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番外編 ジーマの過去2

 伝説から1ヶ月。

 私は様々な大会に出た。

 そしてその全てで大きな成績を残した。

 いつしか私は『流星』と言われるようになった。

 偶然か必然か。

 師匠から教わった技と同じ名前だ。

 その由来は流星の如く突如現れ、その全ての大会を瞬足で終わらすことから来ているらしい。


 街を歩けばどこからか声をかけられる。

 私にかけられるオッズが1.0倍なんてこともあった。

 あっという間に私の名は国王にも届くことになった。

 そして国王から声がかかる。

「是非とも、我を守る盾となり剣となれ」と……

 念願のガラハ兵士に誘われた。

 私はもちろん了承した。


 ガラハ兵士は皆同じ装備をつける。

 理由は統制力を持たせる為だ。

 統制のとれたガラハ兵士を見ると、それだけで強そうに見える。

 

 しかし私は装備をつけると弱体化するデバフスキルを持っている為、特殊兵士となった。

 特殊兵士とは、普通のガラハ兵士とは違い、個々の力を優先させた部隊だ。

 その為、王国の切り札とも言われたりする。

 

 仕事内容は主に王国の巡回。

 当初想像していた仕事内容とはかけ離れていた。

 それもそのはずだ。

 今は国間の争いが起きない。

 なぜならそんなことをしていると、魔大陸(デスフィールド)の連中に攻め入られてしまうからだ。

 

 王国の兵士となった今、私は大会に出ることも許されず、日々暇を持て余していた。

 明くる日も明くる日も変わらない毎日。

 動くことといえば、たまに街中で起きた喧嘩を仲裁するぐらいだ。


 私がしたかったのはこんなことだったのだろうか…

 私が王国の切り札と言われて1ヶ月経った。

 たった1ヶ月、されど1ヶ月。

 皆が私を忘れるのには少ない様で十分な力だったみたいだ。

 風の噂だが、私は勝ちすぎたから王国に止められたらしい。

 あいつが出た試合はすぐ終わるからつまらない。

 もっと白熱した戦いを見たい。

 そんな声も聞こえた。


 体がうずうずする。

 体が戦いを欲している。

 どこかで喧嘩が起きないだろうか。

 魔物が襲来して来ないだろうか。

 そんなことばかり考えていた。


 だから、あんなことが起きてしまったのかもしれない。


ーーー


 今日も今日とて王国内を見回る。

 最初は私の顔を見て手を振る人もいたが、もう、手を振る人も声をかける人もいない。

 薄情だと思った。


「助けてくれ!!」


 街の喧騒とは違う助けを求める声。

 久々に聞いたので、一瞬気づかなかった。

 よし、戦える!

 私は声がする方へ全速力で向かう。


 そこには短剣を持った男がいた。

 そして、後ろには若い男がいた。

 短剣を持った男はなにやら様子がおかしい。

 短剣を振り回して暴れている。


 異常者だと思った。

 後ろの男を守らなくてはいけないと思った。

 だから私は全速力で短剣を持った男に突っ込み、自慢の蹴りを食らわした。


 蹴りを食らった男はそのまま後ろの家に吹っ飛んだ。

 そして、衝撃を受けた家はバランスを悪くしたのか、そのまま崩れてしまった。

 そんなつもりは一切なかった。

 ただ、男を助けようとしただけで……


 助けた男に近づく。


「やめろ、来るな!バケモノめ……」


 助けたのに、どうしてこんなことを言われなきゃいけないんだ?

 私は何も言えず、その場を去ろうとした。


「オギャーオギャー。」

 

