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家出2

 『家出』

 みんなも人生で一度ぐらいしようって考えたことはあるのではないだろうか。

 でも考えるだけで実行する人は少数なのではないだろうか。

 家にいるのが嫌になり、どこでもいいから外に出たい。

 親に勘当され出て行けと言われた。

 理由はいくつかある。

 

 前置きは置いといて、かくゆう俺レイク・アレンシュタットもとい、ただのレイクも現在家出中だ。


 どうしてただのレイクだって?

 それは父上から今後アレンシュタットを名乗るなと言われたからもあるが、自分がアレンシュタットに相応しい男になるまで名乗らないと決めたからだ。

 我ながらに臭い理由だが、ファンタジー世界で貴族を名乗ったら(ろく)なことにならないと相場が決まっている。


 家出して何をするのかだって?

 とりあえずは勇者になろうと思っている。

 この世界には魔王がいて、その魔王を討伐するために勇者がいる。

 冒険者の多くはその勇者になることを夢見て日々頑張っているのがこの世界の常識だ。


 俺は勇者になるポテンシャルがあるらしい。

 だったらなろうじゃないか。

 ようは体の使い方次第だろ?

 あと一年経てばこの体にも慣れ、使えるようになるだろう。

 勇者になるには、近隣の王国で年に一度行われる勇者選考会で優勝しなければならない。

 王国によって勇者になる方法は異なるが、どれも強さが求められることには変わりない。


 勇者になると多くのメリットがある。


・宿屋無料

・交通費無料

・全施設の侵入権利

・引退しても領地をもらえる

・etc…


 そして何よりモテる!

 もともとこの顔ならモテること間違いなしだが、勇者になればどこぞのお姫様と結婚なんてこともあり得るだろう。


 その為に俺はとりあえず近隣の王国ランス王国に向かおうと思う。


 近隣と言っても、100キロ近く離れているので、馬車で向かおうと思う。

 馬車で約半日かかるみたいだ。


 そして今現在馬車乗り場に着いたのだが、そこで懐かしい顔を見かけた。


「マーチル……お久しぶり、どうしてここへ?」


「レイク様……お久しぶりです。えーと、たまたまです。レイク様こそ何用でこちらへ?」


「あはは、実は家を追い出されちゃって。マーチルもこれからは俺のことタメでいいよ。」


「そういうわけにはいけません。レイク様はレイク様ですから。」


「俺はランス王国へ向かうんだけど、マーチルはどこへ?」


「えーと、はい、レイク様、私もランス王国へ連れてってはもらえないでしょうか?」


 連れて行ってとは何やら事情があるようだ。

 しかし、世はまさに人魔対戦中。

 領地の外は魔物が住み、おかげで治安のいい場所は少ないと聞く。

 マーチルには悪いが断るのがマーチルの為だろう。


「マーチル、何があったかはわからないけど、連れて行くことはできない。外は危険だし、何が起きるかわからない。君は大事な友人だから危険な目にあってほしくないんだ。」


 最後にイケメンスマイル、これで完全に落ちただろう。

 しかし、反応は意外なものだった。


「レイク様、私レイク様のことが好きです。魔獣被害で両親を失った私に優しくしてくださり、沈んだ心に光を与えてくれました。もう、レイク様と会えなくなると思うととても、とても悲しいのです。」


 そんなこと言われては一緒に逃避行しちゃいたくなっちゃうじゃないか。


「わかった、じゃあ一緒に行こう。」


 守るべきものがある男は強い。

 俺はこの子を守り抜くことを決めた。

 そうすることで俺は強くなる……はず。


 そう言うと、マーチルは目を輝かせて抱きついてきた。

 俺は優しく背中をさする。

 この世のブサメンどもに告ぐ。

 これがイケメンの特権だ。


ーーー


 馬車に乗ってからと言うもの愚痴が止まらない。

 今まで受けてきた仕打ちを残り残さずぶちまけた。

 それをマーチルは楽しそうに聞いてくれる為、拍車がかかった。


「ーーんでさ、父上ったら酷いんだぜ、マルコスが来てからというもの、お前はマルコスに比べてあれができない、これができないとマルコスの前で言ってきてさ、俺も嫌だったし、マルコスも微妙な顔してた。」


