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家出3

 領地を出てすぐに護衛の1人は亡くなり、1人は重症となってしまった。

 そのため一旦領地の中へ戻ることとなった。


 自分自身死にそうになったことは父上のおかげで何度もあった。

 しかし、実際に死人を見るのは前世も含めてこれが初めてだった。

 初めての死を目の当たりにし、恐怖が湧いた。

 しかしそれを見ていたマーチルが手を握ってくれた。


 戻ってすぐ、代わりの護衛がついた。

 今度は戦士の男2人、魔法使いの男1人だ。

 人が死んでいるというのに対応が早い。

 これが異世界……


 ちなみにこの様な事故は十数年ぶりだそうだ。

 この領地周辺は比較的弱い魔物に溢れており、子供のころに実践経験を積む目的としてやってくる人もいるくらいらしい。


 現在、日は落ちかけている。

 夜は魔物が活発になる時間のため、明日出発することが決まった。


「マーチル、ごめん、今日マーチルの家に泊まらせてくれないか?」


「え…もちろん!喜んで。」


 家出して早々屋敷に戻るなんてカッコ悪いことが出来ないのもあるが、今日は1人ではいたくなかったのだ。


ーーー


 マーチルの家はベットが一つしかない。

 両親がいた頃はこのベットにぎゅうぎゅうになりながら寝ていたという。

 つまり今日は俺とぎゅうぎゅうになって寝るということであり、つまりはそういうことである。


「最初に言っとくけど、俺寝相悪いから床に寝た方がいい?」


 これはポーズである。

 初めから一緒に寝るつもりでいた場合、がっつきすぎてキモイと思われる可能性がある。

 そして、あらかじめ寝相が悪いということをさりげなくアピールをする。

 これをすることによって、ちょっといかがわしいところに触れても寝相のせいにできるのだ。


「駄目、流石に床に寝させることはできません。それとも私と一緒に寝るの嫌?」


「いや、全然そんなんじゃないよ。マーチルがいいなら一緒に寝させていただきます。」


 はい、作戦通り。

 これにより俺は相手の同意を得てベットでいちゃこらできるということだ。

 さっそくベットへとライドオン。


 発光石の光も消え、暗闇に包まれた。

 可愛らしい寝息が聞こえる。

 布団の中は2人の体温が融合し暖かい。


 30分程過ぎただろうか。

 よし、それでは作戦お胸タッチ大作戦を決行する。

 まずは手に触れる。

 よし、反応はない、第一フェーズクリア。

 次にお腹に触れる。

 またもや反応がない、第二フェーズクリア。

 それでは最終フェーズへと移行する。

 そのまま胸の方へと手を滑らせる。

 そうして慎ましいながら年相応程度の双丘にたどり着いた。

 これが、これが噂に聞くおっぱい。

 想像以上に柔らかい。


「んんっ」


 やばい、調子に乗り過ぎた。

 冷静に考えて俺は何をしているんだ。

 これから共に過ごしていくというのに、こんなことをしてバレたりしたら気まずいどころの話ではない。

 あんなことがあった日に歳下の胸に発情して、自分ながらに恥ずかしい。

 よし、抜いてこよう。


 そう決心しベットから出てトイレへ向かった。


 蛇足だか、この世界のトイレ事情はよくある異世界事情とは違い、しっかりしている。

 ちゃんと水洗式だ。

 しかし紙は少し高く、一般庶民にはあまり普及してはいない。

 代わりに葉っぱで尻を拭く。


 スッキリし、俺はベットへと戻る。


 朝がやってきた。

 目が覚めると既にマーチルはベットにはいなかった。


「レイク、おはよう!」


「は〜あ、おはよー、マーチル」


「もう少し待って、あとちょっとで出来上がるから。」


 なんてできる子なんだ、早起きして朝ごはんを作っているなんて……とてもいい匂いがする。


「おまちどうさま。」


 運ばれてきたのはサンドウィッチだった。

