表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/73

ガラハ王国4

 金稼ぎをするとなると、以前していたお悩み相談を嫌でも思い出してしまう。

 2度とあんなことしてたまるか。

 この国での金稼ぎの方法は一つ。

 武術大会だ。


 街中には至る所に掲示板がある。

 その掲示板には多くの武術大会の情報が載っている。

 その中で最も賞金の高いものを選び、それが開かれているところへ向かう。


 受付がこちらを見ると、急に顔を変えた。


「げっ、」


 げっ?

 こいつとは初対面のはずだ。

 どうしてそんな罰の悪そうな顔をするんだ?


「よう、久しぶりじゃん、元気してた?」


 どうやら、ジーマと顔馴染みみたいだ。

 ジーマの顔を見てあの顔をしていたみたいだ。


「お客さん、すみません、もうエントリーは終わってまして…すみません、上に呼び出されているので失礼します。」


「まあ、待ちな。」


 ジーマはそう言って、ここから足早に去ろうとする受付の男を止めた。


「今回参加するのはここの男2人だ。私は参加しない。」


「本当に?」


「本当に。」


「お客さま失礼しました。このエントリーシートに名前と使用武器をお書きください。」


 この2人の関係は気になるが、まあいい。

 というか、ミルイムも参加するのか。


 私はすぐ、所用の事項を書いて提出した。

 しかしミルイムは手こずっているみたいだ。

 目が見えないためだろう。

 その為私が代わりに書いた。


「はい、無事受理しました。ルールはご存知でしょうか?」


「いや、今回が初めてなんだ。教えてくれ。」


「かしこまりました。ルールは単純。勝利条件は相手をフィールドから出すか、リタイアさせるかです。武器についてはこちらから用意させていただきます。反則事項として、武器以外の道具の使用は禁止とさせていただきます。」


 ルール表を渡されたが、ミルイムの為に読んでくれたのだろう。

 

「わかった。ありがとう。」


「大会は明日0900より開催します。遅れても失格扱いなので御了承ください。」


「わかった。」


ーーー


 次に向かったのは武器屋だ。

 下見をしておく必要がある。

 ジーマに紹介されたこの武器屋はランス王国で最も大きい武器屋よりも大きく、品揃えも格段に良かった。

 ジーマは武器を使わないからかつまらなそうに武器を眺めている。

 ミルイムはジーマに付き添っている。

 フォーリンは並んでいる杖を見ては興奮している。

 それは私も同じだ。

 とてもいい武器が揃っている。

 なにやら刀という珍しい武器もある。

 刀は剣とは少し違い、切れ味と軽さに特化した武器らしい。

 少し試しに持たせてもらったが、私には軽すぎて使いにくいと思った。

 切れ味も見せてもらったが、刀の上に紙をただ置いただけなのに、紙が2つに割れた。

 値段もすごく、金貨300枚といった破格の値段。

 どちらにせよ手は出せないな。


 剣を物色していると、一際異彩を放つ剣を見つけた。

 

「おや、もしかしてわかるのかい?」


 その剣を見ていると、店主が話しかけてきた。


「この剣はなんだ?」


「この剣はな、俺が作った最高傑作だ!いやあ、嬉しいね。あんた見る目あるよ!」


「これいくらだ?」


「そうだな、おまけして金貨150枚でどうだ?」


 金貨150枚…

 まあ、妥当、いや、むしろ安い方だ。

 金貨200枚でも買う人がいるだろう。

 しかし今の私には150どころか50すらない。

 

「すまない、今日は下見に来ただけなんだ。また来る。」


「わかった!じゃあこの剣は他のやつに取られないように奥にしまっといてやらぁ。」


「あぁ頼む。」


 明日の大会の優勝賞金は丁度金貨150枚。

 優勝したら買える。

 これでやる気も出たというものだ。


ーーー


「で、お前らはいつまで着いてくるつもりだ?」


 宿を探しているのだが、どうしてかまだジーマとミルイムが付いてきている。

 

「ひどい、用が済んだらポイなのね。所詮私は都合のいい女…」


 何を言ってるんだこいつは?

 フォーリンもそんな顔するな。

 あとその言い方は誤解を生む。


「お前らは宿を取らないのか?」


「あー、私は昔ちょっとあって宿を出禁になってるの。」


「この国全部のか?」


「そりゃもちろん。」


 もちろんの意味がわからない。

 何をしたらそうなるのか。

 

「ちなみに何をしでかした?」


「しでかしたとは酷いな!ちょっと宿を一つ壊しちゃっただけだよ!」


「あの時は凄かったねー。」


 言っていることがわからない。

 壊した?

 宿をか?

 どうやって?


「理解したくはないが理解した。ではお前らはいつもどこで寝ているんだ?」


「どこって、あんた来たじゃん。」


「まさか、あのゴミ捨て場か?」


「ゴミ捨て場とは酷いな!あぁ見えて快適なんだぞ!」


「そんな情報いらん!とにかくお前らは帰れ!」


「それはちょっと酷いんじゃないんですか?」


 フォーリンがそう言う。

 どうして庇うんだ?


「せめてミルイム君だけでも一緒に泊めてあげましょう。」


「それもそうだな。」


「ちょっと!私だけ仲間はずれなんて酷いじゃない!!」


 泣きついてきて鬱陶しいので一緒に泊めてあげることにした。

 ジーマは顔を見られるとダメなので、ミルイムの覆面をつけさせた。

 部屋は男と女で分けた。

 まあ、無難だろう。


 しかし、女陣は大丈夫なのだろうか?

 あの2人、仲悪くは無いと思うが、性格が真逆だ。

 何を話すのか気にならないと言うと嘘になる。


 ミルイムはベットに飛び込むと嬉しそうに跳ねている。

 

「うわぁフカフカだぁ!」


 その言葉にジーマへの怒りが湧く。

 ミルイムにもあのゴミ捨て場で寝させているのだろう。

 親ならしっかりとした環境にしろ。


「ミルイム、ジーマはお前から見てどうだ?」


「んー、恩人?」


「ははは、笑えない冗談だ。」


 しかしミルイムは真剣な表情をしている。


「お前の過去を聞いてもいいか?」

 

ーーー  


 ミルイムから聞いたジーマは、ジーマじゃなかった。

 とは言っても、ジーマとは1日しか触れてないので、それが本当のジーマなのかもしれない。

 孤児院で虐められていたミルイムを保護し、今まで女手一つで育ててきたらしい。

 その間に一人で生きられる術を学んだみたいだ。

 武術大会に参加した理由は、明日、ジーマの誕生日らしく、何か買ってあげたかったらしい。

 あれが初めての戦いだったみたいだ。

 初めての戦いでよくあんな強そうな男に……

 って目が見えないんだったな。

 よし、今からジーマへのプレゼントを買ってやるか。

 スキルを教えてくれたお礼……は、済ましたが、何か買ってあげたいのだ。




 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