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決戦前 終

(やっぱり俺はチョロかったよ……)


 一月二日から始まった眷属化のための同棲生活は昨日で終わった。

 結論から言うと全員、眷属になった。ただその経緯が問題だった。


(……まさか全員、初日で達成してしまうとは)


 一人に与えられた持ち時間は四日。

 だが既に達成していた愛理ちゃん正子ちゃん以外も初日で俺の心を奪ってしまった。

 全員が魅力的な女性であるのは認める。でもそれにしたって一日はねえだろ一日は。

 残り三日はウイニングランだったよ。普通に甘い時間を過ごしちゃったよ。

 何かこのチョロさで俺の将来が心配になって来た。美人局とかに引っ掛からないよね……?


「おや王子、浮かない顔だね。まるで自分が相当チョロい人間だと思い悩んでいるような」

「何で分かるんだよキッショ」

「はっはっは、これでも悪魔なのでね。まあそれはさておき大丈夫だよ」

「あ?」

「心を許した相手にはノーガードというだけだからね」


 既に心を開いていたから容易かっただけだとオルタークはフォローしてくれた。

 何だよコイツ、ちょっと良い奴か……?


「それより、だ。凄まじいね彼女らは」


 視線の先では星の花嫁となった九人と藤馬、バアル、ライラが激闘を繰り広げている。

 眷属となり得た力の確認がてらの手合わせだ。

 飛鳥と了、愛理ちゃんと正子ちゃんは天使と堕天使の両翼。

 レモン、真ちゃん、忍者は悪魔の翼と腕。

 レモンの場合は元々悪魔だが翼の数が六枚になりデザインが変わった。

 聖先輩は天使の六翼。聖人の資質を有するがゆえか。

 先生はパワーアップはしたが外見的な変化は一切なしだ。

 ちなみに冬花さんは居ない。戦闘要員じゃないからな。

 来るべき日に備え菓子のクオリティを上げるべくひたすら作り続けている。


「正直、想定を大きく上回っているよ」

「ほう?」

「眷属になる以前から既に規格外だったミカエラ殿はまあ、分かる」


 眷属で格付けをするなら一位は二位に大きく差をつけ先生。

 その次がバアル、ライラの保護者コンビで三位が先輩。

 で、四位は参加はしていないが横に居るコイツ、オルターク。

 ここらはまあ妥当だろう。


「そして苦しみを代償に力を得た現代の聖人たる聖殿もまあ良い」


 だが子供たちは驚嘆に値すると言わざるを得ないと奴は言う。


「御身の眷属になる以前のバアルやライラに少し上回る程にまで力をつけている。

片やソロモン七十二柱の序列一位。片や嵐と夜を支配する最古参の女悪魔。

そこに二十年も生きていない子供らが並ぶというのは信じ難いことだ。

そして恐ろしいのは彼女らは人間の可能性も保持し続けているということ」


 つまりは将来性か。


「渇いた笑いしか出んよ」

「……聞くが、お前から見て戦力的にはどうなんだ?」

「私の知る魔界の戦力と照らし合わせるなら以前の見立てを大きく上回るだろう」


 ルシファー以外の全てを相手取っても戦える。

 それどころか俺の無理な願いを聞き届けても尚、余裕があるとのこと。

 だが、とオルタークは続ける。


「閣下のことだ。秘匿している戦力がないとは言い切れない。

いやあると考えるべきだね。決戦を盛り上げるために何かしら用意はしてあると思う」


 やっぱりかぁ……。


「こちらの理想は最高戦力たる御身とそれに次ぐミカエラ殿を閣下にぶつけることだ。

特にミカエラ殿はミカエルの娘。奴を閣下から引き剥がし弱体化を狙えるかもしれない」


 だがその程度、あちらもお見通し。

 先生を封殺する一手として先に述べた決戦を盛り上げるための何かがぶつけられる。

 オルタークの推察は実にご尤もで、俺も親父ならやるだろうなと納得できてしまう。


「ちなみにその何かしらについてだが」

「残念ながら予想もつかない。私とバアルで伝手を使い色々調べてはいるのだがね」


 どんなサプライズが来ても動揺しないよう腹を決めるしかない、か。


「ただまあこちらにも伏せたカードはあるようだが」


 その視線はフランケンシュタイナーを先生にキメる先輩に向けられていた。

 先輩が隠している切り札ってのはアレだろう。


「例の何かしらの用途にチューニングしたって奇跡か」

「ああ」


 俺たちにその内容は知らされていない。

 使えるかどうかはその時まで分からないし秘することにも意味があるとのこと。

 計画に関わっていたオルタークも知らないらしい。


「つかお前も混ざって来いや。一人だけ楽してんじゃねえぞ」

「やれやれ。主がそう仰るのであれば……っと失礼」


 電話がかかってきたようだ。

 うむ、うむと頷いていたと思うと目に見えてオルタークの表情が引き攣った。


「どうした?」

「……人間の協力者から連絡が来てね。どうやら金星が消失したらしい」


 親父の二つ名である明けの明星。

 それは夜明け前、東の空に輝く金星を差す言葉でもある。

 それゆえに両者の間には霊的な縁が存在するわけで……。


「このタイミングでそれは」


 と俺が言葉にするよりも早く再度、オルタークのスマホが震えた。

 取れよと目で促すと奴は小さく頷き電話に出る。

 そして一言二言、言葉を交わして電話を切った。


「今しがた魔界の友人から連絡があったのだが」

「うん」

「突如、魔界全土に凄まじい強風が吹き始めたらしい」

「ほう」

「更に魔界の空を覆う黒雲が硫酸の雲になり酸の雨が降り出したとか」

「それはそれは」


 金星の特徴ですね……。


「……魔界と自身の象徴である金星を融合させたのだと思う、が」


 歯切れが悪い。

 どう考えてもそんなこと出来るわけがないとその目は雄弁に語っていた。


「ただでさえ強い魔王様が更に強化されたってことでOK?」

「あ、ああ。そうだね。その通りだ」

「なるほどなるほど」


 いやあ、うん。ははは。


(――――ガチじゃねえか!!)


 分かってたよ!? 本気でやり合うってのは分かってた!

 手は一切抜かないって分かってたけどさあ!

 現状、こちらが圧倒的に不利なのにまだ詰める!? 傲慢どこ行ったオルァ!!


「その、何と申せば良いか」

「上等だクソが! 何が金星(きんせい)だ! 俺を誰だと思ってやがる!?」


 オルタークの言葉を遮り叫ぶ。


「俺はルシファー討伐RTAで十七歳という最速レコードを叩き出し大金星(だいきんぼし)を飾る男だぞ!?」

「いやそのRTA挑戦できる者が世界にどれだけ居るのか……」


 クソがよぉ……あの禿、絶対目にもの見せたらァ!!

次回から最終章です。最後までお付き合い頂けると幸いです!

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ルシファーRTAレコードはギャルママが保持してるから無理じゃね?
ちょっとー。 王子さまのRTAチャートガバガバなんすけどー?
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