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キミは星の王子様~父さんな、実は魔王ルシファーなんだ~  作者: カブキマン


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変人ラッシュ 4

 時はしばし遡る。

 ファーストフードで小腹を満たした二人はそのままデートに雪崩れ込んだ。

 次郎の方は金銭的にかなり余裕はあるが苦学生の正子はそうでもない。

 次郎としてはここからは全部自分持ちでも良かったが、それでは正子が気兼ねなく楽しめない。

 ならばなるべくお金のかからない場所をと考えた。


「俺さ、行きたいとこあんだけど良い?」

「ん、良いよ。どこでも付き合ったげる。で、どこ行きたいの?」

「サンキュ。等々力渓谷公園なんだけど知ってる?」

「名前は聞いたことあるけど実際に行ったことはないかな。どうしてそこに行きたいの?」


 お金がかからない以外の理由で、と正子は悪戯っぽく笑った。

 彼女も次郎が自分に気を遣っていることは分かっていた。

 分かった上でその好意はありがたく受け取るよと冗談めかして言っているのだ。


「……金銭的な問題以外にもあるっちゃあるけど笑わない?」

「悪い理由で笑いはしないけどそれ以外なら確約はできないかな」

「んー、まあ、その……何だい。女の子と一緒に行きたい場所の一つなんだよ」

「何で女の子と? 可愛い理由が潜んでそうで私、すっごく気になるんだけど」


 これで誤魔化されてはくれないかと次郎は深く溜息を吐き理由を語り始めた。


「……うちの禿は何というか、ちょっと恥ずかしいぐらいに死んだお袋とはラブラブだったみたいでな」

「あらやだ素敵。それで?」

「まあ、何だい。聞いてもねえのに惚気話とか色々聞かされるわけよ」


 お袋(遺影)からも色々聞いているとは言えないので情報源は父だけにした。

 次郎は何だこの羞恥プレイはと思いつつも話を続ける。


「デートでどこそこ行ったとかそういう話も、するわけじゃん?」

「あー、分かった。そっかそっか。等々力渓谷公園はお父さんとお母さんの思い出の場所なんだね」

「……うん。結婚する前の話らしいんだが」


 互いに金欠でどうしたもんかとぶらついてる時にじゃあと何となく足を運んだ。

 ただ公園の中をお喋りしながら散歩しただけ。

 だけど好きな人と一緒なら特別なことが何一つなくても素晴らしい時間になるのだという。

 父母の惚気をそのまま口にする次郎の顔は真っ赤になっていた。


「俺と正子ちゃんは別に男女的な意味ではアレだけど人間的にね、あれじゃん」

「そうだね大好きだと思ってるよ。次郎くんもそうなのかな?」

「……ま、まあうん。す、好きだし? だったらその、ちょっと違うかもだけどぉ」

「お父さんとお母さんが感じた気持ちを味わえるかもって? 良いね、それ。私も俄然乗り気になってきた」

「そ、そっか。じゃあ、そういうことで」

「ふふ、可愛いなあ」

「笑わないって言ったじゃんね!」

「悪い意味では、って言ったでしょ? 次郎くんがつい可愛くて笑っちゃったんだよ」


 ああそうだと正子は手を叩き言う。


「デートなんだしどうせなら手でも繋ぐ?」

「うぇ!?」

「嫌なら良いよ?」

「い、嫌じゃないっつか……あの、お願いします」

「はーい」


 正子が手を差し出す。

 華奢で今にも折れてしまいそうな女の子の手。

 ドギマギしつつも次郎は小さく深呼吸をして正子の手を握り締めた。


(やっべめっちゃドキドキする……)


 先の褒め殺しと羞恥プレイも相まってかなり意識させられている。

 やはり魔性の女では? 次郎は訝しんだ。


「じゃ、行こっか」

「……っす」


 手を繋ぎ歩き出す。

 ふと、次郎はゴールデンウィークの出来事を思い出した。


(愛理ちゃんとも手を繋いで歩いたよな)


