表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/186

魔王ジュニアVSカルト教団 3

「はー、クソですわ」


 午前中の授業で幾つかテストが返って来たのだが……はあ。

 何だっけ? 平均か平均よりちょい上ぐらい?

 誰だよそんなこと言った奴は。普通に平均ギリギリか平均ちょい下だったわクソが。


「ていうかこれよくよく見るとケアレスミス多くない?」

「数学とか途中のちょっとした計算ミスで最終的な解がおかしくなってるのがちらほらあるな」

「英語も文法は合ってるけどスペルミスとかで結構差っ引かれてるよね」

「お前これしっかり見直しやってれば防げたミスだぞ」

「ちゃんとやってれば点数も結構違ったんじゃない?」

「お前基準でスラスラ解けたものだから調子に乗っただろう」


 ボロクソで笑う。

 というか見直しやってればっていうの一番キツイから止めて欲しい。

 たったそれだけのことでって後悔が募りまくるから。


「「いや自業自得だろ」」

「そういう対応は求めてないんだよね」


 もっと優しくしてほしい。


「ん、良ければどうか」

「いやそういうのも違うっていうか」


 何時の間にかやって来た真ちゃんが自分の胸をぽんぽんと叩いてみせる。

 いわゆる大丈夫? おっぱい揉む? 的なアレだと思う。

 とりあえずライラはいっぺんマジにシメた方が良い気がして来た。


「あーあ、何かもうやる気なくなっちゃった」


 これは午後からの授業に備えてモチベの回復を図らねば。


「よし、ちょっと外に飯食いに行くわ」


 今日は購買を利用するつもりだったが気分転換である。

 俺が席を立つと、


「では拙者も」

「私も」


 ディアナと真ちゃんも同行を申し出て来た。

 飛鳥と了は普通に弁当広げてた。友達だよね僕たち?

 まあ今は一人飯の気分だったから別に良いけどさ。


「悪いな。好き勝手な一人飯の気分なんだわ」


 四人に別れを告げ下駄箱に向かう。

 外出届を書いてもらうのは面倒なので靴を履き替え校舎裏の塀を乗り越え脱出する。


「よっと」


 飛び降り着地したところで、


「忍び込む手間が省けたな」


 声が聞こえた。

 ぱっと視線をやると路地の影からそいつは姿を現した。


「……藤馬」

「よぉ、久しぶりだな。大体一年ぶりぐらいか?」

「別に会わないなら会わないでまったく問題ないけどな」

「そうつれねえこと言うなよ。これから飯か? 奢ってやるからツラ貸せよ」


 ミア先生やギャビー先生を呼んでも良いんだが、


「良いぜ。付き合ってやるよ。その代わり何食うかは俺に選ばせろよな」


 わざわざ敵地に乗り込むような真似をして来たんだ。

 何かしらこっちにとってもプラスの話ではあるのだろう。


「OK。何食いたいんだ?」

「焼肉。ランチとかじゃねえぞ。ガッツリ食うからな」

「……お前、昼休みって一時間ぐらいだろ?」


 それで焼肉はキツクないか? 相変わらず常識的な野郎だ。


「お前って理由があるからな。五時間目はサボっても問題ねえだろ」


 どの道、やる気なかったしな。

 これが英語の授業なら話は別だが英語は午前で消化済みだ。


「不良学生が」

「犯罪者にゃ言われたくねえな。つーかお前も学生時代はそんな真面目じゃなかったろ」


 見た目的に。


「失敬な。これでも小中と皆勤賞だったんだぜ?」

「かいきん……?」

「え、今の学校ってそういうのねえの?」


 わりとショック受けてるの笑う。

 ってかオッサンの昔語りにゃ興味ねえんだわ。


「さっさと行こうぜ。あ、高いとこ連れてけよ」

「図々しい……はあ、わーったよ」


 二人で駅前の繁華街にあるお高い焼き肉屋へ向かった。

 他人の金で食う飯ほど美味いものはない。遠慮なく注文してやった。

 それと並行してミア先生に藤馬が接触して来たので午後の授業遅れますとメッセを送っといた。

 細かいことはこちらでやっておくのでお気をつけてと返って来た。信頼を感じられてちょっと嬉しい。


「で、一年近くご無沙汰のテメェが何の用だよ?」


 最後にコイツの話を聞いたのは学祭の少し前だったか?

