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第8話

以前この話書き終えて保存しようとしたら間違えて戻るボタン押して絶望しました。


宜しくお願いします。

 天気の良い昼下がりの商店街は、食べ歩きをする者や、カフェでランチをする者で賑わっている。


 ハンナとイーリスも商店街の中央にあるデザートが美味しいと話題のカフェで昼食を摂っていた。


 「今日は誘ってくれてありがとう。それと、遅れちゃって本当にごめんなさい。」

「いいんだよ、そんなに待ってないし。それよりハンナと出かけられることが嬉しいしね。」


 ハンナはこの日待ち合わせに15分遅れた。

理由は、イーリスと出かけると母に伝えて家を出ようとすると、そんな地味なワンピースで?いつもと同じ格好じゃない!ありえない!と言われ、母の用意した服に、着替えさせられたからだ。


 ハンナはオシャレに、無頓着なわけではないが、自分には似合わない、という自信の無さから積極的にオシャレはしない。もちろん装飾品なんて付けた事はない。


 そんなハンナが、今日は白いブラウスに腰がきゅっとリボンで締められ、ふんわりと広がった水色のハイウエストスカートを身に着けていた。

髪の毛もいつも1つに括っているが、今日はふんわりとしたハーフアップだ。


 イーリスはハンナに一瞬目を奪われ、はっとしたあとに、可愛い、と一言褒めた。


 その言葉に、顔を赤くして、遅れたことの謝罪とお礼を言って目をそらす。


 どぎまぎとしながら、行きましょう、と声をかけ、現在のカフェに来たのだ。


 二人はそれぞれ注文したパスタを食べながら、

目的の帽子屋はハンナが幼い頃から行っている場所で、店主のフィリップ・ハルトマンとは気安い仲であること、帽子屋だけど、ちょっとしたアクセサリーや靴があること、昔お気に入りの帽子を修理してもらった事などを話した。


 そして、目の前には噂のデザートが置かれた。

ハンナは目をキラキラさせて、美味しい!とふわふわのパンケーキを頬張った。


 「付いてるよ。」

くすり、と笑ったイーリスの指がハンナの口元についた生クリームをすくいとる。


 突然触れた温かい感触と、その指をぺろりと舐めたイーリスに目を見開く。


 普通!舐めないでしょう?私の口元についてたやつなんて!そんなの、恋愛小説の中だけの話なんじゃないの?

などと考え、パニックになる。


 「ごめん、嫌だった?」

「嫌とかじゃないけれど、びっくりして。貴方こそ嫌じゃないの?」

魂が抜けたかのようなか弱い声で答える。

「僕はむしろ、役得、かな?」

ニヤリ、と笑うイーリスに、ドキリとして

残ったパンケーキを焦って頬張る。


 実はハンナは、少し前からイーリスに対する恋心を自覚していた。

イーリスにだけ感じる焦燥感にも似た心地よ良いドキドキを、マリーに相談したところ、それは恋よ、とけろりと言われたのだ。

マリー曰く、恋というものは、その人のことを考えると幸せになるし、ずっと考えてるし、笑顔を見ると心臓が跳ねるし、顔がほてるものなのだとか。

全て当てはまって、恋という言葉がストンと胸に落ちた。


 食事を終え、店を出る。


 「あそこの角を曲がったところよ。フィリップさんに会うのも楽しみだわ。」

「いい帽子があるといいね。」


 少し歩くと、濃い茶色の木でできた建物に入っていく。


 店のカウンターには白いひげがよく似合うダンディな男性が立っていた。

 「いらっしゃい。よく来たね。ボーイフレンドかい?」

「ち、ちがうわ、友達よ。」

「ええ、まだ友達です。はじめまして、イーリスと申します。フィリップさんの話はハンナから聞いてます。宜しくお願いします。」

「あぁ君が。ハンナをよろしく。では、私は工房にいるからあとは若いお二人で。何かあったら呼ぶといい。」

「「ありがとうございます。」」


 フィリップは、二人の雰囲気をみて、暖かな目を向け、店の奥に消えていった。


 「話し通り優しそうな人だね。」

「えぇ。いつも良くしてくれて、祖父みたいに思ってるわ。」


 店内の帽子をみながら、あれじゃない、これじゃない、と話していると、

「ねぇ、これハンナに似合うんじゃない?」

と、ピンクゴールドのリボンのチャームがついたネックレスを、ハンナの首元にかざす。


 「そうかしら。私には勿体ないわ。私よりそれを大切につけてくれる女の子に買われたほうがいいのよ。」

そう言って、困ったように笑った。


 昔からアクセサリーなんてつけたことはない。

それは、自分には似合わないし、必要ないと思っていたからだ。周りの恋愛をしている子はみんな、キラキラ光るネックレスやイヤリングをつけていた。

羨ましいとは思うが、やっぱり必要ない、と諦めてしまっていた。今は恋をして、少しでもかわいくなりたいと思う反面、今更私なんかがつけてもいいのだろうか、と悩んでいた。


 少し悲しい気持ちになったが、その後の帽子選びで気分が晴れた。


 「とってもいい帽子が買えたわ!ありがとう。」

「よかったね。フィリップさんもかわいいって言ってたし、僕もよく似合ってると思う。」

「ふふ、ありがとう。明日からこれを被って仕事するのが楽しみ。」

「あ、忘れものをしたみたい。少し待っててくれる?」

「私も行きましょうか?」

「すぐだからそこで待っててよ。」


 帰り道の途中、イーリスは帽子屋に走って戻っていった。


 「お待たせ。じゃあ帰ろうか。」

「早かったのね。あった?」

「うん。あったよ。ありがとう。」


 商店街からハンナの家までの20分、二人はどちらからともなく少し歩調を緩め、のんびり話しながら歩く。


 「もうついちゃったのか。あっという間だね。」

「そうね。今日は本当にありがとう。とても楽しかったわ。」

「こちらこそ。帽子も似合うけど、これも。」

そう言って、イーリスはしゃらん、とポケットからリボンのチャームがついたネックレスを取り出した。

そして、それを見て呆けてるハンナに、後ろを向いて、と言い、ネックレスをつける。


 ハンナの首元にひんやりと金属が触れる。


 「うん。やっぱり、かわいい。」

「え、あ、これ、貰っちゃっていいの?」

「今までアクセサリーつけたことないんでしょ?僕が初めてって事だよね。だから是非もらって欲しい。それでさ、また遊びに誘うからそれ、付けてきてよ。」

「ありがとう。こんな可愛いの、本当に私がつけてもいいのかしら?」

「何言ってるの。ハンナは可愛いんだから。本当によく似合ってるよ。で、また僕と遊んでくれるの?」 

にっこり笑って首を傾ける。


 「ええ。もちろん。嬉しい。」

そう言った直後、ハンナの右手の甲に柔らかいものが触れる。


 イーリスがハンナの右手をすくいとり、手の甲にちゅっとキスを落としたのだ。


 口をぱくぱくとし、トマトのように真っ赤な顔のハンナを、かがんだ姿勢から、見上げる。

そして、いたずらが成功したように笑って

「約束、だからね。」

とぼそり、と伝える。


 ハンナははっとして、拗ねたようにぷいっと顔を背けて

おやすみ!!!と声を荒げて家に入っていった。


 そんなハンナを愛おしそうに見送って帰路につく。


 次の日、ハンナは寝不足だったという。


ありがとうございました☆

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