 都会の街中ではなく田舎の小さな村の中を。

 もしあの子とこんな風に手を繋いで都会を歩いたらどんな顔をしたのだろう。

 そんな考えが頭をよぎり次郎は少しだけ泣きそうになった。


「ぁ」


 繋いだ手から気持ちが伝わったのか。

 慰めるように、寄り添うように正子がギュっと強く手を握ってくれた。

 気恥ずかしさを覚え愛想笑いを浮かべると、正子も何も言わず笑い返してくれた。

 そこから目的地まで二人は無言だったが、気まずさは一欠片もなかった。


「……マジか。え、ここ都内?」

「私もビックリ。いや聞いたことはあったけどこんなにも自然が豊かなんだねえ」

「わりと涼しいのもありがてえや」


 手を繋ぎ談笑しながら散策する。

 会話は途切れず次から次へと話が出て来る。

 そうして二人はとっぷり日が暮れるまで自然と語らいを楽しむのだった。


「どうだった? お母さんとお父さんが感じた気持ちを体験できた?」

「……うん」

「それは良かった」


 帰りに近隣のリーズナブルなお店で夕食を取りその日は解散と相成った。

 次郎は一旦、駅まで行ったのだが寸前で足を止めた。

 気分が高揚していてこのまま帰るのは惜しいと思ったのだ。


「バイト代もまだかなり残ってるしちょっと豪遊するか」


 疑似異世界でも滅茶苦茶頑張ったのだ。

 自分へのご褒美ということで少し豪遊してもバチは当たらないはず。

 次郎はコンビニのATMでお金を下ろすや軽やかな足取りで周辺の散策を始めた。


 ふと目についたのはそこそこ大きなリサイクルショップ。

 古着とかも扱ってるようだし悪くないかもと早速、入店。

 店内を物色していると、


「これって」


 風間が影響を受けた忍者ものの特撮ヒーローのDVDBOXを発見。

 そこそこ値は張るが買えないことはない。

 問題は媒体がDVDだということ。


「うちのノーパソ、ドライブがなか……いや待て。親父が何かプレイヤー持ってたような?」


 スマホを取り出し太郎に確認をすると古いプレイヤーが部屋にあるとのこと。

 ならばもうこれは買うしかない。

 見れば近くには同作品の玩具などのグッズもあるではないか。

 こりゃもう買いだなと次郎は躊躇なくボックスや玩具をカゴに放り込んだのだが、


「あ!」

「うん?」


 ふと声が聞こえて振り返ると少し離れた場所にものごっついイケメンを発見。

 年齢は次郎と同じぐらいだろうか。その視線は自分のカゴの中に注がれていて、


「あー……ひょっとしてどれか狙ってた感じ?」

「ハイ。ですがこういうものは早い者勝ちに御座るゆえ」


 どうかお気になさらず。水を差してしまい申し訳ないと頭を下げられる。

 次郎はふむ、と顎を摩りイケメンに話しかける。


「ちなみにどれが狙い?」

「え、あ、全部買おうかなと。ようやくバイト代が入ったゆえ」


 聞けば少し前に発見して目をつけていたとのこと。


「全部は譲れねえけどDVD以外は譲って良いぜ」

「え!?」

「ただその代わりってわけじゃねえけどさ。おたく、今暇?」

「? え、ええ。特に予定は御座らぬが」

「じゃあさ。良かったら付き合ってよ。鑑賞会しようぜ」


 とDVDBOXを掲げて見せるとイケメンがパァ! っと顔を輝かせた。


「喜んで! 拙者、ダイナー・モルゲンシュテルンと申す。貴殿の名を伺ってもよろしいか?」

「明星次郎。年齢は16。よろしくな」

「何と奇遇な。同い年で御座ったか」

「タメかよ! 二個ぐらい上だと思ってたわ。良いねますます縁があるって感じじゃねえの」


 話を聞けば自宅は近くとのこと。

 この出会いは最早運命だなと次郎が冗談めかして言うとダイナーも御座る御座ると笑い返した。

