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お茶会 1

お疲れさまです。

いつも読んでくださって、ありがとうございます。

 マイクの連れてきてくれたメイドさんが、中庭のガゼボまで案内をしてくれた。

 ガゼボって何ですか?と質問をすると、東屋よりも大きい物ですと説明をされる。

 東屋ってあれだな、学園にもあるイベントの宝庫だ。

 俺の考えていたガゼボはでかい公園とかバーベキュー場にある、屋根付きのテーブルとベンチが並んでいる物だったが、想像以上だった。


 柱部分には小さな白い花の咲く蔦が絡まっている、柔らかい色のファブリックに美しく並べられた食器。行ったことはないが、リゾートホテルってこんな感じ?

 少し、怖気づいてしまう。早く誰か来ないかな、マリアかリュミエールならもっといい。


「コリンヌ、早いな」

「キリアン様!こんにちわ」


 残念、キリアンだった。でも、お茶会マナーでお世話になった。王城で必要なのは、高位貴族向けのマナーでマイオニー家の家庭教師からは、教わらなかったものばかりだった。さり気なく、頭の先から足元まで視線をやるとさすが貴族男子である。さらっと褒める。


「レモンイエローか、清々しい美しい色だ。コリンヌによく似合う」


 マイクの用意してくれたディドレスは、レモンイエローのギンガムチェックに白い襟のついた可愛らしい物だった。

 ストラップのついた白い靴と、レースの美しい手袋は今朝、ジュリアス様から届いた。

 頭に白いカチューシャを付けて、鏡の前に立った自分を見て『初めてのデートバージョンの実装じゃんか!』と一人浮かれてしまったのも仕方ない。自分で言うのもなんだが、それぐらい愛らしかったのだ。


「ありがとうございます。マイク様の妹さんからいただきました。靴と手袋はジュリアス様から」

「エリーチカ嬢か、良かったな」 

「制服姿も素敵ですが、今日のキリアン様もとても素敵です」


 華美になりすぎないリボン付きブラウスに、細目の線が入った明るめな紺色の細身のスーツ。リボンの真ん中に彼の瞳の色そっくりなシトロンのブローチ。

 今日は眼鏡をしていないので、外した分顔が良くみえる。線は細いが端正な横顔、攻略対象者侮りがたし…。


「ありがとう、お互いに褒めあっていて、ちょっと照れるな、始まりまではまだ時間がある。座ろう」


 そう言って、椅子を引いてくれる。キリアン様の分は侍従が引いた。


「ビンチョスが馬車を回すと言っていたが、ビンチョスは?」

「両殿下に呼ばれたとおっしゃっていました」

「ふむ…何か問題でも…」

「ゴーティ公爵家、レイクツリー公爵家の皆様がお着きになられました」


 メイドの声に席を立つ。自分より高位の者を迎える場合は座ってなんていられない。

 もちろん、後から着くなんてことも有りえない。そう考えると、マイクは計算をして自分を迎えに来てくれたんだと思った。いい奴だ。


「キュービス殿、良い天気だな」

「アイシュア殿、エアリルもご一緒にいらしたのですね」

「ええ。晴れていて良かったです。キリアン様、その後のご体調はいかがでしょうか」

「ああ、君に借りたサシェのおかげでこの通りだ。邸の者に届けさせたが、不備はなかったか?」

「過分すぎるお礼までいただきました。ありがとうございます」


 高位貴族からの声掛けから始まり、挨拶。紹介されるまで大人しくしている。

 アイシュアの手に引かれ、そっとマリアベルが顔を覗かせた。

 いつもは、緩やかなウェーブをした髪をハーフアップにしているが、今日は美しいストロベリーブロンドをポニーテールだ。ビジュアルファンブックにもなかった項、ごちそうさまです!


「キュービス様、いつも兄がお世話になっております。ゴーティ家息女マリアベルと申します。本日はよろしくお願いいたします」

「こ、こちらこそ、アイシュア殿にはお世話になっている。よろしく頼む」


 キリアンの顔が赤い。わかる。


「キリアン様、姉のリュミエールです」

「キュービス様にご挨拶を申し上げます。同じクラスですもの自己紹介はよろしいかしら?」


 楚々とした仕草で微笑む。

 エアリルに比べても華奢で、睫長い。なに?睫まで髪色といっしょなの?


「ああ、クラスメイトなのだから、気軽に名前で呼んでくれて構わない」

「ありがとうございます」


 リュミエールは名呼びに関しては、明確な答えをださなかった。


「あ、あの…」


 本当は高位貴族の話を遮るなんて、駄目なんだけど…もう我慢は限界だ。俺も話したい。


「ああ、コリンヌ…ゴーティ公爵令嬢にお話しがあるのだったな」


 キリアン様がふってくれた。


「はい、ありがとうございます」


 マリアベルの前に立つと、大きな緑色の瞳で見つめられた。ヤバい、口が乾く。


「わ、私はコリンヌ・マイオニーと言います。先日は私の浅はかな行いで、ご迷惑をおかけいたしました。本当にすいませんでした」


 ペコリと頭を下げると、マリアの側に立っているアイシュアが、気遣わし気に彼女の肩に手を回した。

 なんだ、ちょっと羨ましいぞ。


「マリー?」

「コリンヌさんとおっしゃるのね。お気になさらないで、わたくしも不注意でしたわ」


 そう言うとはめていた手袋を外し、小さな手のひらを見せてくれた。


「リュミとエアリル様に手当もしていただき、この通り傷ひとつありませんから」


 手のひらを見つめる。手のひらも可愛い。尊い。


「…ありがとうございます。レイクツリー公爵家の皆様にもお礼を申し上げます」

「僕らは、当たり前のことをしただけですから」


 リュミエールはエアリルを見ながら頷く。


「あなたの謝罪を受け取りますわ。コリンヌさん」


 マリアベルの言葉にホッとする。良かった、これで一件落着だ。この後はお茶会でぜひ、二人と仲良くなって、お友達申請をしたい。


「遅くなってしまった。用件は済んだのかな」


 低めのテノールボイスに皆で振り返る。そこにはこの王城を住まいとする両殿下と、マイクが側まで来ていた。

 


お茶会はじめました(笑)

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