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44 炎と水の共闘


 サラマンダーが牙を向き、灼熱のブレスを吐く。


「うおっと」


 炎の魔力を宿す蓮に効果は薄いが、熱いものは熱いだろう。

 水流を纏う槍、ダーツ。

 一度薙ぎ払えば水流の刃が飛び、火炎ブレスを斬り裂いて本体まで届く。

 叩き付けられたサラマンダーは鱗を散らし、一筋の傷を刻みつける。


「それがウェポンビーストの力か。やっぱ十年前とは違ぇな。負けてらんねぇ!」


 痛みに怯んだところへ蓮の追撃が打ち込まれた。

 殴打の衝撃により炎の魔力が爆ぜ、更に鱗を何枚か剥ぐ。

 燃え盛る鱗を身に纏っていようと、それが剥がされては焼けてしまうもの。

 サラマンダーは下顎に火傷を負い、大きく後退った。


「なんだ二人なら楽勝だなぁ、おい」

「相手を甘く見るなよ、昔からの悪い癖だ。ゲームでいつも逆転負けしてたし」

「今は俺のが強い」

「どうかな」

「試してみるか?」

「望むところだ。あいつを倒したらな」


 ダメージを受けたことで、サラマンダーは更に火力を上げる。

 陽炎を纏い、空間が歪む。

 口腔で蓄えられた火炎が解き放たれ、数多の溶岩弾がまき散らされた。


「そらッ!」


 迫り来るそれらを蓮は拳で叩き割って前進。

 こちらも水流の刃を飛ばして撃ち落とし、蓮の道を切り開く。

 至近距離にまで攻め込んだ蓮に、今度は火を灯した鋭爪が振るわれた。

 踏みつぶすような動作に対抗するように、炎の拳が唸る。

 振り上げた一撃はサラマンダーの鋭爪を破壊した。


「畳みかけるぞ、蓮!」

「オッケェ!」


 燃え盛る火炎の只中で、蓮は拳を振るい続ける。

 その爆発力はサラマンダーを圧倒するほどで、そのまま押し切れてしまいそうなほど。

 だが、それは得物である手甲が融解するまでの間のみ。

 伊鳴ほど魔力制御が達者ではない蓮の攻撃は、あと数秒もすれば終わってしまう。

 だから。


「心重」


 ダーツと心を重ねて自身の周囲に水面を構する。

 ダーツの心重は地面を水面とする滑走。

 飛沫を上げてサラマンダーを中心に旋回するように滑り、側面へと回り込む。

 足は止めず、ダーツを振るって流水の刃を天井に向けて放ち、サラマンダーの背中へと落とす。

 炎鱗が裂け、飛び散り、刻まれる傷。

 大したダメージにはならないが、それでいい。

 鱗と共に飛び散った水飛沫が降り注ぎ、蓮の手甲を冷やすからだ。


「こりゃいい!」


 持って数秒の制限時間が、降り注ぐ水飛沫によって延長される。

 濡れた拳を乾かすように、蓮の殴打は更に激しさを増す。

 炎鱗を割り、牙を折り、骨格を砕く。

 顎は外れ、だらりと地面に垂れていた。


「仕上げだ! 尊人!」


 蓮はサラマンダーの頭上に飛び乗ると、上顎を掴んで大口を開かせる。


「手柄は譲ってやるぜ!」

「あぁ、任せろ!」


 水面を滑走してサラマンダーの正面へ。

 その口腔では火炎が圧縮されていたが構いやしない。

 ダーツを持ち替え、大きく振りかぶり、勢いのまま投げつける。

 飛沫を上げて飛んだ穂先は流水の刃を纏い、目標まで一直線。

 梶木鮪かじきまぐろの飛び込みのように、ダーツの投擲のように、それはサラマンダーの口腔を貫いた。


「決まりだ! やるな、尊人!」


 サラマンダーに大穴を空け、その命を鎮火させた。

 死体は力なく倒れ伏し、蓮が地面に降りると魔石化する。


「ほらよ」


 サラマンダーの魔石が投げ渡され、慌ててそれを掴む。


「いいのか?」

「俺の報酬はこれだろ?」


 蓮は両手を広げ、地面に散らばったサラマンダーの鱗を示す。


「たしかにな。それじゃあ遠慮なく」


 雑嚢鞄に魔石をしまうと、蓮は飛び散った鱗を魔法で回収していた。

 大部分は魔石となってしまったが、それでも掻き集めれば相当な数になる。


「これだけあれば足りるか?」

「たぶんな。足りなかったら――」

「また二人で来りゃいいか。んじゃ、帰ろうぜ」

「あぁ」


 大量の炎鱗が雑嚢鞄に仕舞われる。

 本日の成果を大事に持ち帰り、準備は整った。

 蓮の手甲をウェポンビーストにしよう。

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