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第46話 みんな集まれ アンドロイドだよ

◆機械少女の記憶


 私は、失敗作。

 青井株式会社で私は造られた。

 青井株式会社は大手企業の傘下で、人間の完全再現を目指して制作された。姉は別の会社で製造されていたので、直接的な面識はない。

 兵器として造られた姉、人間として造られた私。姉は兵器として活躍したけど、私は活躍することはなかった。


 私は製造後に、大手企業へ納入された。そこで私は要求スペックを満たしていないと断じられた。私を私たらしめる人格があまりにも薄弱。人間とは別のものだった。

 本来なら処分されリサイクルされるはずだった。だけど、青井株式会社の社員が、「人間と同じ思考ができるアンドロイドを処分するのは人道から外れているのではないか」と提言したみたい。そんなことがあり、取引先の企業には内緒で人間の世界に放流されることになった。


 その過程で、どこに逃がすべきか、という問題が出た。そこで人間以外を受け入れる『ジンガイ荘』に白羽の矢が立った。妖怪ばかりが住まうそこは、あっけなく私の存在を受け入れた。誰も私の存在を異端とすることなく、実に快適な生活を送ることができた。

 まぁ、姉「MF-1」が襲ってきたことを考えれば、製造を依頼してきた企業は私の存在を把握しており、わざと泳がせていたのだと知った。


 私はジンガイ荘で悠々自適な生活を送った。部屋に引きこもって、ネットの海に沈み、絵を描いて過ごしていた。それに対して誰も干渉しようとしなかった。それは、私にとっても都合がよかった。

 そんな中、唯ちゃんがジンガイ荘へやってきた。最初は距離があったけど、気付けばよく絡まれていた。冷却水を飲み入って出会うと何かと話をしてきた、

 疎ましいかった。放っておいて欲しかった。友だちとか連れてきて部屋の中に潜入されてじゃまだと思った。でも、気付けば唯ちゃんと話をするのが、楽しみになっていた。

 気がつけば、私の唯一の友達になっていた。



「全員いる?」


 ジンガイ荘の居間に、私服のおばさんがやってきた。その顔は見覚えがある。たしか、唯ちゃんのお母さんで、桜河定子さん。金色の毛皮をした狐を抱きかかえている。アレはもしかして陽子さん……かな?


「母上殿。連絡は無事届いたようですね。巨大化した鬼――何か、対抗策は?」

「無理ね。あの子、どうも夫に似たようで、私なんかよりよっぽど強いわ」


 調停者と定子さんが何か話し合っているけど、その様子は芳しくない。

 そんな中、泥で汚れた、雪絵さんと鎌田さんが居間に入ってきた。


「雪絵!?」

「巨大化した唯ちゃんなら、対抗策はあるわ」


 雪絵さんは登場から険しい顔をしている。いつものゆったりとした物腰ではなく、余裕をなくして焦っているように見える。実際、追い詰められているように見える。それに、巨大化って……?


「何か、いい策が? 是非、教えいただけないだろうか」


 調停者が真っ先に反応する。彼女の任務からしたら、当然のこと。今は明らかに非常事態だ。


「唯ちゃんは巨大化して妖力の消費が多くなってる。適度に暴れさせれば、元に戻るはず……にーちゃん、真・ジンガイゾー、スタンバイよ!」


「「「真・ジンガイゾー!?」」」


 居間にいる全員の声がハモった。


「なんスか、ジンガイゾーって、巨大ロボっスか?」

「俺と戦ったあのロボットか……」


 一部の人間からは良い反応が、


「え? 何それ……」

「今はふざけている場合では……」


 冗談としか通じない人もいる。


「ジンガイゾーを起動……させる……。『鬼の間』へ……」


 鬼の間、唯ちゃんの部屋に、その操縦席はある。

 全員、急いで「鬼の間」へと入る。部屋自体が狭いので、この人数だと手狭。だけど、文句は言ってられない。


「また、部屋が……写真が……」

「もう、リクルートスーツを買うお金はありませんよ!」


 格代さんと鎌田さんが過去の出来事を思い出し、顔面を蒼白させる。



「真・ジンガイゾー……起動……!!」


 私はジョイスティック式の操縦桿を唯ちゃんの勉強机に突き立てた。操縦桿を握り締めると、「鬼の間」が次第に上昇していく。窓から見える景色が広がっていく。

 各部屋は手足になって、不格好な人型になる。だけど、真のジンガイゾーはこんなものじゃない。

 そこからさらにスタイリッシュになっていく。八頭身のロボットへと変形して完全な人の形となる。どこからどもなく現れた頭部が鬼の間に突き刺さり、ジンガイゾーは完成する。


