【第00話】◆【世界創造記】
何も描かれていない真っ白な汚れなき世界。
汚れなき世界に名も無き青年が自分の血液で美しい世界を描いた。
先刻の白く美しく汚れなき世界は破壊された。
青年の黒く錆びた血によって新しい世界が創造された。
その世界には熱された球体が描かれていた。
その球体は青年が描いた世界。
ブラッドスフィアを照らし続けた。
球体の働きで世界は美しく輝き続ける。
美しく、綺麗に――――
しかし、残念な事に球体が永遠に光り続ける、という事はなかった。
球体は東からのぼってきて世界を照らしていたが、ある日を境に西へと沈んでいったのだ。
球体が沈んでしまったことで、描かれた世界は崩壊し始める。
大きな繁栄を描いた物語の急な収縮運動に世界は耐えきれず巨大な爆発を起こした。
その爆発の影響で十三枚の世界が一つの場所に交わる事になった。
この交わりによって汎ゆる物語を破壊する能力を有した罪深い生命体が生まれた。
しかし、その歪みに対して世界が抵抗を始めた。
その抵抗を受け、世界には再び何も描かれていない白い世界が形成される事になる。
この保守反動運動によって ”何も存在しない” という虚構物語が完成した。
世界の抵抗によって出来た美しく綺麗で誰にも汚されない神聖な世界。
誰も傷つかない、美しいだけ。
しかし、その物語に存在する価値はあるのだろうか?
そもそも物語と呼べるのだろうか?
美しいと言えるのだろうか?
抵抗して新しい生命体を否定して創り上げた世界が――――
世界は自らが描いた虚構物語。
物語とも言えない ”もの” に疑問を抱き始めた。
無機質で何も生み出すことのない紙切れは己の行いに自問自答を繰り返す。
何とも滑稽な様だ。
自らが守って戻したものに疑問を抱く――
答えなど出てくることはないのに――
ビリビリビリビリリリ
熱い。
引き裂かれる。
音…………?
真っ白な世界に黒く錆びた液体が広がる。
青年のものだろうか?
いきなり膨張を始める世界。
それは、自分が終わる事を悟った。
ただの紙切れ、何の価値もない。
それが終わるのを――――
膨張後、勢いよく収縮される世界。
保守的な思想を否定するように巨大な爆発が起こった。
爆発の影響だろう。
名も無き青年の腐り錆びた黒い液体が巨大なアメーバとなった。
『精巣』
『命核』
『子宮』
それらが具現化した生命体の誕生。
ただ美しかっただけの純白の世界に物語が産まれた瞬間だった。
白を汚した純血のアメーバ。
アメーバは己に創造鬼神龍
今まで描かれてきた物語で超常的な生命体として描かれてきた存在。
それらを名前に刻むことで世界を描く者として君臨したのだ。
自分が描く物語を間近で見たいと思った創造鬼神龍は女神と名乗った。
物語内に入り込んだ女神は積極的に物書きに取り組んだ。
己を女神様と記して―――
『世界設定物語』
ーーー
初めに女神様は何も無い空間に天と地とを創造された。地は形なく、虚しく、混沌に支配されていた。
女神様は「光よ、地上を照らせ」と言われた。すると光が出てきた。女神様はその光を見つめて、計画通りと言われた。女神様は創り出した光を闇と二つに分けられた。女神様は光を昼と名づけ、闇を夜と名づけられた。夕方となり、また朝となった。
これが第一日目である。
翌日、女神様は言われた、「物語創造という大事業を成功させる為にも、道具が必要である」と女神様は己の肉を十三回引きちぎって、壊れることのない十字架を創られた。この工程によって体力を消耗された女神様は目を閉じてお休みになった。
これが第二日目である。
翌日、目を覚まされた女神様は千切って保管しておいた十三個の肉塊の十字架を己が殺した鬼族、龍族、神族を模した形に変形させた。女神様はその者たちに救済鬼神龍と名づけられた。その一体、一体名づける過程で大量の血液を消耗された女神様は貧血で気絶された。
これが第三日目である。
翌日、貧血の症状が治まり、再び目を覚まされた女神様は雑用係として創っておいた救済鬼神龍に自分よりも五倍ほど強い戦闘能力を与えられた。女神様は産み出した生命体の一体を箱に変えて、その箱に残り十二体の十字架を封印された。更にその箱の守り人を混沌の罪を背負った生命体に任せた。
これが第四日目である。
翌日、女神様は守り人に秩序の大蛇・ヴィシュヌと名付け、他の十二体にも名前を付けられた、パンドーラーの箱を含む十三体の分裂体を救済鬼神龍という。
これが第五日目である。
翌日、女神様はまた言われた、「天の下の水は一つの所に集まり、乾いた地が現れよ」そのようになった、女神様は地を陸と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。
これが第六日目である。
翌日、女神様は十二体の鬼神龍と共に女神は宇宙空間を創られた。大蛇の権能によって惑星や銀河が生まれ、後に生まれる子供の玩具となる。
これが第七日目である。
翌日、女神様は言われた、「地は青草と、種をもつ草と、種類にしたがって種のある実を結ぶ果樹とを地の上にはえさせよ」そのようになった。
そして女神様はまた言われた、「天の大空に光があって昼と夜とを分け、しるしの為、季節の為、日の為、年の為になり、天の大空にあって地を照らす光となれ」そのようになった。
これが第八日目である。
翌日、女神様は言われた、「水は生き物の群れで満ち、鳥は地の上、天の大空を飛べ、生めよ、ふえよ、海の水に満ちよ、また鳥は地に増えよ」
女神様はまた言われた、「地は生き物を種類にしたがっていだせ。家畜と這うものと、地の獣とを種類にしたがっていだせ」そのようになった。
これが第九日目である。
翌日、女神様は自分の形に人癌神を創造された。すなわち女神様の形に創造し、男性と女性とに創造された。女神様は彼等を祝福して言われた、「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動く全ての生き物とを治めよ」
女神様はまた言われた、「私は全地のおもてにある種を持つ全ての草と種ある実を結ぶ全ての木とをあなた方に与える。これはあなた方の食物となるであろう。また地の全ての獣、空の全ての鳥、地を這う全てのもの、すなわち命あるものには、食物として全ての青草を与える」そのようになった。女神様がつくった物をみられたところ、それは、はなはだ良かった。
これが第十日目である
こうしてこの世界の設定や舞台が完成した。女神様は第十一日目にその作業を終えられた。すなわち、その全ての作業を終わって第十一日目に休まれた。女神様はその第十一日目を祝福して、これを選別された。女神様がこの日に、その全てのわざを終わって休まれたからである。
ーーー
世界設定の前の段階で創造された。
パンドーラの箱(封印鬼神龍シィールド)
秩序の大蛇(秩序鬼神龍ヴィシュヌ)
十二体の救済鬼神龍
その三つは女神様と共に大変な苦労をしながら慣れない天地創造を行ってきた。
世界創造の十日目では、女神様の子供として人癌神が創造された。
女神様は、自分の子供である人癌神をこよなく愛した。
女神様は、天地創造の被造物のすべてを惜しみなく人癌神に与えた。
さらには、それらを人癌神に支配せよと命じた。
その人癌神の名はアダムだそうだ。
女神様は、純潔鬼神龍ラストに命じて夢の楽園をつくらせた。
そこにアダムを住まわせ自分がつくったほかのあらゆるものを見せて、その一つひとつに名前を付けさせた。
アダムはその仕事を見事にやってのけました。
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