第3話
拙い文章ですが読んでいただけると嬉しいです。
「初めまして。私はハンナ・ミュラーと申します。宜しくお願いします。こちらは、幼馴染の」
「エルマー・ウェーバーです。宜しく。」
モーリッツの指名もあり、新たに町にやってきたイーリスに挨拶をする。
「丁寧にありがとう。イーリスと呼んでください。宜しく。」
さわやかな笑顔に少し見惚れる。
エルマーから肘打ちされ、はっとする。
「あ、では、ご案内しますね。」
ぎこちなく言うと、3人は町を歩きだした。
野菜はここが安い、服はここが若者向け、仕事が欲しいときは役場に、など簡単な説明をしながら街を練り歩く。
「あの、ところで2人は恋人なの?」
突然のイーリスからの質問にエルマーと2人で目を見合わせる。
「僕たちはただの幼馴染ですよ。家が隣で親同士が仲が良くてその流れで、僕たちも兄妹みたいに育ちました。」
「ええ、そうです。エルマーの方が2つ歳上なので、兄のような存在です。イーリスさんは、ご兄弟はいらっしゃらないのですか?」
そう聞くと、
「いるにはいるけど、君たちのように仲がいい訳じゃないかな。どちらかというと、僕は嫌われていましたね。」
少し遠くを見るようにしたイーリスが暗い顔で答えた。
「そう。嫌なことを聞いてごめんなさい。」
「いいんだよ。だから君たちとは仲良くなれると嬉しいな。僕は17だから君たちより少しお兄さんだけど、この町に来たばかりだし、また、何かとよろしくね。」
その後も、他愛ない話をしながら町の案内は終わった。
「あの、よかったら今日私の家で、お夕飯ご一緒にいかがですか?今日はエルマーの家族と食事をするので、ご迷惑でなければですが。」
「いいのかい?今日会ったばかりの僕がいってお邪魔じゃないかな。」
「人数が多いほうが楽しいですし、歓迎会って事でいかがですか?」
「ありがとう。では、お言葉に甘えようかな。エルマー君も僕がいてもいいかい?」
「はい、大丈夫ですよ。僕のことはエルマーと呼んでください。僕のほうが年下ですから。」
「そうかい。じゃあ君たちも僕のことはイーリスと気軽に呼んでほしいな。年下って言ってもそんなに離れてるわけじゃないだろ。その方が気楽だしね。敬語もなしで、頼むよ。」
「わかった。」「わかったわ。」
3人で微笑み合った。
初日とは思えないほど仲良くなれたように思える。
扉をとんとん、と叩いて名前を名乗ると中からガチャリと扉が開く。
「やぁ、いらっしゃい。」
ヘンリーが快く招き入れる。
「今日は、呼んでいただいてありがとうございます。」
「いいのよ、人数が多いほうが賑やかで楽しいもの。ようこそ我が家へ。さ、こっちよ。」
ヘンリーの隣に立ったエミリアが、頬に手を当てて、にっこり笑って席へ案内する。
木製のダイニングテーブルには豪華な食事がずらりとならんでいた。
イーリス以外は既に席についており、イーリスを笑顔で迎え入れた。
「お招きいただきありがとうございます。イーリスです。宜しくお願いします。とても美味しそうですね。」
「そうでしょ。この食事はほとんど食堂を経営してるエルマーのお父さんとお母さんが持ってきてくれたのよ。とっても美味しいんだから。」
「あら、ハンナちゃん、ありがとうね。私も主人もハンナちゃんにほめてもらえて鼻が高いわ。」
「そうなんだ。それは楽しみだな。」
みんなで乾杯をし、食事を楽しむ。
「へぇ、君のいた国では格闘技が盛んだったんだね。それは是非ともわが町の若者にも教えてほしいものだね。」
「僕はたいしたことないですけど、ヘンリーさんがそう言うのであればいつでも。」
「僕も習いたいな。」
「エルマーが習うなら私も教えてほしいわ。」
「女の子はあんまり格闘技はむいてないと思うけど。」
「私は女の子らしさなんて求めてないもの。剣や弓が得意なのよ。」
「へぇ、ハンナはすごいね。うん、じゃあハンナもエルマーも僕にできる範囲で教えてあげるよ。変わりに僕にも農作業を教えてくれないかな。ここで住むなら仕事をしないとね。」
「お仕事なら、お父さんの役場に行けばたくさん募集があるから、明日行ってみたらどう?」
「ありがとう、そうしてみるよ。」
「私は明日は、お母さんが管理する畑にいるから、困ったらたずねて。エルマーは食堂の手伝いをしているわ。」
「ありがとう、ハンナ。困ったら頼むよ。」
食事は和やかな空気で終わった。
「ありがとうございます。食事とても美味しかったです。今度、食堂に食べに行かせてください。」
「おう、いつでも待ってるよ。」
オスカーは歯を見せるように、にっと笑った。
「今日は本当にありがとうございます。今日この町に来た僕に親切にして下さって。これから町の方たちとも打ち解けられるように頑張ります。」
「あなたなら大丈夫よ、うちのハンナもあなたにとても懐いてるように見えるもの。」
「ちょっとお母さん!」
「あら、照れてるの?ハンナも恋する年頃かしら?」
「もう!今日会ったばかりなのよ?イーリス、気にしないでね。お母さんも、からかうのやめてよね!」
「はは、ハンナに好きになってもらえるなら嬉しいな。」
冗談とはいえ、その言葉に、ハンナは顔を赤く染め、うつむく。
食事を終え、しばらく談笑していると、九時を知らせる鐘が町に響く。
「こんな時間までありがとうございます。僕は今日から役場近くの借家に住むことになったので、荷物が片付いたら是非遊びに来てください。」
そう言って、イーリスはハンナの家を後にした。
ありがとうございました☆