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ロードオブロードロウドウ  作者: 昼ヶS


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第十六話

「悪い人ではないと思うんですけど……どうしても苦手でして……」

 小屋の中に置かれた、藁を編んで作られたベッドに腰掛け、メンは自分の心情を吐露していった。

「まあ……分かるわ……」

 あれだけの声量に捲し立てられたら、気の弱い者ならばそれだけで気が竦むだろう。例え悪気や害意が無くても。それが好意によるものだったとしても。

 間違いなくクレンはメンに好意を向けていた。各地の酒場で、男女問わず多くの恋愛相談を受けてきたアオイだから気付いたというわけではない。人としてそれなりに成長した者なら誰であろうと分かる。それほどあからさまで熱烈な求愛行動だった。

 ただ、メンにその気がないのであれば、何時までもこの状態を続けさせる事はお互いにとって損でしかない。そう思い、それをどうやってクレンの心を傷つける事なく伝えようかとアオイが悩んでいると、メンが衝撃力のある一言を口にした。

「それにクレンさんと目が合うと……胸が苦しくなるんです……」

  

「それは恐怖を感じてるからじゃなくて?」

 翌朝。詰め所近くにある、自然堤防と呼ばれる川の流れに沿ってできた土手でテクトはそう言った。その表情は冗談を言っているようでは無かった。

「……はぁ?何言ってんのよ。恋よ恋。つまりお互いに好き合っているのよ、二人とも」

 エルフ族というのは皆こんな感じのかとアオイは呆れた。

「それで?」

 昨日より水かさが減り流れが穏やかになったイルナ川を眺めながら、テクトが本題を促してきた。

「クレンについて教えて頂戴。それと何時頃ここを発つのかも」

 出発の予定はすぐに返ってきた。テクトの予想では、川の様子を見るに昼前に作業が開始できそうであり、その作業が終わり次第出発するらしい。その時間は夕方になる前ぐらいだろうとテクトは言った。

「クレンに関してはね……」

 テクトはそう言い、顎に手を当てやや上空を見始めた。それから程なくしてクレンについて話し始めた。

 種族は巨人族。年齢は本人が失念しているらしい。巨人族にしてはかなり小さな体格が生まれついてのコンプレックスだったが、その小ささ故に他の同族たちが読む事のできない文字を読めると分かると、その強みを活かすために勉強を始める。二年程前にテクトが文字の読める巨人族がいるとのうわさを聞きつけスカウトし、現在に至る。

「こんなとこかな?……ああ、それと、声の大きさは同じ巨人族と会話するために自然とそうなっていったようだよ」

 アオイは水道の補修現場で再会したレリの声の大きさを思い出した。確かにあれだけ大きな声でなければ、巨人族の会話に小さなクレンが入るのは難しそうだった。

「……もう一つあったけど、僕と喋っている時はあんな感じじゃないんだよね。というよりメンちゃんと話している時だけああなるみたい」

 尺杖を弄びながら、テクトは更に続けて言った。

 好きな人を前にし、気が急いてしまってああなっているのだろう。それならば自分と一対一だと冷静に話せそうだとアオイは思った。

「川の様子も見たから帰ろうか」

 そうテクトが言った時、詰め所の方から大きな声が響いてきた。

「それ借りるわよ」

 アオイはテクトの返事を待たず尺杖をひったくると、その声のした方へと駆け出していった。

 詰め所に戻ると案の定、クレンがまたメンに言い寄っていた。

「機材の整備、俺も暇なんで手伝います!どうせ川が落ち着くまでなんもやる事ありませんし!そうだ!これが終わったら村へ行って食事でもどうですか!?勿論……局長とアオイさんを含めての四人で!それから――」

 アオイは二人のそばまで駆け寄ると、背と腕を目一杯伸ばし、尺杖を二人の顔の間に突き出しちらつかせた。突然視界に入った尺杖に驚いたようで、クレンはそれの持ち主であるアオイの方を見た。

 アオイはクレンに喋る暇を与えず腕を引っ張り、メンから離れた所へ連れて行った。その大きな声が届かないほど遠くへ。

 声が届かないであろう場所まで来ると、そこでクレンを離し、アオイは、

「これからあんたにとって大事な話をするから、話すときは極力声を抑えなさい」

 と言った。クレンはその言葉に了承したようで、

「はい」

 と人間でいう普通の声量で返事をした。アオイはまず、メンと話をする時はその声量で話すように言った。

 その次に、クレンの勢いにメンが怖がっているという事を伝えた。

「……そうだったんですね。メンさんを前にすると、俺、つい興奮しちゃって、時々自分でも何を言っているのか分からなくなるんですよね。……そういえばメンさん、今まで俺に一言も話してくれてないな……」

 肩を落とし項垂れたクレンは、心なしかアオイよりも小さく見える。この人間からしてみれば大きな体を持つ者は、どうやら心は繊細らしい。

「こんな自分じゃ好きな人にも振り向いてももらえませんよね?」

 明らかに否定を求める問いである。自分以外の恋愛ごとに関してなら百戦錬磨のアオイが答えを間違うわけが無かった。

「そんな事無いわよ。あんたよく見ればかっこいいし……」

 嘘は言っていない。実際にクレンの顔は、巨人族からしてはどうかは知らないが、人間であるアオイからしてみれば整った顔をしていた。体つきも手足が巨人族らしく若干大きいという点以外は、筋肉質な大きな人間といった感じでこれもかっこいいと言えるだろう。

 無意識に求めた励ましでクレンは自身を取り戻した。身長通りの大きさに戻ったクレンにアオイは一つアドバイスをした。

「いい?多分だけど、メンちゃんはあんたと喋ろうとしているわ。あんたの声で聞こえないだけで。だから自分からいかず、向こうが話すのを待ちなさい」

 アオイの見立てでは、メンもクレンに気がある。それならば、話す機会があれば自然と話すだろう。

「分かりました。メンさんが話してくれるのを、俺、待ちます」

 そう言った直後、上空からクレンを呼ぶ声が聞こえてきた。その声のした方を見ると巨人族が数人、口々にこんな事を言いながらクレンを探していた。

「若!どこですか!?そろそろ始めようって局長さんが言ってましたぜ!」

 その言葉を聞く限り、どうやら川の様子が落ち着いたようだった。

 


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