第2話
少しずつ展開していきますが、最初はちょっともたもたします。
説明が多い最初だけ、お許しください。
「今日こそ、我が妻としてエルフルトにお招きしよう。」
あれからというもの、黒髪に赤い瞳の美男子は頻繁に訪れるようになった。
「レオン殿下、ようこそいらっしゃいました。わたくしはまだ13歳と未熟な身でございます。殿下の妻など恐れ多いですわ。それに、殿下には立派なご婚約者さまがいらっしゃるではありませんか。」
そう、あれから隣国について調べたのだ。
隣国エルフルトはフェリックス・クラウゼが国王になってから、民達の生活が苦しくなり、反国王はというのがいるらしい。しかし、王に逆らえば即処刑という無慈悲さに、密かに慕わないことしかできないのである。
フェリックスには息子が二人いる。
第一王子エリアスは、王妃オリヴィアの実子ではなく、前妻の子である。前妻は流行病により病死したとされている。第二王子レオンは妾であったオリヴィアが懐妊したことで、オリヴィアは正式な王妃となった。
オリヴィアの強い希望により、王位継承は第二王子ということになっているらしい。
そのため、第二王子には次期王妃に相応しい公爵令嬢イザベラ・フォーゲルがあてがわれている。
この令嬢、身分は王妃に相応しいが、黒い噂が絶えないそうだ。
「あれは、父上と母上が決めた相手に過ぎない。私は君を見つけてしまったのだから、仕方がないだろう。」
そう、鋭い目で訴える。
「いつも、申し上げておりますが、わたくしはただの庶民です。殿下はもうすぐ立派な成人でいらっしゃいますが、私はまだ小娘同然。釣り合わないばかりか、国王陛下から認めていただけるとは思いませんわ。」
うんざりしたように、にこり、と微笑んで求婚を拒否する。
「君はわかってないんだよ、君自身の価値に。まぁいい。今はそうやって拒否していればいい。また迎えに来る。準備をして、な。」
にやり、と不敵な笑みを浮かべ去っていった。
レオンが自分を好きだとは思えない。私を国に連れていきたいという想いは強いようだが、私にはこの町でやりたいことがまだまだあるので、お断りである。
思えば、今までの人生も仕事人間だったし、幼くしてなくなることもあったため、恋愛などしたこともなかった。興味もない。
しかし、準備をして迎えに来る、とはいささか不穏な空気を感じる。
それから、しばらく平穏な日々だった。その間ハンナは14歳になった。
今日は町内会があるため、町おこしの要であるハンナも参加する。
町内会には、主に商業施設などの代表が集まる。
議題は、今後の町の発展や、伸び悩む農作物の栽培方法の相談などさまざまだ。
今日の会議の最後に町長のモーリッツ・ワグナーが少し待っててくれ、と会議場を出て、見知らぬ男性を傍らに戻ってきた。
「突然すまないが、会議の前に皆さんに伝えたいことがある。この青年歳は17。親に勘当され行くあてがないからと、わが町を頼ってくれた。見知らぬ者ゆえ、警戒するのも無理はない。しばらく共に過ごしてみて、皆さんでこの青年を町民に相応しいかどうか見極めてはくれまいか。皆さんが納得できなければお引き取り願う。そうだな、期間は3ヶ月程でどうだろうか。」
モーリッツは、隣にいる金髪に蒼い瞳の青年を紹介した。
なんて、キレイな人なのかしら。
ハンナは、ひと目見ただけで惹きつけられた。
「皆様、突然のご訪問申し訳ありません。僕のことはイーリスとお呼びください。僕は訳あって国を追い出されました。詳しいことはまだお伝えできませんが、町長さんには、訳を伝えた温情をかけていただくことになりました。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、宜しくお願いします。」
キレイな青年はそう言うと、丁寧な礼をした。
「ハンナ、エルマーと一緒に町を案内してやってくれ。」
「分かりました、モーリッツさん。おまかせください。」
にっこりと笑って二つ返事で了承した。