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Death is salvationー混沌のヴィシュヌ  作者: 雲類鷲 蜃霧
【第一章】◆【サファイア王国編】
19/21

【第18話】◆【メトシェラ】

 帝国暦九〇五年。


 死せる魂によって汚された惑星メトシェラ。


 この惑星はヴィシュヌという大罪堕神龍たいざいだしんりゅうが引き起こしたビッグバンによって形成されたものである。


 しかし、今は創造帝という存在によって創られた惑星と語り告げられている。


 この惑星に住んでいる種族にとってはよく分からない存在が創ったというよりは巨大帝国の君主が創ったという方が都合の良い解釈であったのだろう。


 この惑星に住む人類は神を信仰の対象としてみない文化がある。


 帝国では女神を奴隷として売りさばいている罪深い慣習もある。


 この背景には惑星領有戦争というものが深く絡んでいた。


 当時の帝国には魔力に秀でた神をも凌駕する異世界人が多く住んでいた。


 神々は魔物を討伐させる目的で彼らを惑星メトシェラに送ったらしいが、彼らが使命を果たすことはなかった。


 彼らに期待していた神々は怒った。


 自分たちの能力を捧げた者達が魔族討伐を果たさないのだから。


 それと同時に神々は気付いた。


 これでは人間の方が立場が上のようではないかと


 これではいずれ、下等生物と見下している存在に滅ぼされてしまうかもしれない。


 そう思った神々の行動は素早かった。


 全神で軍団をつくり、異世界人が建国したと言っても過言ではない帝国に宣戦布告をした。


 異世界人が神々を恐れていた為か戦争の最初は神々が帝国の砦を陥落させ続ける圧勝であった。


 しかし、神々を奴隷身分にまで堕とす英雄がいた。


 それは没個性的な異世界人であった。


 そのせいか神々は彼のことは見向きもしなかった。


 それが仇となったのだ、その英雄は一夜にして神々から奪われた砦を奪い返した。


 担当女神が彼に与えた能力はかなり高い幸運値だけであったが、彼は過酷な異世界を生き抜いていく中で新たな能力を獲得したのだ。


 強欲の権能『略奪の声』


 それが彼に発現した新たな能力。


 声を出すと相手の能力を奪う事ができる強力な力。


 この能力で神々は一気に追い込まれた。


 すべての神は彼に能力を奪われ、男神は嬲り殺しにあい。


 力を失くした女神は異世界人に女性としての尊厳を奪われた。


 その後、美しい容姿をしている女神を売りさばき奴隷化する慣習がうまれたのだ。


 恐ろしい慣習ではあるが弱者となってしまった女神には反抗する権利はないのだ。


 そんな事もあり、今現在のメトシェラの大陸は大きく三つに分けられた。



 一つは神々を滅ぼし、強大な軍事帝国を築いた人類が統べる聖大陸。


 二つ目は神々の同盟者である長耳族エルフが支配する大陸は龍大陸。


 三つ目は龍大陸と聖大陸に隣接し、神々に忌み嫌われていた魔族が統べる魔大陸。



 その大陸の一つ、魔大陸の辺境にて一人の幼い王女が先代女王に自身の近況を報告し、自分の無力を思い知り、涙を流しながら祈りを捧げていた。


「天界に昇られたお母様、不甲斐ない私にどうかお力添えを」


 王女は魔大陸の辺境に建国されたサファイア王国の西方に聳えるポルシェンガル山の頂上に建てられた、エルフィン集団墓地で自分の母が眠っている御墓の前に座り、これからきたる女王としての責務を果たす為に祈っていた。


 魔大陸では、王族は十八歳になると王位を継承できる。


 しかし、この少女はまだ十八歳にも満たない容姿である。


 年齢も経験も半人前。


 なぜそんな少女が王位を継承することになったかというと、先々代女王レトロレースが血樹木(血を出す木)になり動けなくなってしまい、陛下の実の娘であり第一位王位継承者であるフラクタル王女殿下が王位を継承した事が関係した。


