【第01話】◆【女神の悲劇】
女神様に命令された仕事をやり遂げたアダム。
しかし、彼はほかの動物にはみんな仲間がいて助け合って生きているのに、自分だけ仲間がいないことを寂しく感じました。
ある日、そんな様子を見ていた女神様はアダムに言われた。
「人癌神が一人で居るのは良くない事だ。君の為にも、相応しい助け手を造ってやろう」
そして女神様はアダムを深く眠らせ、眠った時に、その睾丸を一つ取って、それをアダムとは正反対の形に造られた。
数日後、女神様はそれをアダムの所へ連れてこられた、その時アダムはこう言った。
「おお、これこそ、俺の求めていた肉塊、男という名称の俺から取られたものだから女と名づけよう。そしてお前の名前はエヴァだ」
アダムとエヴァはこうして無事に生まれ、苦労も憂いもない「夢の楽園」という楽園で何不自由なく暮らしていました。
そこは、綺麗な水と美しくてしかもおいしい実のなる木々がたくさんあった。
しかし、女神様は彼らに一つルールを課せられた。
彼らに課せられたルールはたった一つ。
「この園の中央にある箱を開いてはいけない。開いたら死んでしまうよ」
だけでした。
二人は女神様と約束して、その楽園で平和に暮らしていきます。
一方で、人癌神よりも遥かに優れている十二体の救済鬼神龍及び秩序の大蛇、パンドーラの箱は女神様に仕える立場。
そのため、女神様の子である人癌神にも仕える立場になりました。
もちろん、女神様の彼らへの愛は変わりません。
しかし、女神様は救済鬼神龍よりも、我が子として創造した人癌神をより愛するようになったのです。
この状況に寡欲鬼神龍グリードは不満を抱きました。
これまで、女神様に最も愛されていたのは、救済鬼神龍であったのに、人癌神を創造されてからは、女神様は大功堕神龍よりも後に創造された人癌神をより愛するようになったからです。
さらには、大功堕神龍は人癌神の僕となり、見かけ上、降格されたような立場になったからです。
なぜ、天地創造の労苦を共にした自分たちを差し置いて、後から創造された人癌神を愛するようになったのか?
女神様は自分たちを天地創造で働かせるためだけに創り出されたのか?
愛してないのか?
道具扱いか? グリードはヴィシュヌと関わってから日に日に女神様への疑心を強めていきました。
他の救済鬼神龍たちも人癌神に嫉妬し、殺意を抱き。
女神様に対して、怒りや妬み、憎しみを抱き人癌神を恨むようになりました。
ヴィシュヌの助言もあり、女神様に対して見切りをつけたグリードは反乱を企てます。
グリードは女神の座を奪い、人癌神を自分に従わせ、神に代わって、彼等の親になろうと企てたのです。
女神様もそんな彼らには愛想を尽かし、パンドーラの箱に彼らを消すように命じました。
しかし、パンドーラの箱は女神様の命令に従わず、信頼できる秩序の大蛇ヴィシュヌを呼び出して人癌神に自分を開けさせるように命じました。
パンドーラの箱も女神様に失望し、独立して女神以外の家族と平和に暮らしていこうと思ったのです。
一方、そんな計画がたてられているとはつゆ知らずアダムとエヴァは平和に暮らしていました。
楽園の中にいる生物たちとふれあい無邪気に遊んでいて、女神も満足でした。
楽園の中に侵入してきた破壊者に気付くこともなく。
ある日、女の性を持つエヴァが女神様に開けてはならないと言われた箱を見ていると秩序の大蛇が声をかけてきました。
「初めまして、お嬢様」
低く、しかしよく透き通った声で語りかけてくる存在に気付いたエヴァは声がした方向に顔を向けます。
彼女は驚きました。
声の感じからして男性だと思っていた存在が自分と同じ女性だったからです。
「あ、貴女はだぁれ?」
エヴァは美しく銀髪と美しい紫水晶の瞳を有した女性に目を奪われてしまいました。
「わたくし秩序鬼神龍ヴィシュヌ・ソテイラ・パンドーラーと申します。秩序の大蛇とも呼ばれており、あなた方、人癌神の守護者でもあり、先住民・魔獣にも幸いをもたらす存在です」
「先住民・魔獣も幸せにしてあげるのね。優しい人」
エヴァは黄色い瞳でヴィシュヌを見ている。
そんな彼女を見て、ヴィシュヌは口を開く。
「ところで、貴方はなぜ? あの箱を眺めているのですか?」
その質問にエヴァは答えます。
「女神様に開けてはならないと禁じられているのだけど、綺麗だから気になって」
「なぜ? 開けてはならないのでしょうか?」
「死んでしまうらしいわ」
そう答えた彼女にヴィシュヌはこう言いました。
「死なないとしたら……」
「開けてみたいかも……」
「そうですか、実はわたくし、あなたが箱を開けても死なない方法を知っていますよ」
「……そうなの!?」
「ええ、女神様から命令という形で許可を受けてその存在と人癌神が契約を結び開ければ、死なずに中身を見ることができます。そして今回、わたくしは女神様より命令を受けて、貴方のもとへ馳せ参じました」
「……本当!? でも、命令? お母様が? 内容は何ですか」
「命令内容はあの箱を開きなさいというものでした。今、貴方の目の前にいるわたくしと契約すれば死ぬことはないからと……」
エヴァは今まで母である女神様が誰かを仲介して命令をしていなかったので、ヴィシュヌの言葉に疑問をいだきます。
今日初めて会った相手と自分を創り出した母であると女神様。
女神様の言いつけを守った方が良いと考えたのです。
「お母様は今まで誰かに命令を預けたことは無かったわ。貴方の言葉は本当なの?」
ヴィシュヌはエヴァが気づかないように笑みを浮かべ、優しい声色で答えます。
「わたくしはあなた様の下僕であり、創造主である女神様にあなた様に嘘をつくことが出来ないように設計されています」
機械的に答えるヴィシュヌ。
彼の態度は彼女にとって好印象だったのでしょうか?
