第10話
イーリスのキャラが、迷子かもです。
読み返してどこか修正するかもです。
「あら、いいの?ありがとう、アントン。さすがね、私がこの花好きだって知ってたなんて。」
「当たり前だろ、何年一緒にいると思ってんだ?俺が6歳で引っ越してきてからの付き合いなんだから。」
そんな会話をしながら、カンパニュラの花束をハンナは、嬉しそうに受け取る。
「ふふ、そうね。だけど最近お互い忙しくて会えてなかったじゃない?元気だった?」
「俺がってより、ハンナが忙しそうだな。また何か新しいことしてるのか?」
「そうなの!聞いてくれる?」
目を輝かせて前のめりに言う。
研究のことを話し出すと止まらないため、ハンナの話を真面目に聞いてくれる人は実は少ないのだ。幼馴染のエルマーでさえ、今日は忙しいから!と逃げるときがある。ちなみに、イーリスはまださほど被害にはあっていない。
「あーはいはい。どうせ長くなるだろ?今日は時間ねぇから、明後日お前んち行くわ。仕事休みだろ?」
「ええ。絶対よ。」
「分かってるって。じゃ、俺配達の途中だから、またな。」
「これ、本当にありがとう。またね。」
そんな二人の様子を見ていたイーリスは、お弁当の配達に来ていたエルマーに、あいつは誰だ?と眉をひそめて聞く。
「あぁ、彼はアントン・フックス。花屋をやってる。ハンナと同じ歳だからか、昔から気が合うみたい。長い付き合いだから、あんなに気安い感じたけど、僕と同じで、兄弟みたいに思ってると思うよ?だから安心しなよ、イーリス。そんな怖い顔しないで。」
怖い顔、と言われてはっとして表情を取り戻す。
「分かりやすい嫉妬だね?」
「何ニヤニヤしてるの?僕だって嫉妬くらいするさ。アントンか。身長は僕の勝ちかな。うん。」
「張り合わないでよ、兄弟みたいなもんだってば。」
くすくすと笑いながら、エルマーは、まぁ頑張ってよ、とイーリスの肩をぽんっと叩く。
自分の余裕のなさに小さくため息を付いて、イーリスは仕事に戻った。
2日後、ハンナの家には約束通りアントンが来ていた。
「それでね、あの時私思い出したの!あの花から抽出した油を、アロマオイルにできるんじゃないかって!そうしたら、夜ぐっすりよ!」
「へぇ、いい香りだな。で、効果はあったのか?」
「もちろん!良かったらもってく?あと少しならあるの。夜寝付きが悪いって言ってたわよね?」
「まぁそうだな。じゃあもらっとくよ。」
そう言ってアントンはハンナの手渡す小瓶を受け取ろうとした。
「ねぇハンナ?僕にはないのかな?」
アントンとハンナの手が触れた時、不機嫌そうな声がかかる。
実は2日前のあの日、ハンナから話を聞き出し、イーリスも参加する事にしたのだ。ハンナはもちろん二つ返事で承諾した。
「イーリスも眠れないことがあるの?でも、ごめんなさい。この花のアロマオイルって抽出が難しくて、量があまり取れないのよ。それにもう時期が終わって花は落ちてしまっていて、もしよかったら来年はイーリスの分も作るわね。」
申し訳無さそうに眉を下げたあと、ニコリと微笑む。
「ふーん。ハンナは僕よりアントン君にあげちゃうんだ。」
拗ねたような口調のイーリスに、ハンナは首をかしげる。
「あの、イーリス?」
「なんだい。」
いつもより少し低めの声でハンナの呼びかけに返答する。その声にびくりと肩を震わせて、いいえ、ごめんなさい。と消えそうな声で言う。
重くなった空気を遮るように、アントンが立ち上がる。
「俺そろそろ帰るわ。また話したくなったらいつでも呼べよ。あと、これもありがとな。」
「あ、ええ。よろしく。少しお皿に垂らして下から蝋燭で暖めると部屋の中に香りが広がるから。またどうだったか聞かせて。」
「あぁ、またな。」
アントンを玄関まで送り出している間もイーリスは、机に肘をつき、自分の手に顔を置く。
玄関から戻ってきたハンナの顔を見て、深く息を吐き、立ち上がる。
「ハンナ、ごめん。僕も今日は帰るよ。」
「分かったわ。来てくれて、ありがとう。また明日。」
ぎこちなく、手を振り、帰路につくイーリスの背を見つめた。
恋愛経験のないハンナは、イーリスのヤキモチに気付くはずもなかった。
今まで通り友人に接していたつもりだが、何がいけなかったのか。
その夜ハンナは、アントンにアロマオイルを渡したことを後悔したのだった。
ありがとうございました!