「領主様ってそんな方だったんだね。知らなかった。」


 初めは敬語を使っていたがだんだんとタメにしてくれた。

 その方が俺はやりやすい。


「本当にいつもいつも俺のこといじめて、暇なのかよって思ってたわ。」


「はははっ、確かにそうだね。」


 愚痴も一通り済み、今度はマーチルのことについて聞いた。

 マーチル曰く、マーチルは動物と会話ができるらしい。

 昔から羊と共に過ごした恩恵だという。

 魔獣災害の際も動物達のおかげで安全なところへ隠れられたらしい。


「へえ、動物と会話できるなんてマーチル凄いな。もしかして魔獣なんかとも会話できるの?」


「…それは出来ないかも。試したことないからわからないかな。」


 そうこうしているうちにアレンシュタット領を出ていた。

 ここからは見たことのない景色。

 わくわくと不安が織り混じる不思議な気持ちだ。


 領地の外は魔物がいるらしい。

 どんな魔物がいるのだろうか。

 王道のスライムはいるだろうか。

 昔は雑魚モンスターの代表はスライムだったが、最近は一概に雑魚とは言えなくなっている。


 そうこう考えていると早速アクシデントが発生したらしい。

 道の真ん中に緑の体にボロボロの服、木の棒を持ったTHEゴブリンが3匹現れた。

 体長は80センチぐらいだろうか。

 あまり強そうには見えない。

 俺でも倒せそうだ。

 だが、その必要はない。

 なぜなら、馬車には熟練の護衛がついているからだ。


「おっとゴブリンとは珍しいな。」

「そうね。さっさとやっちゃいましょう。」

「油断してはいけません。ゴブリンは時に厄介な敵となります。まあ群れではないので脅威はないですが。」


 戦士風の男1人に魔法使い風の女1人。

 そしてそれをまとめる僧侶風の男。

 とてもバランスが取れていて連携もばっちりだ。


 戦士風の男は三体のゴブリンに単身で突っ込み交戦をし始めた。


 初めて見る人と魔物の戦い。

 ゴブリンはやはり雑魚モンスターの代表みたいだ。

 1対3なのにも関わらず、戦士風の男が終始有利に見えた。


「私に任せて、ファイアーボール。」


 魔法使いの女が放った火の玉は次々との ゴブリンに当たり、ゴブリン達ははあっけなく倒れた。


「はい、おしまい。さ、進みましょう?」


 倒れたゴブリンを尻目に馬車に再び乗り込む護衛の方達。

 その為完全に油断していた。


 突如倒れたゴブリンの中の1匹から黒い触手の様なものが伸び、魔法使いの女の足に絡みついた。

 そして女は逆さ宙吊りになった。


「きゃーっ」


「あれはゴブリンモドキ。初めて見ました。ミーク!慌てず対処してください。」


 しかし、声が聞こえていないのか慌てふためくミークと呼ばれる魔法使い。

 そんなミークに焦りを感じた戦士が助けに向かう。


「くそっ、ミークを離せ!」


 戦士風の男はゴフリンモドキに斬撃を与えるが全く効いていない。


 そしてそのまま思いっきり地面に叩きつかれた。


 ミークはうつ伏せで倒れている。そしてゆっくりと血が流れ、地面を赤く染めた。


「この野郎!!」


 戦士風の男は触手をなんとか切り、そしてミークを救出した。

 しかし、男はゴブリンモドキから大きな一撃をくらい、5メートル近く吹っ飛んだ。

 ゴブリンモドキは救出し地面に倒れているミークに近づきまたもや黒い触手を伸ばす。

 しかし間一髪で僧侶の魔法で浄化された。


 戦士風の男は息があり、重症ながらも助かった。

 しかし魔法使いの女は、顔が潰れ見るも無惨な姿になっており、助かることはなかった。


 勝利とは程遠い闘いが俺の初めて見た闘いだった。


 




 

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