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キミは星の王子様~父さんな、実は魔王ルシファーなんだ~  作者: カブキマン


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ちが、そんなつもりじゃ…… 終

 皆が疑似異世界にやってきた八月十一日からもう少しで日付が変わる頃、ようやく現実に帰還。

 外と中で時間の流れが滅茶苦茶になっていたらしい。

 しかもそれは一定ではなく藤馬が言うには、


『極端に遅くなったり早くなったりで下手すりゃ浦島太郎もあり得たかもな』


 とのこと。

 日影ちゃんの精神状態であったり管理者権限を奪ったことであったり。

 考えられる理由は幾つかあるらしいがまあそこはどうでも良い。

 ウォッチャー本部で事情聴取もあり家に帰れたのは日付が変わった午前三時前だった。

 志村さんからは泊まって行ったらどうかと言われたが家に帰りたかったので断った。

 体感では半年以上帰っていなかった自宅だ。

 玄関を開けて懐かしい空気をめいっぱい吸い込んだ瞬間、少し泣きそうになった。

 冷蔵庫の中のが酷いことになっていて少し泣いた。


【あれじろちゃんじゃん? おかえり~】


 冷蔵庫の中を片付けているとお袋の遺影が飛んできた。

 息子がそこそこの帰還行方知れずだったのに軽いなとツッコミ入れると、


【あーしらの息子だし大丈夫かなって。たろちゃんも大丈夫だって】

「親父は俺がどこに居るか知ってたの?」

【ううん。知らないって。何か陰謀に巻き込まれてるんでね? だって】

「おい禿」


 それでお袋曰く続けてこう言ったそうな。


【私の息子が有象無象の謀略程度でどうにかできるものかよとかめっちゃ魔王ヅラしてた!】


 めっちゃウケるとのこと。

 俺も正直、ウケた。元のイケメン顔でやったら様になるんだろうけどさあ。

 禿、デブ、眼鏡の中年欲張りハッピーセット揃った状態でやられてもね。

 ただまあ心配はしてなくても帰ったことは伝えた方が良いだろう。

 片付けを終えた俺が電話をかけると深夜だというのにワンコールで繋がった。

 一旦切ってお袋の遺影を介して顔が見える通信に切り替え、深夜の語らいが始まった。


【改めて……おかえり次郎。これまで何をしてたんだ?】

【たろちゃんめっちゃ嬉しそう。心配ないつっても父親なんだよな~】

【ま、少々親馬鹿入ってる自覚はあるよ。でもみーちゃんも何時もより嬉しそうじゃないか】

【分かっちゃう~? あー、これすっげえ夫婦。夫婦茶碗?】


 子供の前でイチャつくな。

 あと夫婦茶碗は何か違うくねえか?


「いや実は異世界に飛ばされちゃってさ」

【お前なあ。アニメや漫画の見過ぎじゃないか?】

「いや実際そんな感じではあるけどアニメや漫画で取り上げられまくってる奴が言うセリフじゃねえな」


 ルシファーそのものだったり名前だけだったりで大人気じゃねえかお前。


「あと正確には異世界ではなく疑似異世界なんだがな」

【ふむ……ああ、自らの世界を創るタイプの能力者に囚われていたのか】


 そして話が早い。

 何かもう大体のことは察せられたんだなってなるよね。


【どゆこと?】

【我々のような者の中には自らが理想とする世界を限定的に創り出せる奴が居るのさ】


 例えばそう、と親父は顎を摩りながら言う。


【筋肉至上主義の人間が居てそのような能力に目覚めたとしよう。

そいつが創る世界は筋肉が全て。美しく仕上げれば仕上げるほどバフが乗るとかそんな感じになるだろう】


 何でちょっと気持ち悪い例を上げるんだよ。


【なるほど。え、でも何でじろちゃんがそういう奴に捕まるん?】

【いや直接の原因は疑似異世界を創った異能者ではなくその背後に居る悪魔たちだろう】


 クツクツと笑いながら親父は説明を始める。


【代理戦争に首を突っ込んだルシファーの息子。

魔王の椅子を狙う者らかすれば目障りでならない。かと言って直接、手を出すのも躊躇われる。

私の存在もそうだが下手に手を出して次郎が覚醒するのが恐ろしいからだ】


 レモンの例もあって余計にとせせら笑う。


【ならば隔離してはどうだ? しかしルシファーの息子を閉じ込める檻などあるか?