「ちょっと! 何よこれ!」

「こんなものを……酔狂としか思えません」


 定子さんと調停者はこの景色に呆れ果てている。他のみんなも同様だった。


「にーちゃん、唯ちゃんが迫ってる」


 はやる雪絵さんに私は頷いて肯定する。窓を見ると唯ちゃんがこちらを睨んでいるのが見えた。その姿を見ていると、気持ちが昂ってくる。こんなことは初めて。私はその感情に身をまかせる。


「唯ちゃぁーんッ! 正気に戻って! また一緒に話をしよーよぉー!」


 叫ぶのは初めてだった。こんなに気持ちがいいなんて知らなかった。次第に勇気がわき上がってくる。これが、私に足りなかった、感情なのかもしれない。


「今度はジンガイゾーが? どうして? どうして、私の邪魔をするのッ!」


 唯ちゃんはこちらを敵だと認識している。戦いは避けられない。ここで時間を稼いで、妖力を無駄に消費させれば、いつか動けなくなるはず。

 操縦桿を動かして、ジンガイゾーを使って唯ちゃんを抑え込む。けど、無理。力が違い過ぎる。繰り出された拳で、あっけなく後方へと吹き飛ばされる。「鬼の間」が激しく揺れ動き、立っていた人が倒れ込んでしまうほどだ。

 力が違う、攻撃を避けるスピードもない。こうなったら、飛び道具しかない。


「ジンガイビィィィームッ!」


 叫ぶ必要はないのに、こうするととても気持ちいい。そうしてから、操縦桿についているボタンを押す。

 新しいジンガイゾーの頭部から光線が発射される。これの威力は建物を軽く破壊するほどだけど、唯ちゃんは眩しそうにするだけで、ダメージはない。怒らせたのか、こちらをギッと睨んでくる。


「反撃するのかッ!」


 唯ちゃんは倒れたジンガイゾーに向けて蹴りを繰り出してくる。それは、全体重を乗せた踏みつけで、木造のジンガイゾーでは耐えれない。そこら中から割れた木片が飛び上がっている。

 このままだと、5分と持たずに潰されてしまう。


【唯を助けるのだろう? 私も力を貸そうではないか】


 聴覚データが直接流れ込んでくる。こんなことはあり得ない。一体、何が起こってる?


【私の舟と合体すれば、もっと出力が上がるだろう】


 意味が解らないけど、ここは助けを受けるべき。

 窓の端にUFOのような飛行物体が見えた。それはジンガイゾーの背後に回り込むと、背中にドッキングした。瞬間――ジンガイゾーのパワーが5倍も跳ね上がった。


「これなら、使える。真・ジンガイゾー・フルスロットル!!」


 踏み潰されていたジンガイゾーが一瞬にして抜け出す。次の瞬間には唯ちゃんの背後に立っていた。真・ジンガイゾーの形態のひとつで超高速で動くことができる。あまりの速さに分身まで作り出せる。この形態なら、時間稼ぎは楽勝。

 素早い動きで唯ちゃんを翻弄しつつ、攻撃を繰り返す。


「あの……全然効いていないっスよ?」

「どうなってんだ、アンドロイド!」


 蛇上と潮崎が言う通り、鬼の身体が硬すぎて全くダメージが入っていない。だけど、ダメージは必要ない。無駄な動きを誘って時間を稼げば――

 ドゴォッ!

 唯ちゃんの一撃が動力源である妖力リアクターを粉砕した。


「ああ……鬱陶しいなぁ……」


 唯ちゃんの忌々し気な声が聞こえる。

 動力を失ったジンガイゾーはあっけなく地に倒れた。私の力ではこの程度……。

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