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キミは星の王子様~父さんな、実は魔王ルシファーなんだ~  作者: カブキマン
本編

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変人ラッシュ 13

「……おなかへった」


 早朝。同盟支部の宿泊施設で飛鳥は目覚めた。

 昨夜は同盟、ウォッチャー、その他秩序側の人間と共に大規模な作戦に参加していたのだ。

 寝起きプラス寒さと相まってわりと深刻なレベルで空腹だ。

 布団から出たくはないがしょうがないと飛鳥は渋々ベッドから出て食堂に向かった。


「あ、了。おっはよー」

「ああ、おはよう。お前も飯か」

「うん。流石にお腹減っちゃってさ」


 食堂内を見渡せば他にも疲労感漂う者らがちらほらと。

 無理もないとしみじみ頷きトレーを取りに向かった。

 ここはビュッフェ形式なので各々好きなものを選んだのだが二人のメニューはほぼ同一だった。

 つくづく気が合うなと苦笑しつつ二人は隅の席に陣取る。


「一応、これで終わったんだよね? めっちゃ寒いんだけど」

「説明を聞いていなかったのか? この夏いっぱいは影響が拭えずこのままだと言ってたろう」

「疲れてたから話なんてロクに聞いてなかったよ」

「まあ、確かに昨夜は大変だったからな」


 まだまだ駆け出しの二人は主戦場に居たわけではない。

 それでもかなりの消耗を強いられる激闘だった。


「あら、あんたたちも起きてたんだ」

「おはようございます桐生くん、如月くん」


 だらだらお喋りをしているとレモンとミアも食堂にやってきた。

 どちらも主戦場で戦っていたというのに多少、疲れてるかな? 程度の雰囲気だ。

 やっぱりものが違うなと感心しつつ飛鳥と了も挨拶をし返す。

 そのまま流れでレモンとミアも同席し、四人は同じテーブルで食事をすることになった。


「ねえ先生、ちょっと気になったんだけどさ」

「はい。何でしょう?」

「僕、昨日はダークサイドの連中がちょっかいかけて来ると思ってたんだよね」


 ライトサイドのプレイヤーも多数動員された大規模な戦い。

 少しでもキルスコアを稼ぎたい連中にとっては絶好の機会だろう。


「横合いから殴りつけられるの警戒してたんだけど全然なかったよね。何で大人しかったのかな」

「ああ、別に大人しかったというわけではないと思いますよ」

「そうね。こっちにちょっかいかけてなかっただけで連中も他に襲撃かけてたんじゃない?」

「どういうことだいレモン?」

「作戦の規模が規模だから空気を読んだのよ」


 これほど大規模な作戦行動の最中に攻撃を仕掛けたとなれば警戒度は一気に引き上げられる。

 後々のことを考えて優先的に狙われるような事態は避けたかったのだろうとレモンは言う。


「レモンの言う通りでしょうね。社会に影響を及ぼす事件の最中でさえ足を引っ張る。

その事実があれば私たちとしても討伐のための良い大義名分になりますから」


 なので秩序のために動く組織に属していないプレイヤーのみを狙っていたのだろうとのこと。

 二人の説明を受け飛鳥も納得がいったようでなるほどと頷いた。


「改めて二人とも、本当にお疲れ様です」


 折角の夏休み。あとはもうゆっくり休んでくださいとミアが笑う。

 飛鳥、了、レモンは思った。こうして見るととても淫行教師には思えないな、と。


「何です?」

「いえ何でも。しかしそうだな。夏休みだしそろそろ休んでもバチは当たらないか」

「色々あったからねえ。昼から次郎のとこにでも顔を出す?」

「そうだな。あいつも今頃、だらだら怠惰を貪ってるだろうし私たちも」


 混ぜてもらおうという言葉を遮るように鳥の羽音が聞こえた。


「うげ」

「うげ、とは何ですかミカエラ」


 現れたのはミカエルだった。

 偽装を施しているようでミカエラたち以外には認識すらされていないようだ。


「……いえ別に。それよりお父さん、何故ここに?」

