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ロードオブロードロウドウ  作者: 昼ヶS


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第二十一話

 再び大きな屋敷に行くと、話は既に通されていたようで、謁見の間へと案内された。

 謁見の間はドワーフ族の小さな体躯に合わせて作られたからか、人間のそれと比べるとやや小さかった。

 中にはアオイ以外誰もいない。邪魔にならないように部屋の隅に移動し、そこで待つ事にした。

 程なくして、テクトが牢番に連れられてやって来た。テクトは入るなりアオイに気づき、何故ここにいるのかと聞きたそうな顔を向けてきた。

 牢番が部屋から出ていくと、入れ替わるようにして奥からトルクルが来た。部族の長としての威厳を出す為か、大きな宝石のついたアクセサリーを大量に身に着けている。その恰好は確かに煌びやかではあったが、悪趣味とも取れそうだった。

 トルクルとテクト双方が歩み寄り、話すのに適した距離にまで近づくと、ほぼ同時にお互いが謝罪した。どうやらテクトも牢の中で反省したらしい。

「……お互いに謝罪の気持ちを伝えあったところで、早速前の話の続きと行きたいところなんだけど……。あの隅にいる人間の女性……アオイはどうしてここに?」

 テクトがトルクルにそう尋ねた。

「なんや、知り合いやったんか。てっきり局員じゃない人間は無関係の者やと思ってたんやけどな。……まあ、ええわ。アオイがここにいるのは成り行きや」

 テクトはそれで納得したようだった。

「成り行き……ね。……まあ僕も似たようなものか」

 二人の仲直りが済んだ今、アオイがこの場にいる必要は無い。これからする話の邪魔になってはいけないと思い、アオイは一言言ってから部屋を出ようとした。しかし、テクトとトルクルはそれを制した。二人が口を揃えて言うには、いてもいなくても変わらないからいて良いとの事だった。別にいてもいなくても変わらないのであれば出て行ってもいいだろうとアオイは思ったが、二人がまた言い争いをする可能性がある事も考慮し、結局残る事にした。

「……それで本題なんだけど。前に質問した、統一連盟に加盟するかどうか、そしてこの洞窟は魔界の方まで繋がっているのかどうか。この二つの返答を知りたい」

 少し間を開けてトルクルは答えた。

「……一つ目の問いやけど、統一連盟に入るんはまだ決められへん」

「何故?」

「うちは外の様子を殆ど知らん。やから、それに入って本当に皆の暮らしが良くなるのか分からん今の状態やと何とも言えへん」 

 部族の長として当然の考えだった。税収の一割も納めて町に何の利点ももたらさないというのであれば割に合わない。

「……成程、二つ目は……?」

「魔界に繋がっとるかどうかっちゅう問いに対しては、答えは繋がっとらん、やな。うちらも繋ごうとしたけど『イワクイムシ』がいるからか、地盤が脆くて途中でやめにしたんや」

 テクトはその二つの返答を聞いて考えこみ始めた。悲願達成のために何としてでも二つとも縦に首を振らせたいのだろう。いつになく真剣な表情で考えている。しかし、なにも思いつかないのか中々口を開かない。

 そんなテクトの様子を見かねたアオイは、二人のそばへと近づき、二つ、提案をした。

 最初の提案はトルクルを局員として迎え入れるというものだった。局員としての業務を通して、統一連盟に加盟してある町や村などを見てもらい、この町が加盟するか判断してもらおうという事だった。

 その提案にトルクルはあっさり乗った。何でも、町の運営は全て、先代からの行政官達がやってくれている為、トルクルが町にいてもする事が無いらしい。

「やから折角の機会やし、色々見させてもらうわ」

 テクトは局長としてその提案を意外にもあっさり受け入れた。ドワーフ族であるならば建築技術は申し分ない上に、憎しみ合うエルフ族にですら自ら謝罪しようとする心の正しさを持ったドワーフ族であるならば、街道保安局にふさわしいという事だった。

 二つ目の提案は、その途中まで掘り進んだ坑道を調査させてほしいというものだった。トルクルはこの提案には難色を示した。その坑道付近に生息している『イワクイムシ』は人を食べる事は無いが、音に強く反応する為、近くで音を出すと襲われるらしい。

「そこをなんとか……!」

 アオイは頼み込んだ。人というものはひたすら頼まれれば何事も断りづらくなる。それが一度心を許した者であれば尚更だった。

 何度も頼み込むアオイに、トルクルは遂に根負けして、坑道へ向かう事を渋々了承した。

「そんなに頼まれたら断り切れんやん……」

 そう言うと、坑道に行くにあたって必要なものがあると、トルクルは二人を別の部屋へと連れて行った。

 薄暗い廊下の中で、トルクルの身に着けた宝石が動きに合わせて煌めく。目的の部屋へ行く途中、トルクルはその坑道について説明してくれた。

 坑道は一方通行な為、迷う心配が無いという事。もし横穴があればそれはイワクイムシが開けた穴であるという事。脆くなった地盤は、大きな地震が起きれば崩れる可能性のあるぐらい弱いという事。

「着いたで。眩しいから暫く目閉じときや」

 それらの事が話し終わった頃に着いた、隙間から光の漏れ出ている扉の前でトルクルはそう言った。アオイは言われた通りに目を閉じた。

 扉の開く音がすると瞼越しに光を感じた。それから少しの間何か作業をするような音がし始めた。その音が無くなると、扉の閉まる音がし、トルクルに目を開けるように言われた。

 目を開けると、アオイは黒い布をかぶせた虫かごの様な物を渡された。

「この中におるんは、タイヨウボタルという虫や。照明として松明より明るくて軽いし、それに長持ちする。……まあ、あまり数がおらんから二匹だけやねんけどな」

「そんな希少なのを……。どうもありがとう」

 アオイは礼を言った。テクトも感謝の意を示した。

「ええって!ええって!もう仲間やねんから!……ただ、すまんけど案内は無いわ」

 トルクルが言うには、この町のドワーフ達は坑道へ行く事の危険性を知っており、誰も行きたがらないようだった。

「うちが案内してもええんやけど、今日来たばかりの余所者の為に行くんは皆反対するやろうし……。ほんま堪忍な……」

「うん。大丈夫だよ。立場があるのはお互い様だし。それに道は一本道なんでしょ?平気だよ」

 テクトはそう言い、気遣った。

 もしかして、エルフ族とドワーフ族が心を通わすという歴史的な瞬間に立ち会っているのではないかとアオイは思った。


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