叱られ行脚は続く。
お疲れさまです。いつも読んでくださって、ありがとうございます。
お休みなので、もう一本いっちゃいます。
同じ頃、俺は神殿に呼ばれていた。
目の前に座るキラキラしい男は、派手な溜息とともに黒と赤の混じる封蝋のされた封筒を指先で叩く。
「私は教典の書き写しをしているように、侍従に伝えていたはずだけど?」
「すみません」
とにかく謝るに限ると、俺はペコペコとジュリアス様に頭を下げた。
「市井にいた頃、近所の兵役に付いてる方から、剣の稽古の後はとても疲れて、お腹も空くし喉も乾くと聞きました。初めて会った時からお世話になっているマイクに少しでもお礼ができたらと思って…本当にすみません」
「優しいのはコリンヌの美点だけどね、君の行動でゴーティ家のご息女と、レイクツリー家にもご迷惑をおかけした」
いつもより、声が低い。
「はい。反省をしています…そこでお詫びの機会をいただきました」
「それが一番の問題なんだけど…」
「ジュリアス様までそんなことを言うんですか」
ジュリアス様はゆっくりとかぶりを振る。
「まぁいい。王家のご招待に否はない。お受けしても良いよ。でもね、コリンヌが行った行動に関しては罰が必要だ。お茶会までには教典一幕までは諳んじられるように。出来なければ君は欠席」
「へ?一幕が何ページあると…」
教典がちょっとした単行本。いやいや、漫画ならまだマシだけど、内容は神話時代からの宗教的歴史書である。
「謝罪をしたいのならば、頑張り給え。話は終わり。馬車を呼んであるからマイオニー家に戻りなさい」
「はい…」
美しく金色に輝く髪と灰色がかった銀色の瞳、彫刻のような顔立ちに甘やかな言動で惑わされがちだが、長く付き合ったからこそわかる。ゲームでは年上のヒロイン溺愛系チャラキャラであったが、そうではない。
優しさと同じだけ厳しさを、自分を律するように周りにも規律を重んじる、指導者としての一面もきちんと持ち合わせている男であった。
こいつに泣き落としは効かない。
「失礼いたします…」
とぼとぼと肩を落とし、馬車に乗り込むコリンヌを、馬車が見えなくなるまで、バルコニーで見送っていたジュリアスは小さく呟く。
「本当に、困ったお嬢ちゃんだねぇ…」
呟いた声は思ったよりも掠れていた。
短いので、前の話の後につけようか、この後のビンチョスにつけようか
迷い、時系列的に間に入れたしで、分けました。
余談ですが、ビンチョスと打つ時に備長と間違えやすいです(笑)