「色々言いたいことはありますが今は置いておきましょう」


 飛鳥くん、了くん、とミカエルは二人の名を呼ぶ。

 え、僕? 私? と二人は目を丸くする。


「残念ながら次郎くんは怠惰を貪れてはいません」


 気を遣って作戦にも参加させなかったのでしょうが……と悲し気に目を伏せるミカエル。


「おいおいおいまた厄介ごとに巻き込まれてるのか?」

「嘘でしょ。次郎のトラブルエンカ率どうなってんの……?」

「ちょっとお父さん?」

「兄様に何かあったの? ちょっと詳しく説明なさい」

「ええ、ええ。そのために来たのですから。とりあえずこれを見てください」

「「「うぉ!?」」」


 飛鳥、了、レモンが仰け反る。

 そりゃそうだ。いきなり鳩の目から光が放たれ空中に映像が投影されたのだから。


「あなたどうなってるんですかそれ……」

「何かと役に立つだろうと様々な機能を搭載してくださったのですよ……」


 投影された映像は昨夜の次郎と真の決闘の様子だった。

 ラブレターだと喜ぶ次郎が気の毒で何も言えなかったためコッソリ見守っていたのだ。


「堤平じゃないか」

「忙しくて注意喚起のタイミングが……いや待って、急に泣き出したんだけど」

「……話の流れ的に兄様は恋文を貰ったと勘違いしたのかしら?」

「はい。私も次郎くんに便箋を見せて頂いた時はそうと勘違いしてしまったので無理もありません」

「というかあの女悪魔。私の見間違いでなければかなりの大物じゃないですか?」

「分かりますか。ですが彼女は今のところ無害ですし気にしなくても良いでしょう」


 そうこうしている内に決闘が始まり飛鳥と了が同時に目を見開く。


「……おい飛鳥」

「……うん、あの夜やり合った時より格段に強くなってる」


 だが次郎も負けていない。

 気持ちが追いついてからの立ち回りは尋常のそれではなかった。


「あー駄目駄目。カッコ良すぎるわ私の兄様。これもう世界一の良い男じゃない」

「いけませんいけません。イケメン過ぎて私の女ホルが止め処なく生産されてますよ」

「ミカエラ……」


 そして決着。

 何か良い感じに終わったように思うがまだ続きがあった。


『お、俺は……折角の夏休みに何やってんだ……』


 次郎の涙で映像は終わった。


≪……≫

「とまあ、そういうわけでして飛鳥くんと了くんにフォローをお願いしたくはせ参じた次第です」


 自分は叔父であり友人ではあるが同年代の友よりはどうしたって心の距離がある。

 だからこそ親友二人に次郎を元気づけてやってほしいのだとミカエルは頭を下げた。


「いやまあ頼まれずともやりはするが」

「僕らが何かするよりミア先生がちょっと色気ちらつかせてやった方が効果的じゃない?」


 絶対元気になるよと飛鳥が言えば了も頷く。


「おぉっと親友二人からお墨付きが出てしまいましたね!!」

「ちょっとあんたら正気!? この淫行教師に好き勝手させるの!?」

「淫行教師ではあるが本気で好きなのも事実だろうし」

「同意の上なら別に良いんじゃないかな」

「すいません、一応私父親なんですが? 更に言うなら次郎くんは甥っ子なんですが?」


 難色を示すレモンとミカエルに飛鳥と了は言う。


「そりゃ色に溺れるような輩なら私もこのような提案はしないさ」

「でも次郎は違うじゃん? 一日ちょっと頭ピンクになるぐらいでしょ」

「うむ。あいつあれでかなり理性的というか真面目な方だからな」

「勉強に対する熱意は欠片もないけどちゃんと生活するってところはかなり気にしてるよね」

「父子家庭だからと他人に言われるのが嫌みたいなことを言ってたからな」

「いやあ、良いご家庭だよ明星家」


 親友二人の言い分は実に尤もだった。

 ミカエルの目から見ても次郎が色に溺れて堕落するようなタイプではないのは分かっている。

 そして根っこの部分がとても善良であることも。


「で、でもそれとこれとは別でしょう!?」

「そうよ! これはモラルの問題よ!!」

「天使はともかく悪魔がモラルを語るのかなり面白いんだが」

「ミカエルさんもさあ、考えてもみなよ」

