僕と彼女と水たまり
俺は俺の名前が嫌いだ。俺は今でもこんな名前をつけた親を恨んだりする。
桜の並木道に暖かい風が吹き抜け、俺の長めの髪がなびいた。髪をかき上げると、目の前に一つ、建物を見つけた。
坂を登りそこへ近づくと、門に名前が刻まれていた。
「『おもらし荘』...ここか。」
今日から、俺の新しい人生が始まるんだ...!!
これからの生活に期待を膨らませて、門を抜けて敷地内に入る。しかし、そこには引き戸のドアひとつしかない。
「アパートって聞いてたんだけどなぁ。」
まるで少しお金持ちの一戸建てのような風貌に、入っていいのか分からずオドオドしていると、左から声が聞こえてきた。
「あら、なにか御用ですか?」
茶色がかったロングヘアにやさしく切れたような目のお姉さんがほうきを持って現れた。
「あっ...あの...」
「あっ!もしかして今日からここに来る子かな?」
「は、はい!」
お姉さんはにっこりと笑った。
「遠くからご苦労さま、待ってたわよ。さ、入って入って!」
そう言って、引き戸を開けると中には玄関のようなものがあった。
「ここで靴脱いでね。」
中に入ると、廊下があって右には階段があった。左は何かよく分からないけれど扉があった。
「とりあえず自分の部屋に荷物置きに行った方がいいわよね、ついてきて。」
何を言っていいかわからず、とにかくうなずいた。
「ところで、あなたの名前だけど、『花咲夕梨』くんでいいのよね?」
階段を登りながら、名前について聞かれてしまった。
「そう、です...」
「かわいい名前ね、見た目もかわいいし、私が食べちゃいたい。なんてね、ふふっ。」
お姉さんはとてもいい香りがした。
正直、名前について言及されるのは苦手だ。昔からいつもバカにされたりするんだ。大人になったら改名してやる。俺はいつもそう思っている。
「あ、そうだ。私の名前は『藤川ゆかり』よ。春から3年生になるの。私もあなたと同じ学校だからね。」
「えっ!マジですか!?」
大人びていて、きっと高校生か大学生だろうと勝手に思っていた。
「そ、そんなに驚くことかしら?ここに来る人達みーんなびっくりするんだから!私だってまだまだ子供なのに...」
「あ、いや、なんかその、とってもきれいだから...」
「え、あっ、ありがとう...」
なんだか気まずいというか、甘ったるい雰囲気になってしまった。
「ここがあなたの部屋よ、はいこれ鍵。」
ふと右手をとられて、手のひらに鍵を乗せられた。
「あっ、そうだ!学校の制服が届いてたから、部屋に置いておいたわ。私は下にいるから、いろいろ終わったら降りてきてね。じゃっ、またあとで。」
「よ、よろしくお願いします。」
そう、俺はこれから中学生になる。地元を離れ、親元を離れてここまで来た。ゆかりさんもいるし、これからの生活が楽しみになってきた。
ドアを開けると、テレビとベッドがあり、左側に洗面所とトイレがある。ビジネスホテルのような部屋だった。
電気を付けて、荷物を置くとベッドの上に箱が置いてあるのを見つけた。
「これが制服かぁ...」
そういえば、まだ学校の制服がどんなものかを見たことがなかった。制服なんて見たところで何もないだろうと思っていたからだ。しかし、いざ目の前にあるとなれば、話は別だ。胸を踊らせながら箱の蓋を開ける。
そこには、一面の紺色が広がっていた。
「そうか、ブレザーなのか。」
と思ったが、よく見ると、その箱の中心には何やら赤いものがある。
「これは...リボン...?」
なぜリボンが?俺は間違いなく男だ。入っているならネクタイであるべきだ。あとでゆかりさんに返そう。
紺色のブレザーを外に出すと、また紺色の布が見えた。しかし、さっきとは様子が違う。なにやらひだのような折り目がたくさんついていた。これは...
「スカートじゃん!!!」
一体どういうことだ?これは完全に女子の制服だ。
もしかしてゆかりさんは俺の事を女子だと思っているのか?いや、でもさっきは俺の事を『夕梨くん』と呼んでいた。じゃあ...まさか、俺の事をバカにしてるのか!?クソっ!こんな名前なばっかりに、せっかく新しい土地に来たっていうのにまたこれかよ!!
一旦落ち着け、憶測でものを語るのは良くない。もしかしたらメーカー側の不手際の可能性もある。それか、他の人と取り違えているかもしれない。とにかくゆかりさんに相談し...
すると突然ドンドンドンドン、と階段を急いで登ってくる音が聞こえた。きっとゆかりさんが制服を間違えたことに気づいて慌てているのだろう。
「ゆかりさーん、僕の制服のことなんですけ...ど。」
廊下に出ようとドアを開けると、ゆかりさんの姿はなかった。
「...ない...ない、ないっ、ない!なんで!?」
声のする方には女の子が立っていた。髪は金色、グレーのブラウスに深い緑のスカートを着た彼女は、僕と同い年くらいだろうか。なにやら青のショルダーバッグからものを探しているようだった。
「入れたはずなんだから...もう無理だから!!」
しかし彼女は、明らかに様子がおかしかった。
速いテンポで足踏みをして、右手をカバンに突っ込みながら、左手はスカートの上から股間を押さえていた。
「っ...!もう...ぅあっ...」
その刹那、彼女の張り詰めた顔が緩み、足踏みで刻んでいたリズムがピタりと止まった。
俺にもすぐにその理由が分かった。
「あぁ...んぅ...あぁぁ...」
彼女の深い緑のスカートは、左手で押さえていた部分から徐々に深さを増し、漆黒に染まった。
「んぐっ...うぅっ...ぐずっ..,」
やがて、その布は限界を迎え、水流がとてつもない勢いで床へ叩きつけられた。
彼女は全身の力が抜けて膝から崩れ落ち、床にぺたりと座り込んだ。
「うぅ...なんで...うぐぅっ...」
彼女が座り込むと水の流れは止まり、彼女の座ったところには、暖かな水たまりができていた。彼女の顔は赤く、涙が零れていた。
彼女が左を向くと目を大きく開け、こちらを指さした。
「あっ...あんたっ!見たわねっ!?」
その声は、床にある水たまりのように透き通った声だった。
男の娘の俺が気づいたらおもらしJCに囲まれてハーレムしていた件①〜僕と彼女と水たまり〜
おわり