47 人の噂も
冒険者試験から日も空いた今日この頃。
校内に広がっていた噂や話題も、今や別のものに置き換わっていた。
廊下を歩けば若干の視線は感じるものの、一時期よりはずっといい。
ようやく収まりがついたと言った所で、だから今日は空き教室にきた。
「あ。なんか久しぶりだよねぇ、ここ」
扉を開くと先に小杖が来ていた。
「やっと皆が飽きてくれたからな。人の噂も七十五日って奴」
「まだそんなに経ってないけどね」
しばらく間が空いた空き教室にはまたうっすらと埃が積もっている。
それを軽く払ってから椅子に腰を下ろす。
換気のために開いた窓ではカーテンがふわりと踊っていた。
「えーっと、それでその牧原くん? だっけ。成功したの?」
「あぁ、牧原蓮。上手くいったよ、あとはアマルガムを討伐するだけ」
「それで濡れ衣を晴らせるんだよね?」
「どうだろうな……答えを濁していたし」
あの雪村さんの反応ははぐらかしていたようにも受け取れる。
今回の件が終わってもまだ疑いが晴れない可能性だって高い。
だからと言って俺に出来ることは少ないけど、やれることはやっておかないと。
「そっか。ねぇ、尊人くん。あたしに出来ることがあったら言ってね。協力するから」
「ありがと。じゃあ早速だけど一つ頼みがあるんだ」
「なになに? あたしにどーんと任せて! で、どんな頼み?」
「引き受けるのは内容を確認してからのほうがいいぞ、絶対」
「えー? でも、尊人くんなら大丈夫だよ。それでなんなの?」
信用してくれるのは嬉しいけど。
意外と警戒心が薄いのか? 小杖って。
ちょっと心配になるな。
「頼みって言うのは心重のこと」
「心重?」
「そう。いまウェポンビーストを持っているのは俺と小杖、伊鳴に蓮の四人だけだ。それで心重を使えるのは――」
「あたしたちだけ。だから、教えて上げればいいってこと」
「話が早くて助かる、そう言うこと。経験者が居てくれると何かと助かるんだ。今度、三人でダンジョンにいく予定になってるから、そこに小杖にも参加してほしいんだ」
「なるほど……でも、あたしが参加して大丈夫? ほら、実力的な……ね?」
「大丈夫だ。そんなに難易度の高いダンジョンじゃないし。それに俺が蓮の件で掛かり切りになってた時、伊鳴とダンジョンに挑戦してたりしたんだろ?」
「それは……そうだけど」
伊鳴と小杖は俺が思うよりも仲がいいらしい。
俺の知らないところで交友が深まっていたようで、伊鳴からメールで何通かそう言いった文章が送られて来ていた。
たまに写真も。
「その伊鳴が大丈夫だって言ってたんだ。実力は申し分ないって信じるよ、俺は」
「うむむむ……わ、わかった。じゃあ、あたし頑張る。みんなに食らい付いていくから」
「よかった。じゃあ、決まりだな。日時なんだけど――」
事前に聞いていた伊鳴と蓮の予定とも擦り合わせ、大まかな日時が決まる。
最後にこの場にいない二人の了解を取れば正式決定だ。
アマルガムと戦う前に、二人には心重を覚えてもらう。
シフもヒートも懐いているし、そんなに難しくはないはずだ。
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