「な、何をです」

「この人、このままじゃ嫁ぎ遅れ待ったなしだよ?」

「桐生くん?」


 無視して飛鳥は続ける。


「見た目バッチシ。職業もお堅い。中身もまあ善良。

確かに優良物件ではあるけどミカエルの娘と特異体質って点でまずドデカイマイナス。

だってこれ日本だから問題ないけど信仰が熱いとこ行けば命狙われるよね。

ってか話を聞くに生まれた時に一回、殺そうかってことになったらしいじゃん」


 う゛、とミカエルが盛大に呻く。


「そして性格。善良であるのは間違いないけどさ。中々スパイシーだよね」

「うむ。敬語使ってるのも真面目に見えるからという理由だしな」

「実際僕らもそこに誤魔化されてたよね」

「ああ。頭の中がドピンクだとは思わんだろ普通」

「他にも性格の面で言うと良い意味でも悪い意味でも果断っていうか」

「自分の良心に従って人を助ける。ならばその逆も然りとか言い出すのかなり危ないよな」

「一歩間違えればやばそうだし性格面でもプラスとは言えないよね」


 言葉の刃でめった刺しにされたミカエルがよろめく。


「危うい部分を出させないためにも首輪は必要だと思うんだよね。

そういう意味で、次郎はうってつけかなって。

ほら次郎ってやたら寛容じゃない? それこそ変な忍者や変な同級生に目をつけられるぐらい」


 であればミカエラぐらいなら普通に受け入れる。何なら気にもしないだろう。

 これぐらいは個性だと普通に受け入れる姿が見えるようだと飛鳥は笑う。


「あ、あんたね! 兄様に産業廃棄物を押し付ける気!?」

「誰が産業廃棄物ですか。愛生まれ愛育ちで生産者の片方は大天使ですよ?」

「生産者言わないでください……」


 ミカエルはもう満身創痍だった。


「いやこれが次郎にとっても悪くないんだって。ねえ了?」

「そうだな。これまで良い面を挙げてきたが次郎にも問題はある」

「自分だけだと際限なく堕落してくタイプだよね」

「うむ。世話がかかるぐらいの人間が傍に居た方が己を律し易いだろう」

「現にレモンもそうじゃない。問題ありだから手を差し伸べられたわけでしょ?」

「う゛」


 レモンも忍者や真をどうこう言えた義理ではない。

 何せ最初は理不尽な動機で次郎を殺そうとしていたのだから。


「何でまあ、気持ちが通じ合った結果なら先生でも問題ないんじゃないかなって」

「うむうむ。色気ちらつかせるのもあれだ」


 先生はアプローチができる。次郎は元気になるし自分たちも嬉しい。

 ほら三方良しだと飛鳥、了は笑う。


「なるほど」


 ひとしきり話を聞いた後でミカエラは深く頷き言った。


「つまり私と次郎きゅんは運命レベルで相性が良いと親友二人も太鼓判を押すわけですね?」

「あなた嘘でしょう……? 今までの話を聞いて浮かんだ結論がそれなのですか?」


 ミカエルは恐怖した。自分の娘がこうもアホポジティブだとは思わなかったのだ。


「私の恋路を応援してくれるとの確約まで頂けましたしこれもう我が世の春ですか?」

「いやそこまでは言ってないよ」

「やるならどうぞご自由にってだけだからな」


 そんなツッコミを無視しミカエラは右腕を掲げ盛大に指を鳴らす。


「天も私を祝福していますよ!!」


 我を忘れるほどに神聖(セルフ)な光(スポットライト)が降り注ぐ中、ミカエラは勝利宣言をした。


「すごいこの増長っぷり。ひょっとして父親はさぞ名のある悪魔なのでは?」

「かもしれんな。例えばルシファーとか」

「うぅぅ……」

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気に入って頂けましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
これが父「ルシファー」の背中を見続けた者と父「ミカエル」の背中を見た事がなかった者の違いか
ホーリーチェックがお家芸と化してきている
ルシファーの身内だし間違ってないよな
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