 彼女の即位後百年間は適切な統治が行われていたのでサファイア王国は発展していた。


 しかし、レトロレース女王時代からサファイア王国を襲っていた疫病の進行が加速していったのだ。


 王国民の七割が亡くなり、職を失い、賊に落ちたりして疫病は国政にも多大なるダーメジを与えた。


 そして、追い打ちをかけるが如くフラクタル女王陛下の崩御。


 民の数が圧倒的に減り、盗賊からの奇襲攻撃、疫病の進行、崩壊寸前の国政もフラクタル女王の手腕で辛うじて保たれていたが女王の崩御により更に滅茶苦茶になってしまった。


 そんな中、フラクタル女王の娘であり第一位王位継承者である。


 マリアンヌ・ヴォル・ピルグリム・サファイア王女殿下が即位される事になった。


 しかし、民のほとんどが若く、経験も少ない王に絶望的な状況の王国を立て直せると期待をもつはずもなく、血樹木になるくらいならと貴族階級の者は他国へ亡命していき。


 残っていた民もほとんどが盗賊に身を落とした。


 今、国内に残っているのは、国王の一族に対しての忠誠心の高い者だけであり。


 この先の未来に不安しかない女王は、母に会いに行くためポルシェンガル山の頂上の集団墓地にいる母に会いに来たのだ。


「あぁ〜もう! 何で御母様、こんなにも、はやく逝ってしまったのですか! 私はまだこんなに、頼り無いのに、弱いのに、うっうえ〜んもうや〜だ〜うっう〜え〜ん」


 少女は広い集団墓地の真ん中で今は亡き母を思い、泣き叫んだ。


『グ〜ウッガァ〜アガァ〜〜〜〜〜ア〜オゥ〜』


 そんな時少女の泣き声に目を覚ました魔獣が叫んだ。


「魔獣!? な、何でこんな所に」


 少女は驚き尻もちをついてしまう。


 その刹那、女神が少女と魔獣に挟まれた位置に落ちてきた。


「ひっぎゃ〜、あぁ今度は何なの? ん? 女神て、どうしようかなり深い傷じゃない、回復してあげたいけど、女神と関わるとメルーに怒られちゃう。ん、あ、そうだいい考え思いついたこの女神を奴隷にすれば関わってもいいわね、丁度儀式の為の奴隷を探していたとこだし!」


 サファイア王国で猛威を振るっている疫病を治めるには女王が奴隷契約の儀式を開いて。


 契約を結んだ奴隷と共に疫病神を討ち滅ぼさないといけない。


 疫病とは女のみが血樹木(血を出す木)に変貌してしまう病気。


「おや? 困りましたね、ここはどこでしょうか。確かわたくしはこの少女と契約をして、その後……あれ?」


 少女と契約を結んだ後からの記憶が曖昧ですね。


 あの御方に記憶を操作されたのでしょうか?


 宇宙羅針盤を確認すると、どうやらここは我らの祖国があった場所。


 しかし、ここまで緑豊かな場所でしたっけ? 時間軸の違いでしょうか?


「ねぇ君、ちょっといいかな? 君の傷を回復してあげるからこの魔獣倒してよ!」


 考え事をしていると一人の少女が話しかけてきました。


 敵対者探知能力に反応は出ていましたので、どうしたものかと思っていましたが


 この様子だと私に害はないでしょう。


 しかし、目の前の少女はこのか弱い魔獣を倒せないのでしょうか?


 まぁ、毒針の性能テストも兼ねて救済するとしましょうか。


「承知致しました。その依頼を受諾して魔獣を討伐させていただきます。危険でしょうから貴方はわたくしの後ろでご自分の身を守っていてください」


 立ち上がって臨戦態勢に入ると少女は杖を持ってわたくしに話してきました。


「ええ、良いわよ。 回復はしなくていいの?」


「ご安心ください。わたくしには女神様からいただいた祝福『自由治癒』がありますので」


 少女は驚いた表情で私の顔をみた。


「神から、そう祝福持ちなのね」


 少女の表情に疑問を抱いてしまいましたが、たいした問題でもないでしょう。


「ええ、そうですよ」


 まぁ、この戦いは毒針の性能テスト。


 なので軽く吸魔戦術きゅうませんじゅつで死滅させましょうか。

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