【第05話】◆【帝都の壊滅】
私の兄妹。
プレジャー様とブレッシング様による銀覇石羅族掃討作戦は滞りなく完遂した。
そして今、私は宮廷に仕えてくださっている方からの事後報告を聞いて、その内容を書類に纏めています。
それとほぼ同時期に皇帝陛下が獣人族の保護及び死神族の掃討を完遂されたという報告も入ってきました。
ふーん、陛下が担当された救済対象種族にしては珍しく命を落とした方が少ないですね。
珍しいこともあるものですね。
しかし、これから大変ですね。
なにせ、捕虜になった方が五億体もいらっしゃるようですから。
私は直ぐに捕虜の取り扱いについての上奏文を記して、それを報告筒に入れて訪れていた使者に陛下にお渡しするように命じた。
本国の行政に関しては心配はしていません。
私が直々に鍛え上げた敏腕執政官の方々がしっかり運営してくれていることでしょうし……。
銀覇石羅族の方々が領有されていた宇宙空間及び惑星の総称を神聖キルゴット銀河帝国ギャラクシー領と改称させました。
私が臨時統王として治めているギャラクシー領には帝国の素晴らしいインフラが次々に建設されていき戦火に見舞われたギャラクシー領には行政を司る帝国の白く美しい政庁がそびえ立っています。
つい先程まで戦争があったとは思えない程に計画的につくられた帝国の建造物があたりを埋め尽くしている。
他国の建造物が一瞬にして我が帝国の建造物に変わったのをみて興奮してしまうのは侵略国家の皇族故かそれとも自分の新しい性癖か判別するのは困難を極める。
帝国の皇族至上主義という考えのもと侵略した宇宙は皇族が統治していくものなのですが皇族(大罪堕神龍)たちは侵略と破壊にしか興味はなく統治のとの字も頭にない。
まぁ、怠惰と私は例外として
今回も名義はメランコリー様を総督とするが結局は私かスロウス様が管理することになるでしょうね。
私が救済されたらどうするのだろうか?
しばらくすると皇帝陛下の使者がやってきた上奏文の返答は捕虜やその他諸々の行政は君に任せるといういつも通りの内容だった。
配下に捕虜の護送を命じて戦争前の銀覇石羅族の文化や習慣について学習しておく。
これらの要素を取り入れて且つ帝国の規則や文化を混ぜなければならない。
知能を持つ生命体は今までふれてきた文化を否定されると反抗心を出す。
ならばその文化を残しつつそれに帝国文化や習慣を徐々に混ぜていく、結局のところそれが一番効率が良い。
彼らの文化を合わせつつ帝国の文化を取り入れる。
いつも通りその統治構想を纏め、配下の行政官に伝達した後、建造物を彼らの馴染んだ形のものにつくりかえた。
勿論、帝国製の部品を使用したものだが。
二日後、捕虜が護送されてきた数を数えたところ十八億もの捕虜がいた。
死神の文化も取り入れ、安定した戸籍がなかったので名前をつけて戸籍整備に取りかかる。
その後は全国民に仕事を与えつつ統治経過を見守った。
彼らの働きもありギャラクシーゴット王国領は帝都をこえる経済大国となった。
これも部下が統治マニュアルに従いつつ臨機応変に仕事をし、それを支えてくれた帝国民の働きも大きい。
治安も落ち着きだいぶ内政が整ってきたので本国の方へ帰る事になった。
超光速ワープを使用して帝都へ帰還すると
「おやおや、また随分と死体が散らかっていますね。よく見ると堕神龍の方々が救済されたようだ」
私は目の前の光景を見て、帝都の民衆が救済された事を理解した。
四肢を引き千切られて槍で子宮を突き刺された女神龍。
内蔵を抉り取られて性別や外見が分からない焼死体。
辺り一面に生首が転がり腐敗臭もしますね。
救済対象の物語ではよく見る光景です。
美しい、見事なものだ。
こんなにも残忍に救済済みの遺体を着飾る事ができるのは皇帝陛下でしょうね。
