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ロードオブロードロウドウ  作者: 昼ヶS


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第二十二話

 屋敷を出ると、ドワーフ族の子供達に囲まれているメンがいた。子供達は大人と比べて余所者に対しての警戒心がかなり薄いようで、何を食べればそんなに大きくなれるのか、メンが巨人族なのかどうか等を無邪気に聞いている。メンは、そんな四方八方から矢継ぎ早に出される質問に、戸惑いながらも真面目に答えていた。そして、アオイ達に気づくと、子供達で出来た人だかりを優しくかき分けてやって来た。

「アオイさんも中にいたんですね……」

「まあね。……それにしてもすごい人気ね」

 体の大きな者に憧れを持つのは生物としての本能なのだろう。アオイは巨人族に会いたがっていた子供の頃の自分を思い出した。

「子供達には悪いけどそろそろ行こう。タイヨウボタルの寿命が尽きない内に」

 三人はこの町唯一と言われる宿屋に行き宿泊の手続きをした。職業柄か、店主の女将は余所者に対して警戒感を示さなかった。

 部屋に余分な荷物を置いてから、坑道へ向かう。アオイは行くには不要だからと相棒を置いていった。

 坑道は広い洞窟空間の端、入り口から町を挟んで反対側にあった。天井にある窓から無数に差し込む光もそこへはあまり届いておらず、薄暗い。

「それじゃあ布を取ろうか」

 テクトの言葉に従い、アオイは黒い布を取った。その瞬間、薄暗い明るさに慣れていた目は反射的に瞼を閉じさせた。少し経ってから薄目を開けると、松明の数倍の光を放つホタルの様な形をした虫が二匹見えた。

 内部を照らされ、見えるようになった坑道の中には、壊れて放棄されたのであろう土工具が散乱している。

「あまり長い坑道じゃないようだから、ゆっくり行こうね」

 地上から洞窟へ入った時の様にテクト、アオイ、メンの順番で進む。坑道は外界と繋がっている入り口よりも大きなようで、メンでも立ち上がって行動できた。

 途中で緩やかに湾曲したりもしていたが、坑道は基本的に真っすぐだった。

 ある地点に来た時、テクトが不意に、街道保安局によって掘られた一番長いトンネルの全長を超えたと悔しそうに言いだした。どうやら歩測で距離を測っていたらしい。

「まあ、穴掘りの技術は向こうの得意分野だし……。それぐらいは僕達より優れていてくれないとね……」

 そんなテクトの負け惜しみが坑道にこだました。

 途中で休憩も入れつつ、奥へ進んでいく。テクトが言うには坑道の入り口から五ミイル程の距離まで来たという。そう言われ、アオイは何となく後ろを振り返ってみたが、途中で幾つかあった緩やかな湾曲は、入り口からの光を遮断しているようで何も見えなかった。

 それから少し歩くと、テクトは、アオイの方を振り返り、人差し指を立て口元に持って行った。静かにしろという事なのだろう。黙って頷く。

 光に照らされて見える範囲の壁面や天井には、アオイなら通れそうな大き目の横穴が、無数に開いていた。これが話に聞いたイワクイムシ達が開けた穴なのだろう。

 テクトが今度は静かに進みだした。アオイもそれに続こうと、足をゆっくりと上げ、上げた時と同じ速度で足を降ろした。しかし、足は地面に着く事が無かった。アオイはバランスを崩し、倒れた。転倒した音が僅かに坑道内に響く。急いで立ち上がり、倒れた原因を確かめる為、足元を見ると、横穴が下にも開いていた。光源に近いテクトが作り出した濃い影で、穴が隠れていたようだった。

 イワクイムシが転倒した音に反応したのではないかと思い、アオイは辺りを見回した。テクトやメンも同じ考えだったようで、辺りを見回している。

 イワクイムシらしき姿は何処にもなかった。何も起こらなかった事を確認して、アオイがホッとした時、天井から水滴が落ちてきた。アオイが上を見上げると、それはいた。

 顔に当たるであろう場所には、金属製のやすりのような歯が二つ、貝殻の様にかみ合うようにしてついており、その奥には巨大なミミズの様な本体が見える。初めて見るがそうに違いない。絶対にイワクイムシであった。

 アオイはそのグロテスクな見た目の生物を不意に見たショックで、おもわず声にならない悲鳴を上げてしまった。その悲鳴に反応して、穴という穴から、顔つきからくるイメージそのままの、大きなミミズの様な体をしたイワクイムシが飛び出してきた。

「走って!」

 隊列を来た時の逆順にして急いで引き返していく。走って行くと、新たに穴を開けたのか、通った時には穴が無かったはずの箇所でも、イワクイムシが幾匹も飛び出し、道を塞いでいる。

 前方に現れたイワクイムシをメンは武器として手にしていたハンマーで豪快に吹き飛ばしていき道を開けていく。時折見えるメンの横顔は、自分が全力を振るえる状況を楽しんでいるようだった。

「流石だね!メンちゃん!」

 テクトも剣でイワクイムシを撃退していた。

 いくら撃退しても、イワクイムシは減るどころか、戦いによって発生した音に導かれるようにして、どんどん壁を食い破り、坑道内に飛び出してくる。

 メンが道を作り、少し進むと、また行く手にイワクイムシが立ち塞がる。それを何十回も繰り返しながら出口へ向かう。

「こりゃまずいかもね!」

 珍しくテクトが弱音を吐いた。メンは何も言わなかったが、激しく肩で息をしている。こんな状況でも戦う事の出来ない自分がもどかしかった。

 新たに数匹のイワクイムシが目の前に現れた。もう終わりかとアオイが思った時、急にイワクイムシ達の動きが一斉に止まった。そして、ほんの少しの硬直時間を経て、驚くほどの速さで自分達が開けた横穴へと帰っていった。

 何かまずい事が起きる。そう本能でアオイは理解した。他の二人を見ると顔の表情から察するに同じ事がよぎったようだった。

 三人は同時に駆け出した。誰が指示するでもなく。

 しかし、手遅れだった。少し進んだところでその『まずい事』が起きた。肩や頭に石のかけらが落ち、足元が揺れ始めた。地震だった。

 揺れは収まるどころか徐々に激しくなっていった。アオイはせめて地盤が固いところまで行こうと思い、壁に手を突きながら進んで行く。

「危ない!」

 その声が聞こえたと同時にアオイは突き飛ばされた。その直後に周囲の天井や壁が崩れ、もうもうと土煙が舞った。


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