ないなら探せば良いと契約者ガチャを引きまくって探したのではないかな。

その際、代理戦争については伏せることで参加者としての資格を剥奪。

次郎を目障りに思う悪魔同士が協力し易い土壌を作ったのはまず間違いなかろう】


 だからその見た目で大物ムーブするなって面白いだろうが。


【じゃあガチャで引いた世界創造系男子だか女子がじろちゃん閉じ込めてたん?】

【だと思うよ。ただ、ガチャで引き当てたとしても時期がな】

【時期? どゆこと?】

【既に檻自体は完成していたのだろうが実際に行動に出るのはもう少し後のはずだと思うんだよ】


 発見から準備期間を考えれば早くても数カ月先。

 このタイミングでというのは悪魔たちにとっても予想外だったのではないかと親父は言う。


【なのに閉じ込められたということからして……能力者は次郎の知己かな?】

【何で分かるんだよ。キッショ】


 凄いどうこうよりもう気持ち悪いわ。

 心読まれたとかのがまだ良いよ。だってこれ洞察力だけでやってんだぞマジキモイ。


【キショイとは失礼だなあ。まあ良い。キショイついでにどこまで当てられるか試してやろう】

【っべたろちゃんマジ名探偵……】


 いやコイツ、犯罪者側だろ。生粋の反社会勢力っすよ。


【実際そんな感じということはライトノベルなどの趣味趣向が極まってという感じかな?

年齢は同年代。それ以上でも読んでる者は居るが次郎の交友範囲も含めて考えるとな。

性別は……迷惑をかけられたという不快感もないし女の子か。

男の子でもまあそこまで露骨に嫌うことはないだろうが査定は厳しめになるからな】


 親父は煙草を吹かしながら推理を並べ立てていく。


【バイト先で知り合った正子ちゃんとやらの線もなくはないが性格的にズレがあるしこれはない。

となると……クラスメイトかクラスは違っても同級生であるのは間違いないだろう。

引っ込み思案のいわゆる陰キャで次郎のような人種とはまず絡むことがないタイプ。

ただ自らのルールを敷くタイプの能力者だからかなり我は強いはず。

陰キャに見せかけてというか実際陰キャだが内面はかなり図々しいというか図太そうだな。

次郎もそれを感じ取ったから機会があればちょこちょこ絡みに行ってたんだと思うが】


 うっわ、鳥肌立つレベルでキッショイ。

 何だこの禿、ガンガン当ててくるじゃんね。


「やべえぜお袋。コイツ、警察に通報した方が良いんじゃね?」

【え、何で? めっちゃカッケーじゃんね】


 恋は盲目だなあ……。


【次郎は母さん譲りのオタクに優しいギャル属性持ちだからな。件の少女も絆されたとみて良いな】

「そんな属性持った覚えはないんだが?」


 クソ真面目な顔で言うことか。


【透けて見える性格からして箱庭を創ってそこで自分が冒険するタイプではない。

が、次郎がまたぞろ余計なことを言ったのかな?

踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆ならとかそういう感じのことを。

結果、フラグも順調に立てていたこともあって少女は暴発。自分と次郎を箱庭に閉じ込めた、と】


 合ってるか? という親父にドン引きしつつも頷く。


「気持ち悪いぐらい的中してる」

【それは重畳。何なら脱出までの経緯も推理してやれなくもないがお前の話も聞きたいしな】


 ここからはお前が話してくれ。どんな冒険をして来たんだ? と親父は楽しそうに問う。

 見ればお袋も同じような顔をしてる。そうなると俺としても語りたくなっちゃうじゃねえか。


「OK。最初は王道の転移系で深い森の中に放り出されてさ」


 面白おかしく俺の冒険を語り聞かせてやる。


【同級生と互いにストリップショーとかエロ漫画かな?】

【あーしらも今度やる?】

【……うん】


 頬を染めるな気持ち悪い。そして息子の前でする話じゃねえ。


【ほう、飛鳥くんと了くんが女に。さもありなん。そりゃそうなるだろうよ】

【男心分かる女って無敵臭くない? じろちゃんキュンしたんじゃないの?】

【確かに男からすれば都合の良い夢のようなタイプではあると思う】


 息子の色恋とかも言及すんなよリアクションに困るだろ。

 あと別にそんな目で見てねえから。

 いやエロいとは思ってたがね?


【……ふむ】

【どしたん?】


 スロエのとこで紅き蛇といざ決戦! ってところで親父が渋い顔になった。

 一体どうしたというのか。別におかしな話をしたつもりはないが……。


【いや実は父さんは蛇とは縁が深くてな】

【え、たろちゃんへび年生まれだっけ?】

「いやお袋。この禿、干支の概念すらなかった頃の生まれだよ。後期高齢者(極)だよ」


 でも蛇と縁ってなんじゃらほい?