 スクランブルエッグと野菜を挟んだシンプルなものと、ハムとチーズと野菜を挟んだこれまたシンプルなやつだ。


「お味はどう?」


「満点!」


「よかった〜羊のミルクもあるよ!」


「お、ありがとう。」


 見た目を裏切らない美味しさだった。

 屋敷では美味しいがマナーの厳しい料理しかなく、こう、がっつけて美味しいものを食べれなかった。

 その反動か、より美味しさを引き立たせた。


「そういえば、この羊たちは大丈夫なの?」


「大丈夫。2日後におばあちゃんが来る手筈になってるから。」


「そうなんだよかった。俺もこの子たちにはもう愛着を持ってるからさ、少し心配だった。」


「よし、じゃあ少し早いけど向かうか!」


ーーー


 馬車乗り場に着くと、既に人が集まっていた。


「皆さん早いですね。あれ? 出発まであと1時間ですよね?」


「はい、ですので今は情報共有をしております。」


 よく見ると、昨日の僧侶もいた。

 なるほど、責任持って情報共有をしていて素晴らしい。


「まだまだ時間はありますので、周辺でも散策されてはどうかな?。」


「そうさせていただきます。マーチル案内して!」


 そういえば仕事できたことはあれど、しっかり観光をしたことはなかった。

 あと少しで離れゆく故郷を巡るのもこれが最後になるかもしれない。

 そう思い、提案に乗った。


 アレンシュタット領は四つの村から構成されている。

 北側にブリタミー村、東側にルダイシー村、南側にキャメルー村、西側にエリアリー村。

 それぞれ村長の名前を取っているらしい。

 しかもその村長は四つ子というのでびっくりだ。

 正直誰がブリタミーさんなのかルダイシーさんなのかわからない。


「あ、ブリタミー様!おはようございます!」


 マーチルは村長の姿を見つけると挨拶をした。


「おはよう、昨日は災難じゃったな。」


 とてもゆっくりとした口調で優しい雰囲気のおばあさんだ。


「レイク様や、話は聞いておる。いつでも戻ってきていいんじゃぞ。怪我には気をつけて。更にいい男になって戻ってくることを願っておる。」


「はい、ありがとうございます。最後にこの村を回ろうと思います。では。」


「そうか、では最後に嘆きの湖へ向かうといい。」


 なんだその物騒な名前の湖は。


「ブリタミー様、それは……」


「マーチルや、案内してやりなさい。」


 マーチル、何その反応、余計気になるじゃん。


ーーー


 マーチルに連れられ嘆きの湖とやらについた。

 そこには多くの墓が並んでおり、とても陰鬱な空気が流れている。


 そしてそこには1人の人影があった。


「父上……」


 そこにはアレンシュタット領主、ガリウス・アレフ・アレンシュタットの姿があった。


「なんだお前、まだ出てっていなかったのか。」


「はい、いろいろあって。父上はここで何を?」


 いつもはびびって話すことはできないが、今の父上はなぜか話しやすかった。


「あぁなんだ、いろいろだ。」


 父上は顔を逸らしつつそう誤魔化した。

 こんな朝早くこんなところに来てるなんて目的は一つしかない。

 父上はしっかりと領主としての責務を全うしていたのだ。

 それを俺は知らずとはいえ父上のことを侮辱していたのだ。それもあってかなり気まずい。

 父上は墓参りを終えたのか帰途につこうとする。

 言わなくては。喧嘩別れはしてはいけないと前世の母親から言われていた。


「父上、俺、立派な勇者になってアレンシュタットの名を取り戻せる様努力します。」


 父上からの返答はなかった。

 しかしこれでいい。

 これが俺と父上との関係だ。


 俺は心残りを失くすことができ、馬車乗り場へと戻ろうと父上に背を向けた。


「レイク、体に気をつけろよ。」


 背後からいつもの怒声ではなく、愛情のおる父親の声が聞こえた。


 最後の最後にツンデレですか?父上。




 


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