー嬢、君の加護を我が城の温室に施してはもらえないだろうか?砂漠の国からの献上品の中に、よく分からない香草や果樹があってね。土が合わないせいか枯れかけている。国に問い合わせをしているが、庭師を派遣してもらうには時間がかかりそうだ」

「私でお役に立てるのでしたら、喜んで…」


 神殿にいた頃から、大地に加護を与える練習は積んできた。たしかに実成りも良いし、発芽率も抜群である。

 でも、今日はジュリアス様がいない。大丈夫だろうか。


「ジュリアス殿から、コリンヌだったら大丈夫ってお墨付きだったよ」


 ジューリーアースー!マイクも余計なことを。


「光典の第一幕を諳んじてから、挑みたいので少しお時間をいただいても?」


 光の祝詞を唱えることで、加護は力を増す。失敗はできない。


「ああ。もちろんだ。それまでの時間…」

「ヴィンセント殿下、先ほどの香草には薬草などは含まれていますか?」


 エアリルが今日一番、食いついた。


「あるかもしれない。見てみるかい?植物辞典もいるなら図書室を開放するように言っておこう」

「あーアイシュア、時間が空くなら手合わせはどうだ」


 シルヴァン殿下がアイシュアを伺うように見る。


「手合わせですか?構いませんが…」

「お兄様とシルヴァン殿下の手合わせ…お兄様、拝見してもよろしくて?」

「それはいいが…」


 アイシュアがリュミエールに視線を向ける。たしかに武術場にリュミエールのイメージはない。リュミエールが空気を読んだように「わたくしは…エア」と言いかけた時だった。


「リュミエール嬢は城のコレクションを見るのはどうだろう。同じ芸術選択を取っているだろう。良ければ案内をしよう」


 ヴィンセント殿下のいつもの読めない微笑み。

 何?なんでフリータイムみたいになってんの?俺も参加したい。

「ちょっと待った~!」って言いたい。

 その時だった。


「ここにお出ででしたか、ヴィンセント殿下、シルヴァン殿下」


 場違いなほど大きな声で、どこぞの親父のちょっと待ったコールが響いたのだ。




今回はコリンヌが、両殿下へのファッションチェック

および状況説明を頑張った回(笑)

何を着せるかとか、ちょっと待ったコールを知らない方いるかも…と私も悩んだ回




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