 飛鳥と了が藤馬は刀剣狂いなる変態とやり合ってると聞いた記憶がある。


「一生変態とよろしくやってろよめんどくせえ」

「そう、正にその変態だよ。俺の用件は」

「はあ?」

「実はな……」

「あ、ちょっと待って。肉届き始めたから焼いてこうぜ」

「……しまんねえなあ」


 二人で網の上に肉を並べて行く。

 あー、たまりませんねえ。ジュージューと肉を焼く音だけで飯が食えそうだわ。


「良いか?」

「おう」

「お前も知ってるみてえだが変態。刀剣狂いと揉めてんのよ俺ぁ」

「……現在進行形?」

「現在進行形」


 その返答に目を丸くする。

 コイツほどの男が一年近くも敵を倒し切れていないというのは驚きだった。


「そこまで強いのか?」

「……途中まではまあ、こっちが一枚上手ぐらいだったんだがなあ」


 実に忌々しそうだ。


「お前、刀剣狂いについてどれだけ知ってる?」

「そのあだ名とお前とやり合ってたってことぐらいだな」

「じゃあ説明してやる」


 いやその前に用件を、と思ったが黙って頷く。

 そのために必要な情報なのだろうし、あと焼肉奢ってもらったからな。

 ただ飯の礼としてそれぐらいは我慢するべきだろう。


「本名は久我美月。性別は女。年齢は三十六歳」

「女だったのか……」

「由緒正しい生まれで実家も太いが本人も投資家として有能でバンバン儲けててな」


 金にあかせて古今東西問わず刀剣類を蒐集していたのだという。

 ここまではまあ、良い。普通の趣味人だ。

 でもプレイヤー、しかも黒ってことは相当なロクデナシであるのは間違いない。


「その刀剣好きが妙な方向に行っちまってな。奴は人が刃に見えるようになったらしい」

「はあ?」

「俺もよくわかんねえよ。人と鋼は似たるとか生き様が槌であり火とか言われても知らんわ」


 ともあれそういう風に拗らせてしまったとはいえだ。

 最初は道行く人間を見てあの人が刀だったらどうしようとかを妄想する程度だったのだという。

 しかし日毎に熱は高まり、その欲望はやがて悪魔に目をつけられる。


「で、奴は斬り殺した相手を刀剣に加工する能力に目覚めた」

「……シリアルキラーかよ」

「まあ、無差別ってわけではねえがな。審美眼に適った人間のみって感じだ」

「いやそれでもクッソ迷惑。お前含めてさっさと滅んだ方が世のため人のためだろ」

「否定はしねえが……続きを話すぞ」


 藤馬と衝突したのは既に察しはつくだろうが藤馬を刀剣化するため。

 ふざけんな馬鹿と全力で殺しにかかったのだが殺し切れず。

 藤馬と揉めてる間も、合間合間で刀剣狂いは他の人間を切り殺して刀剣を増やしていたのだという。


「奴の生み出す刀剣類の中には固有能力を備えてるものがあってな」


 ガチャかよ。


「偶々引き当てたのが厄介な力でな。ざっくり説明すると斬れば斬るほど強くなる感じ」


 不幸中の幸いというか刀剣狂いは選り好みが激しいらしい。

 そんな便利な刀を手に入れても経験値稼ぎ感覚で誰彼構わずではないとのこと。


「斬る価値があると判断した奴だけだな。まあそれはそれで厄介なんだが」


 量より質みたいな感じか?


「うっわ、大変っすね。がんばえー」

「……他人事みてえに」

「実際他人事だし」


 お前がどうなろうと興味ねえわ。


「最後まで話を聞いてもそう言えるかね」

「あ?」

「一月ほど前にも奴とやり合ったんだがな。またも決着はつかなかった」


 藤馬もうんざりしてるが刀剣狂いの方も疲れて来た。

 すると奴はここらで一旦休憩、お互い心身を休めてまた殺し合おうと言ったらしい。

 付き合う義理はないが言うだけ言って撤退して行ったとのこと。自己中か?


「で、俺は何時殺し合いが再開しても良いように奴の動向を見張ってたんだが」


 一拍置いて藤馬は告げる。


「奴さん、最近お前のこと知って興味津々らしいぜ」

「クソが!」


 またそういうパターンかよ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

気に入って頂けましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
逆に刀にして差し上げろ。 獣の槍方式で
初めから本気で戦って逆に剣にして封印すれば良い。と私は進言いたします 王子 貴方様の叔父さんやその同僚に封印してくれ。と二束三文で渡して差し上げるべきかと。
特殊性癖を呼び寄せるフェロモンでも出ているんですか!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