 二人は会計を済ませるとコンビニで食べ物と飲み物を買いダイナーのマンションへ向かった。


「うぉ、忍者グッズだらけじゃねえか。忍者大好きかよ」


 特撮、時代劇、アニメや漫画。

 ジャンルを問わず忍者を題材にした作品のグッズで部屋は埋め尽くされていた。


「――――拙者の運命に御座る」

「すげえな。いやだがそこまで好きになれるものを見つけられたってのは幸せなことだよな」

「いやあ」


 お喋りしつつテーブルに買ってきたものを広げ準備完了。

 プレイヤーにディスクを放り込んで鑑賞会が始まった。


「うわ古っ! 映像から漂ってるぜセンチメンタル!」

「それを言うならノスタルジーでは御座らぬか?」

「そうとも言う。いやでも何か良いなこういう空気感」

「ほほぅ、詫び寂びを心得ておられるな」

「こう見えて茶道部だからな。詫び入れて寂びしまくってるぜ」


 次郎のIQが低い言動にも突っ込まないダイナーは実にできた人間である。


「おぉ……おもしれえな。ってか押しかけといて何だけど親御さんとか大丈夫なの?」


 偶々留守のようだが今日はもう帰って来ないのか、これから帰って来るのか。

 それ如何では頃合いを見てお暇しようと思うのだがと次郎が言うと、


「問題はないで御座る。拙者、単身で留学して来ておるゆえ」

「え、何? お前一人で!?」

「然り」

「ま、マジかよすげえな。言葉が違う異国で一人とか俺なら心細くて死ぬわ」

「はは、寂しくないと言えば嘘になり申すが」

「じゃあ何でそんな」

「夢を叶えるため」


 短いが強い決意を感じさせる言葉だった。


「……てぇしたもんだよお前さん。感動した!」


 ここで会ったのも何かの縁。困ったことがあったら言ってくんな! と次郎が胸を叩く。

 ダイナーはキョトンと目を瞬かせるが、直ぐに笑顔を作り頷いた。


「忝い」

「何の何の」


 次郎は思った。


(誘って正解だったな)


 一人より二人。

 一人で黙々と見るのも楽しいがどうせなら誰かと一緒の方が良い。

 それが心底からこの作品を楽しみにしていたであろう人間なら尚更だ。

 それゆえ次郎は初対面にも関わらずあんな提案をしたのである。

 そして目論み通り、今、滅茶苦茶楽しめている。

 作品の感想で盛り上がるのも、互いの身の上話をするのもとても楽しい。


(苺がどうたらってアレだな)


 一期一会である。

 さて、楽しく時間は流れて行き気付けば深夜。

 さあ次の話にというところでダイナーが何やら神妙な顔をしていることに気付く。


「あー、悪い。長居し過ぎたか?」

「いえ、そうでは御座らん」


 正座をして自分を見つめるダイナー。


「次郎殿」

「うん?」

「貴殿にお頼みしたいことがあり申す」

「何だい?」


 ダイナーは一つ深呼吸をして、その願いを口にした。


「――――拙者の姫になって欲しいで御座る」

「……なるほど」


 発言の意味も分からなかったが一つ確かなことがある。


(め、目がやべえ!!)


 次郎はわき目も振らず窓を突き破り逃げ出した。

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― 新着の感想 ―
汚いなさすが忍者きたない
成程、自分から誘ってたんですね次郎きゅん!お姉ちゃんは許しませんよ!
>「――――拙者の姫になって欲しいで御座る」 そして拙者にときめいてもらうで御座る とか言い出せば次話でいきなり勝負がついてるかもしれない…!(西●維新感 にしてもこれは確かに変態としか言いようがない…
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