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もしも、赤ずきんちゃんと一寸法師とさるかに合戦が出会っていたら

作者: 吉善

あるところに、赤ずきんをかぶった赤ずきんちゃんというとても可愛らしい女の子がいました。

その日赤ずきんちゃんは、お母さんからのお使いで、森の向こうにすんでいるおばあさんのお家へ向かっていました。

森を抜けておばあさんのお家に着いた赤ずきんちゃん。

ですが、お家の中のベッドで横になっていたおばあさんは、この前会った時よりも、目や耳や口が大きい気がしました。

「ねえねえ、おばあさん」

「なんだい? 赤ずきんちゃん」

「おばあさんの目は、どうしてそんなに大きいの?」

「それはね、赤ずきんちゃんのかわいいお顔をしっかりと見るためだよ」

「それじゃあおばあさん、おばあさんの耳はどうしてそんなに大きいの?」

「それはね、赤ずきんちゃんのかわいい声を、たくさん聞くためだよ」

「それじゃあおばあさん、おばあさんの口はどうしてそんなに大きいの?」

「それはね、赤ずきんちゃん。お前を食べるためだよ!」

ベッドで寝ていたおばあさんの正体は、本当はオオカミだったのです。

オオカミは赤ずきんちゃんよりも先におばあさんのお家に着き、なんとおばあさんを食べてしまっていたのです。

そしてオオカミはおばあさんのふりをし、赤ずきんちゃんまでも食べようとしていたのです。

驚いた赤ずきんちゃんは、逃げる間もなくオオカミに食べられてしまいました。

「ふう、食べた食べた。おばあさんと赤ずきんちゃんを食べたぞ。食べたらなんだか眠くなってきた。そのままベッドで寝てしまおう」

そう言うと、オオカミはそのまま眠ってしまいました。


食べられてしまったおばあさんと赤ずきんちゃん。

このまま二人は助からないのでしょうか?

いえいえ、オオカミが赤ずきんを食べてしまったところを、窓の外から見ていた人がいたのです。

体の大きさは一寸。

三センチしかない男の子。

名前は一寸法師といいました。

「大変だ大変だ。オオカミが赤ずきんをかぶった女の子を食べてしまった。それもあのオオカミ、おばあさんを食べたとも言っていた。これは大変だ大変だ」

はりを刀の代わりに腰にさし、おわんの船をおはしでこいで川を下ってきた一寸法師。

武士になるため京へ向かおうと旅をし、その途中食べ物を分けてもらおうと家の中を覗いたところ、赤ずきんちゃんがオオカミに食べられたのを見てしまったのです。

一寸法師が小さな体で走りまわっていると、そこに栗とハチと臼が通りかかりました。

「おや、誰だ? あの小さな男の子は」

「栗さん、ハチさん、臼さん。大変です、赤ずきんをかぶった女の子がオオカミに食べられてしまいました」

話を聞いた栗とハチと臼はさっそく、一寸法師とオオカミをこらしめることにしました。


そんなことを知らないオオカミは、気持ちよさそうに大きな口を開けていびきをかきながら、ベッドで眠っていました。

すると突然、大きく開けていた口の中に何かが入り、オオカミはそのまま飲み込んでしまいました。

「ん? 今、何かを飲み込んでしまったぞ」

赤ずきんちゃんとおばあさんで丸々と大きくなったお腹をさすっていると、なんとオオカミの口の中から男の子の声がしてきました。

「やい、オオカミ。女の子とおばあさんをお腹の中から出すんだ。出さないと痛い目にあわせるぞ」

口の中からする声に驚いていると、オオカミのお腹の中にはりがささったように痛み出しました。

大きく開けた口から入った一寸法師は、オオカミのお腹の中を刀の代わりにしていた針で刺したのです。

「痛い、痛い!」

あまりの痛さに、オオカミは赤ずきんちゃんとおばあさんを吐き出してしまいました。

「ごほ、ごほ! なんだ、この小さい子供は!」

「一寸法師だ。悪いオオカミめ、こらしめてやるぞ」

せっかく食べた赤ずきんちゃんとおばあさんを吐き出させた一寸法師に、オオカミは怒って飛びかかりました。

と、その時でした。

お家の中にあった暖炉から突然熱々になった栗が飛び出し、オオカミのおでこにぶつかったのです。

「あ、熱い!」

その栗の熱さにオオカミはおでこを押さえながら、壁にぶつかったり、ベッドに足を引っ掛けて転んだりと、部屋中を走り回りました。

「み、水!」

オオカミはおでこを冷やすために、台所へ向かいます。

ちょうど流し台には、水がたっぷり入った皿洗いに使う水入れがありました。

おでこに水をかけて冷やすため、オオカミは水入れを両手でぐっと持ち上げます。

と、その時、水入れの陰に隠れていたハチがぶーんと飛び、オオカミの鼻にとまりました。

そしてハチは、お尻についているハリを、オオカミの鼻にチクリと刺したのです。

「―っ!」

あまりの痛みに、オオカミは持っていた水入れをひっくり返しました。

たくさんの水と一緒に、水入れがオオカミの顔にかぶさりました。

「ま、前が見えない!」

急に目の前が真っ暗になり、オオカミは驚いて水でびしょびしょになった床にすってんころりんの一回転。

「に、逃げろー!」

お腹の中に入った一寸法師のせいで赤ずきんちゃんとおばあさんを吐き出してしまったり、熱々の栗がおでこにぶつかったり、ハチに鼻を刺されたり。

ついにオオカミは家の中にはいられなくなり、家の外へと逃げ出しました。

しかしドアから家の外へと飛び出したその時、オオカミは上から降ってきた臼に踏みつぶされてしまいました。

オオカミが外に出た時に踏みつぶせるよう、臼は屋根の上で待っていたのです。

「悪いオオカミ! もう悪さはするな!」

「ごめんなさい! この打ち出の小槌をあげますから、許して下さい!」

とても懲りていた様子だったので、一寸法師と栗とハチと臼はオオカミを逃がす事にしました。

そして、打ち出の小槌を一寸法師が受け取ると、オオカミは森の中へと消えて行ってしまいました。


オオカミがいなくなった後に目を覚ました赤ずきんちゃんに、打ち出の小づちを使えば体が大きくなると聞くと、一寸法師はそれを振ってもらいました。

すると一寸法師の体はぐんぐんと大きくなり、あっという間に六尺、百八十二センチの大人へと変わりました。

その後、赤ずきんちゃんはお母さんのまっている家へと帰り、栗とハチと臼は久しぶりにカニの家へ行こうかと言ってどこかへ行ってしまいました。

そして、一寸法師は旅を続け京へ着き、そこにあった立派な屋敷の娘と結婚しましたとさ。


本当は出会う事のない、赤ずきんちゃん、一寸法師、さるかに合戦の栗とハチと臼。

それらがもし出会っていたら。

そんなもしもの、お話でした。

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