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38 異変の元凶


 休日の朝、ウェポンビーストたちのご飯を済ませてすこし遅めの朝食を取る。

 こんがりと焼けたフレンチトーストを口に運びつつ、新聞の記事に目を通す。

 紙面を飾る文字や写真を視線でなぞり、情報を頭に入れていく。


「ダンジョンの異変? これって」


 記事の詳細を読もうと目をこらすと、手元で形態端末が鳴る。

 伊鳴からだ。


「もしもし、伊鳴? もう調査終わったのか?」

「うん。一応、終わったよ。尊人の声、久しぶり」

「言うほど何日も経ってないけどな」


 ここ最近になって会う頻度が集っただけで、元から数日空くことなんてざらだった。


「なら、延期してた約束もこれで果たせるな」


 本格的にウェポンビーストの扱い方を教えられる。


「それだけど」

「ん?」

「まだ掛かりそう」

「なんで?」

「尊人に協力してほしいことがあるの」


 伊鳴が協力を求めてくるのは珍しいことだった。

 頼みらしい頼みもウェポンビーストの件を除けばほぼない。


「伊鳴の頼みだし協力はするけど、俺になにをしてほしいんだ?」

「それは会ってから」


 その時、インターホンが鳴る。

 玄関の扉を開くと、その先に伊鳴が立っていた。


「俺が協力しないって言ったらどうするつもりだったんだ?」


 形態端末の通話を切る。


「尊人なら協力してくれると思ってたから、考えてない」

「そこまで信頼されちゃ、乗り気じゃなくても首を縦に振ってたな」


 とりあえず伊鳴を部屋にあげる。


「いい匂い」

「フレンチトーストだ。ほしい?」

「ほしい」

「じゃあ、ほら」

「やった」


 二枚あるうちの一枚を伊鳴に渡す。

 早速、かぶり付いていた。


「あー……」


 頬張ったフレンチトーストを飲み込むまで、少し待つ。


「それで、俺になにをさせたいんだ?」

「美味しい」

「ありがと」

「実は今回の調査で異変の原因を見付けたの」


 またフレンチトーストを口に運ぶ。


「異変の原因ってたしか縄張りを荒らしていた何か、だよな」

「そうふぁよ、いふぁたひぃがちょうふぁ――」

「急かした俺が悪かった、食べ終わるまで待つから」

「うん」


 それからお茶を煎れたりしながらフレンチトーストがなくなるのを待った。


「伊鳴たちが調査して、その何かを見付けて討伐した。まだ名前も付いてない魔物。その一部を持って帰ってきた。尊人にその一部を見てほしい」

「一応、聞くけど。なんで俺に?」

「その魔物が金属と融合していたから」


 それを聞いた瞬間、脳裏を過ぎったのは先日の異形だった。

 生きているのに生き物のように感じない、あの奇妙な魔物。

 あれと同種か、あるいは派生種がいたのかのかも知れない。


「この特徴が……怒るかも知れないけど、ウェポンビーストに似てる、からって」

「……大丈夫だ、怒ったりしないから」


 伊鳴の言う何かがもしあの異形のことを指すなら良い気分はしない。

 けれど、そう判断されてしまうのもしようがないと理解はしている。


「……その魔物、もしかして体中から剣を生やしてなかったか?」

「なんで……知ってるの?」

「やっぱり。じゃああいつが……」


 俺たちは意図せず、異変の元凶に会っていた。


「この前、宮殿ダンジョンに挑戦した時に襲われたんだ。二体いた」

「宮殿ダンジョン……」

「こいつが証拠だ」


 引き出しから灰色の魔石を取りだし、伊鳴に投げる。

 あの日、魔石の換金を行った際にこの魔石は弾かれてしまった。

 不純物が多く含まれていて、魔石としての価値はないのだとか。


「……宮殿ダンジョンには二人で?」

「あぁ、呼んだほうがいいか?」

「うん、現地集合。場所は冒険者組合本部」

「わかった」


 電話帳から携帯番号を呼び出して通話をかける。


「はい! もしもし!」


 そして思ったよりも直ぐ、慌てたような声で返事が返ってきた。


「悪い、なにか用事でもしてたか?」

「ううん、今は特になにもしてなかったけど」

「そうか? ならいいんだけど」


 それにしてはやけに慌ててたような気がしたけど。


「実はいま家に伊鳴が来ててさ」

「伊鳴ちゃんもう調査終わったんだ」

「あぁ、それで俺たちに確認したいことがあるんだってさ」

「あたしたちに?」

「あの得体の知れない魔物のことだよ」

「……わかった。あたしどうしたらいい?」

「冒険者組合の本部に現地集合。俺たちもすぐに向かうから」

「うん、あたしも準備したらすぐ行くから」

「ありがと、休日なのに」

「ううん、久々に伊鳴ちゃんにも会えるんでしょ? 色々と話したいこともあるし、全然大丈夫。じゃ、冒険者組合でね」

「あぁ、それじゃ」


 通話を終えてすぐに外出の準備に取りかかる。


「小杖、来てくれるってさ。俺たちも行こう」

「うん。うん?」


 準備を整えて向き直ると伊鳴は小首を傾げていた。

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