【第19話】◆【女王の奴隷】
私が今、討伐しようとしている魔獣は大きな樹木の様な存在。
いや、魔獣と言うよりは森の精霊――
龍と同化した魔獣と言ったほうがいいですね。
今まで遭遇したことのない魔獣ですね。
新世界で生まれた魔獣なのでしょうか?
しかし、ここまで幻想的で絵本に出てくるような美しい魔獣だと牙とかをコレクションとして収集してみたくなりますね。
そのまま救済してしまうのは勿体ないので、石化させておきましょうか。
私は赤い特殊なオーラを手のひらから発現させて、それを魔獣に向けて放ちました。
さて、美しく固められたでしょうか?
一瞬の事ですので魔獣は抵抗する様子も見せませんでしたが、大丈夫でしょう。
久しぶりに使用した為か、霧が発生する異常がみられましたが――――
私は手のひらサイズのブラックホールで霧を吸収しました。
魔獣の石化は成功したようです。
問題はその先にあります。
私は後ろで隠れている少女をおいて石化した魔獣にゆっくりと近づいていく。
綺麗な石となった魔獣を小規模なブラックホールで吸収し、体内に保管しておきました。
毒針の性能確認はまたの機会としましょうか。
「救済完了。魔獣は救われましたよ」
「殺したのに、まるで自分が救ったかのように言うのね。君は」
「死は救済という考え方もあるでしょう?」
少女はクスクスと笑いながら、使えるのか、使えないのかを見定めるように見つめてくる。
彼女の思考を読んでみましょうか?
読心機能を使って少女の思っていることを私の脳内に直接送られるようにしておきました。
『この女神は儀式に使えるのかしら? さっきの戦いでは吸魔戦術ではない ”何か” を使って魔獣を石にしていたけど。それが怖いわね、魔獣を石にする存在なんて強力で神聖な人間族にもいないわよ』
おや? この世界では下等生命体の最下層に属する人間の方々が強いのですね。
是非、戦ってみたい。
『よく容姿を見てみると奴隷身分にまで堕ちたクソ雑魚女神のようね。急に落ちてきたのは暗殺者か、奴隷商人に追われていたってところかしら?』
よく頭の回る少女ですね。
『取り敢えず、小手調べに自己紹介でもしておきましょうか。この女神がどういった性格なのかで今後の対応も変わってくるし……』
「初めまして、私はマリアンヌ。サファイア王国の女王よ」
『……さて、どんな反応を示す。常人でないのなら……』
「なんと!? 女王陛下でありましたか先程までのご無礼をお詫びいたします」
少女の思考を読んで適切な仮面をかぶる。
「別に構わないわ」
少女がみせた一瞬の隙をついて私の一部を体内に入れた。
彼女が統治する国家の情報を探るためです。
利用できる国家かどうか……
「…………」
『この女神、私の正体に驚いていて謝罪して以降、何も話さないわね。 私に話しかけてきたら不敬罪を捏ち上げて強引に奴隷にしようと思ったのに……』
「……ねぇ」
幼き女王陛下が語りかけてきましたが、ここは臣下がとる姿勢を正して頭を下げておく。
女王陛下の体内に侵入した私のアメーバを確認する。
その調査によるとサファイア王国は絶対王政の女系国家。
女王の血筋の方々に話す、又、緊急時とはいえ上奏を出す場合には死罪を覚悟して許可を申請して認めてもらう必要がある。とのことです。
最後の不敬罪のせいですぐに滅びそうな国家体制になっていますね。
これでは一人の君主がよほど優秀でないと国家として続かないでしょう。
『……女王に話しかけられても声を出さずに頭を下げて返礼する。礼儀を弁えているのね。本当に不気味な女神だわ、でも今は毒を以て毒を制すべきね』
「ねぇ、君に特別な権利を与えるからついて来なさい。私と話す権利も制限付きで与えるわ」
気分次第で、ですか……
女王陛下の心の声を常に拝聴しましょう。
「ありがたき幸せにございます。私は恥ずかしながら奴隷身分の者。しかし女王陛下からいただいた格別のご恩に報いることが出来るのであれば私は喜んでこの命を貴方様に捧げましょう」
ここは下手に出ておきましょう、もしかしたら途中離散した ”同族” に出会えるかもしれませんから。
「君は面白いわね。そうだ!! 君にはこれからやってもらいたい業務が数え切れない程あるし、それらの業務を完遂する事を絶対条件として、私に自由に発言する許可を出すわ。最上級の誉れよ喜びなさい」
女王陛下は胸を張り、私に自由な発言権を出した。
やってもらいたい業務を完遂する事を絶対条件に……
「委細承知いたしました。何なりとお申し付けください女王陛下」
私は女王陛下に膝を折り、臣下としての礼をとる。
「もちろんよ。君は奴隷として私に仕えてもらうわ。取り敢えず、君にはこれからサファイア王国へ来てもらうから、そこで君の業務についての説明を私の騎士がするわ!」
若きサファイア王国のマリアンヌ女王陛下は胸を張りそう言った。
「ところで君、名前はあるの?」
「私にはヴィシュヌ・ソテイラ・ブラッドという名があります」
「そうなんだ」




