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Death is salvationー混沌のヴィシュヌ  作者: 雲類鷲 蜃霧
【序章】◆【大罪の誕生編】
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【第08話】◆【女神の祝福】

 粛清されるのは貴方たちなのに…………


 アトゥムは『大火炎魔法』をこちらに放つ、その炎は周囲を巻き込んで威力を強くしつつ私のところへ向かってくる。


 その攻撃に対し私は功能『粛正の鞭』で応戦する。


 私の『粛正の鞭』は自分の指を伸ばしたものであり効果は不死不老能力の強制解除・戦闘行為を行う相手の魔力を吸収し、その魔力を猛毒に変換して周囲にばら撒く能力・祝福という異能を持つ者の生命活動停止などである。


 最大十本使用することが可能。


 我が主ヴィシュヌ様には到底及ばないが……


 鞭が直撃したアトゥムは悲鳴をあげてその場に倒れ込んだ。


 しかし、彼の祝福『火事場の馬鹿力』によってなんとか立ち上がる。


 やはり最上級男神には効きにくいのか?


 まぁ完全に使いこなせているわけではないけど。


 その攻防戦を見てかゼウスは私が有利だと気付いたのか涙を流している。


「ここで終わらせるものか。祝福『炎の万本槍』」


 上空から炎で形成された数万の槍が落ちてくる。


 罪能『不可侵の陣』で攻撃を反射したが空間に刺さった槍は物凄い量の黒煙を上げる。


 物理攻撃しか反射できない不可侵の陣では黒煙の侵入を防ぐことが出来ずあっという間に視力を奪われた、しかも不可侵の陣が解除された。


「まだまだ行くぞ。祝福『黒煙内見える』、祝福『敵対者目潰し』」


 周囲を認知出来ない敵を放っておくはずがないアトゥムは自身が出した黒煙内に入り、私の目を潰しにきた。


 なぜか能力が使えない私は『大氷結魔法』を使用したが間に合わずアトゥムに目を潰された。


 アトゥムはおそらく祝福『光速の撤退』を使ったのだろう。


 つまり次に彼が打つ手は


「そのまま死に絶えろオーレリア! 『コールドマグマ』」


 大きな爆発音とともに私は足から凍っていく、しかも内部はマグマで形成されているアトゥムが生み出したオリジナル魔法。


 意識が保てない……


「やったか?」


 さっきの『コールドマグマ』で奴は動けない、あとはその氷を割れば


「混沌なる罪能『焦土戦術』」


 周囲の魔法攻撃が消滅する。


 罪能?まさか!?


「貴様! 堕神龍か!」


 忌々しいオーレリアが腕を増殖させこちらに向かってくる。見たところ腕の数は七本。ん?指が鞭のような形状をしている。


「えっ!? 今さら気付いたのですか?」


「粛正の鞭だと」


「えぇ、そうですよ。流石は我が夫であるヴィシュヌ様に散々やられてきた魚帝アトゥム様はわかりましたか? では、改めまして私は秩序・混沌の功罪適合者であり大罪堕神龍・混沌オーレリア・セイヴァー・キルダニア……いや、オーレリア・ソテイラ・パンドーラー」


 オーレリアはわざとらしく笑みを浮かべる。


「悪魔め!」


「私が悪魔のように思えるのはあなた方が私と敵対しているからですよ。宇宙空間に秩序を築こうとする健全な神々にとっては私は優しき救済者でしかない」


 その通りだと我ながら思う。


 宇宙空間を破壊しない生命体にとってはただの救済者なのだから。


「貴様は宇宙の支配者にでもなったつもりか! こんなことをして、恐怖で神々を押さえつけて何が宇宙空間の平和だ! これではジュリエットと変わらんし、銀河系を破壊していたほうがましだ! しかも我々を騙しよって万死に値する!」


 アトゥムは怒りのあまり自分が持っている槍を投げた。


 がそんなものはオーレリアにやすやすと掴まれる。


「なら、貴方達は何が欲しくてジュリエットさんと戦っていたのかな? 何が望みなんですか? 一つの銀河系を破壊してもなお、貴方達は槍を持ち続けた。それはなぜですか? 平和がほしかったはずですよ。神々は戦いの無い平和な世界を望んでいる。私はそれを実現させようとしているだけだよ。変革にはかならず犠牲が伴う。血の流れない革命などこの宇宙空間にはないんだよ。そう、これはそのための尊い犠牲なんだよ」


 そのためには、ジュリエットの封印も平和の為に必要な事だ。


 銀覇石羅族(ぎんはせきらぞく)の殲滅も……


「尊い犠牲だと? オーレリアこんなやり方は間違っている!」


 アトゥムは必死に訴えてくる。


「困りましたね。では、どうしたいのですか? どうするべきだと思うのですか? 宇宙空間を破壊するがん細胞としてのあなた方の意見を聞きましょう」


 そう言われ、アトゥムは言葉に詰まった。


 どうすればいいかなど考えてはいなかった。


 ただ、銀河を破壊すれば、ジュリエットを倒せば平和が訪れると信じていたのだ。


 それなのに。どうにもならない憤りが胸を満たす。


 なんで、この女はこの世に混沌をもたらすんだ。


「……だがっ! それでもこんなやり方は違う! 混沌堕神龍」


「はぁ、またそれですか? 違う。間違っている。こんなやり方は嫌だ駄目だと言うだけで、それではどうすればいいのか、自分の意見を持ち合わせていない。それでは駄々をこねる子供と同じですよ」


 オーレリアの口調は、言葉通り子供を窘めるそれだった。


「実の親に対して、子供扱い。それにこのやり方は絶対に違う! オーレリア、お前のやり方は神の心や感情を蔑ろにするやり方だ! 俺たちの望む平和はそんなものじゃない! 神と神が争う必要のない、差別のなく銀河を破壊する、ただ当たり前の幸せを手に入れることのできる世界が欲しかっただけだ! 神の根本である心を否定して、矜持も感情も奪い去って恐怖や力で支配する、そんなやり方は絶対に違う! それではジュリエットと同じになってしまう!」


 アトゥムが叫ぶように言った。


 ゼウスはその言葉にようやく我に返った。


 その通りだ、と思う。差別のない世界で、銀河を破壊し、自分であることを当たり前に誇れること。


 家族が笑い合って過ごせる世界。


 それが欲しかった。


 そういう宇宙のために何世紀も戦ってきたのだ。


 でも、あれ?どこかで違和感を覚えた。


 差別のない世界、当たり前の幸せ。


 その言葉が引っかかる。


 引っ掛かりの正体も解らない。


 でも、何か大切なことを見落としていないだろうか。


 しかし、今はそんなことを考えている場合でもないのは確かだ。

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