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23 冒険者試験


「うぅー、緊張するー。あたしホントに合格できるのかな」

「昨日まで自信満々って感じだったのに」

「昨日は昨日! 今日は今日! 本番になったら緊張するのは当然でしょ!」


 戦闘服を身に纏い、試験会場へと向かう道すがら。

 隣を歩く真導は今にも体調を崩しそうなほど緊張していた。


「百瀬くんは緊張してないの?」

「真導ほどはしてない。最悪、今回がダメでも来年があるし」

「あたしそこまで待てないよ。それにこんな緊張すること二回もできない! あたしやだ! やだー!」

「緊張のあまり精神年齢が大変なことに……」


 珍しいこともあるものだ。


「でも、そうだな。格好悪くはあるか。今日が学校を休んでるから、クラスメイトにバレてる訳だし。真導はいいのか? 秘密にしてただろ? 冒険者見習いだって」

「あ、うん、まぁね。こうしなきゃ試験受けられないし、隠してたのは半端なままじゃなんとなく恥ずかしいと思ってたからだし。いい加減、覚悟決めなきゃね」

「ここで受かれば半端物じゃなくなる訳だ。なら絶対合格しないと」

「言わないでー! これ以上はお腹痛くなっちゃう!」


 真導の腹の調子を心配していると目的地に辿り着く。

 飾り気のない無機質で事務的な試験会場。

 その周囲には戦闘服を身に纏った冒険者見習いたちが集っている。

 見たところ世代は俺たちと似たようなもので、大きく離れている人は見掛けない。

 多少の上下はあれどみんな十代だ。


「こんなに受けるんだね」

「人数は関係ない。優秀な奴が受かるんだ。つまり、俺と真導だ」

「あたしって優秀なのかな」

「俺が保証する。大丈夫だよ」

「……あははっ、そだね。なんか元気出てきた!」


 真導はいつもの調子に戻ったようで足取りに力強さが増す。

 その様子にほっとしつつ俺たちは人の流れに乗って試験会場へと足を踏み入れた。

 冒険者試験は筆記と実技。

 まず筆記試験が開催され、俺たちはペンを持って問題と格闘する。

 多少の苦戦は強いられたものの勉強の甲斐あって自信を持った解答をすることができた。

 頭を使っているとあっという間に時間は過ぎ、筆記試験は終了。

 この時点で頭を抱えている生徒も少なくない。

 心配になって真導のほうを見やるとちょうど目と目が合う。

 真導はにっと笑ってピースサインを作り、俺もそれと同じように二本指を立てる。

 どうやらお互いに筆記試験は上手く言ったみたいだ。


§


「あぁー、糖分が染みる……」

「風呂上がりの親父みたいなこと言ってる」

「だっていっぱい頭使ったんだもん。これだけで一キロくらい痩せた気がする」

「実技の試験が終わったら骨と皮だけになってそうだな」

「そうならないようにしっかり糖分補給しとかないと」


 自動販売機からがこんと音が鳴って真導はまた缶ジュースに口を付ける。

 この様子だと腹の調子はよさそうだな。


「そろそろ時間だ。みんなも移動し始めてるし、俺たちも行こう」

「オッケー。実技も張り切って頑張るよ!」


 ゴミ箱に缶を捨て、実技の試験へと向かう。

 なにが待ち受けているかは向かってからのお楽しみだ。


§


 流れ落ちる砂、乾燥した空気、灯る燭台、石造りの壁。

 砂に塗れた通路には何体もの魔物の足跡が連なり、奥の暗がりに消えている。

 ここは実技試験の会場。本来、冒険者見習いが立ち入りを禁じられている領域。


「ダンジョンの踏破か」


 このダンジョンを踏破し、最奥へといたる。

 それが実技試験の内容だ。


「出来れば真導と合流したいけど……」


 周囲には誰もおらず一人きり。


「まさかダンジョンに直接転送されるとはな」


 筆記の試験会場で実技試験の開始が宣言された直後、俺たちの足下には魔法陣が現れた。

 それは俺がよく使う召喚魔法に類するもので、俺たちはその魔法陣によってダンジョンへと転送された。


「とにかく重要なのは速さと魔石の数。時間がないぞ、急げ俺!」


 混乱が抜けきらない自分に言い聞かせるように言葉を吐いて雑嚢鞄に手を突っ込む。

 取り出すのは魔道具であるスプレー。

 吹き付けた本人にしか認識できない塗料で矢印を描き、進行方向を残しておく。

 目印を残したら立ち止まってはいられない。

 地面を蹴って通路を駆け抜けると、その先で数体のハイウルフを視認。

 白鞘からアイルを引き抜くと、閃いた剣閃が擦れ違い様にすべての命を奪う。

 足は止めない。

 魔石は魔法で回収しつつ、ダンジョンの最奥を目指した。

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