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6 ダンジョン探索


「いいの!?」


 翌日の昼休み、一緒にダンジョンに行こうと言うと大声が帰ってきた。


「あ、あぁ、気が変わってなければだけど」

「変わってない、変わってない! やったー! あたし学校の友達とダンジョン行くの初めて! 卒業するまでにこういうことしてみたかったんだー! 嬉しい! ありがとう!」

「ど、どう致しまして」


 こちらがびっくりするくらい、真導は喜んでいた。


「じゃあじゃあ、早速計画を立てないと! って言っても冒険者見習いだけで行けるダンジョンって多くないけど」

「お互いがどう動くかもわからないし、一番簡単なダンジョンがいいんじゃないか?」

「たしかにー。じゃあー」


 携帯端末の画面に幾度も触れて、真導はダンジョンの検索をする。


「ここ! ここにしよ!」


 画面に映っているのは、俺も以前に行ったことがあるダンジョン。

 たしかにここなら難易度も低いし、ちょうどいい。


「あぁ、ここにしよう。あとは事前準備と待ち合わせの時間だけど」

「それなら――」


 その後、昼休みが終わる直前まで話し合った。

 気合いを入れて次の休日を待とう。


§


 ダンジョンは約半世紀ほど前に突如として現れた遺跡のことを指す。

 世界各地に魔物と共に出現し、大から小まで様々な種類が存在する。

 ダンジョンには潤沢な資源があり、その回収を目的として作られた組織が冒険者の走りだとか。

 良質な木材、肥沃な土、レアメタル、化石燃料、魔石。

 そして魔法の製法が記された古文書。

 それらの回収によって人類の生活は一変し、文明の利器に魔法が加わるようになった。

 市民権を得たそれは瞬く間に浸透し、今や機械と同じように無くてはならない存在だ。

 それによって幾つか法律が追加されたり変わったり、禁止されていたことが合法になったりとダンジョンはそれだけ人類に影響を及ぼしている。


「おーい、百瀬くーん!」


 待ち合わせ場所につくと、すぐに真導に見付けられた。

 大手を振って自己主張する彼女の格好は普段の見慣れた学生服じゃない。

 冒険者用に作られた特別丈夫な戦闘服。

 それも流行の可愛らしい色合いとデザインのものだった。


「待たせた?」

「ううん、時間ぴったり。それにしても」


 真導は俺の回りをぐるりと一周する。


「へぇ、学校にいるときと雰囲気違うね」

「戦闘服を着てれば誰でもそうだろ。真導もかなり違うし」

「でしょ? 可愛いの選んだんだー、どう?」

「どうって。まぁ、似合ってると思うけど……」

「ホント? よかったぁ。この戦闘服まだ誰にも見せたことなかったんだよねぇ。褒めてくれて嬉しい!」


 俺の言葉に嘘偽りはないけれど、あんな世辞みたいな言葉でも嬉しがってくれている。

 にこにこ笑顔になる真導を見ていると、言葉を尽くさなかったことが後ろめたく感じてしまう。

 次があればもう少し言葉を工夫したほうがいいかも知れない。


「じゃ、行こっか。準備オッケー?」

「オッケー。行こう」


 ダンジョンの出入り口には魔法で結界が張られている。

 この結界を潜るには冒険者の資格が必要であり、持っていないものは弾かれてしまう。

 俺も真導も資格は取得済み。

 蒼白く色付いた結界に触れるとすんなりと通過し、そのまま足を進めて通り抜けた。


「何回か来たことあるけど、二人だとなんだか緊張するね」

「真導もか? 俺もちょっとそわそわしてきた」


 内部の作りはダンジョンによって異なり、今回は迷宮が広がっている。

 石畳みの地面、ひび割れた壁、空中に浮かぶ燭台。

 仄暗い通路の先は暗闇で染まり、遠くまでは窺えない。

 俺たちは慣れない環境にすこし戸惑いながらダンジョンの奥を目指した。


「今日はファラちゃん連れて来たの?」

「いや、今日は留守番してる。アイル」


 その名を呼ぶと戦闘服の内ポケットから這い出してくる。


「ドラゴン!」

「くあー」


 白銀の鱗を身に纏うドラゴン。

 それは肩によじ登ると大きく欠伸をする。


「近くで見るのは初めて。触ってもいい?」

「いいけど、触るなら下顎だけにしてくれ」

「どうして?」

「鱗が刃物なんだ。慣れてないと指先がズタズタになる」

「わお。じゃあ言う通りにしとく。うりうりー」


 下顎を撫でられてアイルは気持ちよさそうに目を細めてごろごろと音を鳴らす。

 その様子に俺も和んだけれど、ここがダンジョンであると忘れてはならない。

 場が和んだところで気を引き締め直して通路を進む。


「分かれ道……たしかこっちだよね?」

「俺もそっちだと思うから合ってる」

「よかった。二人いると確実でいいねぇ。あ、あそこになんかある!」


 指差された先にあるのは壁で煌めくなにか。

 近くによって見るとそれは抉れた壁から露出した鉱石だった。


「細い傷が無数に……魔物が爪研ぎしてたみたいだな」

「言われてみればそうかも。よく気付いたね」

「うちの子が良くやるから」

「ほえー、そんなこと気にしたこともなかったよ、あたし」


 そう言いながら真導は鉱石に手を伸ばす。

 赤、青、黄色。

 様々な色の鉱石の一つを掴むと、簡単に外れて採取できた。

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