 崩れた家から何やら赤子の声がする。

 そうだ。

 家には人が住んでいるはずだ。

 助けなくては。


 急いで崩れた家に戻り、瓦礫を退かした。

 そして、血を流して倒れる女と、その女に守られて泣く赤子を見つけた。

 女は十中八九母親だろう。

 この赤子は母親に助けられてまだ生きているのだ。

 母親に抱かれている赤子を捕まえる。

 赤子も怪我をしていた。

 目の辺りが血に覆われていた。

 何かが落ちてきて切ったのだろう。


 私は尊き命を一つ無駄にし、その命が守った命を保護した。

 ちなみに私の蹴りを食らった男も死んでいた。


 後から聞いた話だが、蹴りを受けた男は赤子の父親だった。

 そして助けを求めていた男は、女の不倫相手だった。

 たまたま不倫現場を目撃した父親が不倫相手の男を殺そうとしていたらしい。

 そこで助けを求めて、私が来たということだ。


 つまり、この保護した子の両親は私が奪ったことになる。

 この子は親に育てられず生きていくことになる。

 私は下人だったけど、親はいた。

 貧しいながらも愛情は受けてきた。


 この国に孤児院はあっただろうか。

 せめてもの償いだ。

 この子を孤児院に渡して、今まで貯めてきた賞金を全て寄付しよう。


ーーー

 

 私がガラハ兵士を辞めて5年が経った。

 あの一件から私は国外追放となった。

 今は色んなところを旅しながらその日暮らしをしている。

 その間、ひとときもあの赤子のことを忘れたことはない。

 

 もう人生がつまらなく感じていた。

 魔大陸に突撃しようか考えたが、なんだかんだ言って死ぬのは怖い。

 やりたいことはこの5年であらかたやってきた。

 とは言っても、やりたいことがそこまでなかったので、すぐにやりたいことは尽きた。

 一つを残して。


 あの赤子は今どうなってるだろうか。

 気になって気になって仕方ない。

 変装すればまたガラハ王国へ入れるだろうか。

 私の髪は緑色でとても目立つ。

 印象の大半を占めるほどだろう。

 だったらこの髪の色を変えたらどうなる?

 そう思い始めたら体が勝手に動いた。

 

 まずは髪の色を変えた。

 色々変えてみたが、一番私らしくない赤に決めた。

 口調も変えた。

 真面目な印象を消し去る為、おちゃらけた口調に変えた。


 ここまでする必要はないだろう。

 5年も経った。

 私のことを覚えている人なんて少ないだろう。

 この蹴りさえ見せなければ思い出す人などいないだろう。


 無事、入国ができた。

 早く、早く会いたい。

 その気持ちが先行し足が遅く感じる。


 そして目的の場所に着いた。

 窓から中を覗く。

 しかし、赤子の頃しか知らないので誰があの赤子なのかわからない。


 何かが足にぶつかる。

 木の棒だ。

 振り返ると、クリーム色の髪をした男の子が立っていた。

 男の子は目を瞑っており、木の棒で辺りに危険がないか調べながら進んでいるみたいだ。


 涙が出てきた。

 この子だ。

 目が見えていない子だからじゃない。

 私の直感がそう告げている。

 

「ごめんなさい。」


 突然の謝罪に男の子は困惑している。

 思わず男の子を抱きしめた。

 私にこんなことをする資格はない。

 これで最後だ。

 だから神様、許してください。


 すると、孤児院のドアが開いた。


「あんた、誰だい?」


 柄の悪い小太りのおばさんが出てきた。

 この子を預けた時にはいなかったはず……


「あ、ごめん。この子が可愛かったからつい。」


「この子が可愛い?こんな気味が悪いのがか?だったら貰ってくれよ。」


 今なんて?

 この子を貰えだって?

 私にそんな資格はない。

 だけど、それは私自身の問題。

 世間にはあの事件はそこまで知られてない。

 だったら別に問題ないのか?


 男の子を見る。

 男の子は何が面白いのかわからないが、笑っている。

 まるで、私の罪を許すかの様な笑顔だ。

 私に子供を育てることができるのか?

 お金はない。

 家もない。

 十分な環境で育てることはできない。

 ここは断るのがこの子の為だろう。


「いや、私に子供を育てるなんて……」


 男の子に手を握られる。

 その時、なぜかこの子は私が育てなきゃという思いが出てきた。


「じゃあ、遠慮なく貰っていくね。返品しないから!」


「あぁさっさと行ってくれ、あたしは忙しいんだよ。」

 

 そうして、私はこの子の親になった。


 

 

 


 

まだまだ過去を掘りたいですが、早く本編を終わらせたいので、人気がなければ書きません。

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