あの御方は死を救済ではなく、芸術ととらえておられる。
皇帝陛下、ついに爆発されたか…………。
芸術は爆発とも言うが、自国民を美しき死骸に変えるとは素晴らしい。
ですが、状況確認くらいは必要でしょうね。
運悪く救済を逃れた堕神龍がいるでしょうし……。
私は目の前の火を消火しながら生存者を探します。
綺麗に飾られた死体から腐敗臭がしたという事は死んでから暫く時間が経っているという事。
皇帝陛下が殺ったという確証を得る為にも、まずはクリスタル宮殿へと向かいましょう。
クリスタル宮殿に着くと敵対者探知に反応がありました。
まぁ、探知に引っかかったのは一体だけでしたが…………。
残っている柱に身を隠して、その存在の様子を見るとしましょう。
「ん? 誰ですか? そんな柱に隠れているのはぁぁ」
その生命体は髪は紺色、顔の色は青白く不気味な雰囲気を纏った存在であった。
今まで命を奪ってきた生命体よりは魔力を多く有しているようだ。
この状況をつくりあげた存在が我らの主君である皇帝陛下ではなかったので驚いてはいます。
「これは失礼しました。別に隠れていた訳ではないのですが、あなた、名前は?」
男性は薄気味悪い笑みを浮かべて吟味するかのような目つきで私を見たあと口を開いた。
「おぅ、これは、これは、自己紹介、遅れました、すみません、ごめんなさい。僕の名は、ハンニバル、英雄、シヴァリキル様、と共に、大罪堕神龍、をころして、その肉体、吸収して、あの方の使徒となった、男」
少しだけ安心出来ました。
最低限の会話は出来るようですね。
言葉も通じるようですし問題はないでしょう。
それにしても、貴重な戦力である大罪堕神龍も救済されたのか……。
少し困りましたね。
まぁ、目の前の男性が抑強扶弱という権能を使用できるのであれば問題はないか。
「名前を教えていただき、ありがとうございます。では私も名乗っておきましょう。私、混沌堕神龍」
そう名乗ろうとした瞬間、ハンニバル様が露骨に敵意を向けてきました。
「堕神龍、排除、我が罪能、と功能を、思い知れ」
ハンニバル様が空高く跳び上がり、抑強扶弱『覚醒の炎恐』を行使された。
その技の影響で周囲に炎属性の巨人が出現した。
巨人一体一体が十億もの腕で猛攻をしかけてくる。
ハンニバル様の性格か欲望が関係しているのかわからないがその巨人は鎧を装着している。
「あなたは、憤怒を呑み込んだのでしょう? こんな技は行使していなかった筈ですが」
これは、これはオリジナルの技でしょうね。
十体の鎧巨人が百億もの腕でマグマボール投げ飛ばしてきたり、マグマの鞭で攻撃してくる。
小手調べ程度にこちらもナイフを投げるが効果はなかった、まぁこれは当然だろうナイフが効くのなら帝国民ましてや堕神龍に勝てるはずがない。
ふと、彼の顔面を見ると右目に「大罪」、左目に「覚醒」の文字が刻まれている。
大罪・憤怒を捕食して得た、彼オリジナルの大罪なのでしょうか?
「もう終わりデスカーン。コレでトドメぇ」
そして、抑強扶弱『無限なる睡魔』と『覚醒の拡散』を放ってくる無限なる睡魔の影響で周囲の魔素や二酸化炭素などの気体に睡眠という呪いが付与された。
覚醒の拡散により脳みそがえぐられるように痛い。
しかも巨人は更に腕を増殖させマグマの鞭を無秩序に振るう。
攻撃を受けてみると睡眠系か。
大功は「睡眠」かな。
強い本家の実力を遥かに凌駕している。
元々の憤怒は戦闘系の能力が秀でていたわけではなかったのに……
しかし、相反する攻撃を一緒に使う様子を見るとまだ使い慣れていない事がわかる。
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