【アダムとイヴの楽園追放の話は知っているかな?】

【誰それ? どちらのアダムさんとイヴさん? 外人?】


 まあ外人ではあるが……。

 お袋は知らんようだが俺は流石にそれぐらいは知ってる。

 なので俺が説明してやると、


【めっちゃ博識じゃんね】

「いやぁ……で、その話が何だってんだよ?」

【お前が今語った無垢な男女を悪い道に引き込んだチャラ蛇が父さんなんだって】


 マジでか。


【楽園追放で登場する蛇は一説ではサタンの化身という話もあってだな】

「あー……そっか。サタン、と思われてるのは親父なんだっけか」


 サタンという悪魔は存在しないし親父自身が自称したこともないらしいがな。

 親父曰く、悪行を分散させることでルシファーに対する畏れを散らしたのだとか。


【で、だ。そんなだから父さんは蛇に対しての特効みたいなものがあってな。

ケツァルコアトルぐらいの蛇ともなれば効果は薄れるが格下には覿面だ。

その特性は次郎、お前にも受け継がれている。戦いを優位に運べたのはそれもあるだろう】


 ほほう? そんな特性があったのか。


「いやでも紅き蛇は格下じゃなく格上だったぜ?」

【ここで言う格は現在の強さではなく魂の質とかそういうアレだから関係はないよ】

「へえ、じゃあそのお陰で勝てたわけだ。サンキュー親父」

【あくまで一因だがな。一番はお前の頑張りさ】


 へへ、照れるじゃねえかこの禿。


【良い話じゃん。何でそれでたろちゃん複雑なツラしてたわけ?】

【……いやほら、ちょっと冷静になって考えてみてくれ。話が出来過ぎじゃないか?】

「【???】」


 お袋と揃って首を傾げる。


【悪魔たちはルシファーの息子が邪魔で閉じ込める檻が欲しかった】

「【うん】」

【能力ガチャ引いてたら何とルシファーの息子のクラスメイトがそうだった】

「【うん】」

【八割方状況は整ったがまだ準備不足……あれ? 何か知らんけど勝手に檻の中入ってったぞ?】

「【うん】」

【それどころか疑似異世界の主である少女も一緒に入って行ったお陰で支配権をゲット!】

「【うん】」

【ついでにルシファーの息子と親しい一般人(笑)もシュートしとくか!】

「【うん】」


 何か含みがあったが気のせいか?


【救出隊も入って来たがまあまあこれは想定内】

「【うん】」

【万事順調。こりゃもう勝ったな風呂入って来る】

「【うん】」

【おや? おやや? 何か相性の良い格上の敵と戦うことになってジュニア覚醒しちゃったぞ?】

「【うん】」

【あまつさえ勝利してしまったではないか。複数でならまだしもタイマンで】

「【うん】」


 親父はフッ、と笑い俺たちに問う。


【どう思う?】

「【ははーん? この都合の良い展開。さてはお前の仕業だなルシファー】」

【そうなるよな】


 うん、こうして冷静に振り返ると話が出来過ぎだわ。

 どう考えても背後に魔王の影がチラついてる。鬱陶しいぐらいチラってるわ。


【当然、悪魔たちも私が関与していないか調べに調べたはずだ】


 そらそうよ。

 逆にそれすらしてないなら真面目にやる気があんのか疑っちゃうよね。

 君、悪魔何年目や? ってネチネチ問い詰めたくなるわ。


【で、当たり前だが結果はシロ】

「【そらそうでしょ】」

【何が酷いって外側から見れば何もないのに内側からあからさまに怪しいんだよこれ】


 どう思う? と親父が再度、問う。


「万事計画通りだと笑ってた悪魔どもはお笑いだったぜ! って感じ」

【やっべたろちゃんめっちゃ黒幕(笑)】


 親父マジで何もやってねえのにな。

 偶然に偶然が積み重なってすんげえ面白いことになってやがる。


【……ドンドン私の風評被害が増していく】

「【ドンマイ!!】」


 切り替えてこう!

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― 新着の感想 ―
己の過去がしがみついてくるな親父さん
さすルシ、悪辣な智謀にかけては特急品! ただ、 >【あーしらも今度やる?】【……うん】 には思わず草 魔王ルシファーをここまで変えるなんて人間の可能性は無限大すぎる!w
>【ついでにルシファーの息子と親しい一般人(笑)もシュートしとくか!】 息子の会話だけで大体バレてる一般人(笑)が居た! まぁ巻き込まれた一般人Aが首謀者()になった以上唯一の一般人扱いになってそりゃ…
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