無垢で好奇心旺盛な子供は無垢を演じている悪い大蛇に簡単に騙されてしまいました。
可哀想に
「そうなの?」
「ええ、わたくしや他の救済鬼神龍も貴方の味方ですよ」
「あれは? 何が入っているの?」
「あれを開けると女神様のように善悪を知るものになれるのですよ。そして、あなた様は自由になれるのです。他に入っているものはわかりません、まぁ、開けてからのお楽しみということで」
「楽しみだなぁ〜」
「……ええ、そうですね」
エヴァは秩序の大蛇ヴィシュヌの誘惑に負けて、禁じられたパンドーラーの箱を開いてしまいます。
ヴィシュヌは予め人間の雄イマジンも連れてきていたので、その結果二人は適合していない大功の十字架を身体に刻まれてしまいます。
ヴィシュヌには秩序と混沌の十字架。
アダムには創造と模倣の十字架。
エヴァには再生と破壊の十字架。
二人は神聖な秘部にその十字架を刻まれた為、恥ずかしくなり、いちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆いました。
そして、二人を見た女神は命令を遵守できなかった二人に怒りの感情を抱き、二人を夢の楽園から追放しました。
女神様は夢の楽園に銀破石羅族を置いて、 ”設定の秘宝” を守らされた。
腰で二人は罪を隠していました。
ヴィシュヌはこれを狙っていたのです。
人間にとって、生死を超えるほどの強い魅力があるもの―――
それは、愛です。
愛という行為を女神様が認める前に二人を性行為させてしまったのです。
お得意の洗脳で―――
「ふふふ、本当に生殖能力がある下賤な生物は欲望によって身を滅ぼすのが好きですね」
秩序の大蛇が生み出した大罪がこの物語を混沌に陥れ、秩序を破壊してしまいました。
ヴィシュヌが世界を混沌に陥れた頃。
寡欲鬼神龍グリードは人間を自分に従わせ、神に代わって人間の主になる計画を企てます。
女神様から十字架を奪い返すという偉業を成した解禁堕神龍、混沌堕神龍と合流して、十字架を受け取り他の大功堕神龍に配って女神様へ対抗する手駒を増やしていきます。
グリードは忌まわしき人癌神の親になるために彼らの血統を奪おうとします。
血統は性関係によって成立し、繋がっていきます。
グリードはヴィシュヌと裏で繋がっていて、女神様から追放され、傷心状態にあるエヴァの貞操を全鬼神龍に強引に奪わせました。
これによって鬼神龍はエヴァの能力、つまり物語を破壊する能力を得た。
これが後の人間の堕落の本質となるのです。圧倒的に強い七人の軍神が生まれる事によって―――
こうしてヴィシュヌを筆頭とした救済鬼神龍改め大罪堕神龍たちは女神様と敵対することになってしまいました。
大罪堕神龍たちがエヴァと関係を持つときに、抱いていた心情は、色欲、嫉妬、憤怒、憎悪などでした。
その汚れた心情が人類の母エヴァに注がれてしまったのです。
彼らは偽りの父として物語の登場人物を殺し続けます。
そして、女神様は物語を支配し、全生命体に害を与える汚物として彼らに語り告げられてしまいます。
この世界を創り、愛した一人の母は物語神龍鬼という悪魔にされてしまったのです。
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