序曲
統治者『凛』との戦いを決意し、人類の救世主になる!と決心した治だったが、はたして勝つ手立てはあるのだろうか?
階堂の隠れ家に治が着いたには二人とも用意が出来ていた。
「優斗くん・・・君は・・・一緒に来るつもりかい?」
中立の立場である優斗を階堂が無理に連れて行く筈はなく、ただ無言で立っている優斗に尋ねたが・・・・
「彼は・・・まだ決めかねているんだと思いますよ。どうしても一緒に行く!といって聞かないんですよ。能力を考えれば、自分の身は自分で守れるとは思うんですが・・・柴田さんの判断に任せます。」
階堂は淡々とした口調でそう言う。
しかしかなり危険な戦いになる事は間違いなく、ただの傍観者が無事で済むかどうかも想像もつかない、治はやさしく諭すように優斗に話す。
「ここで待っていてくれないかな・・・統治者は、本当に危険だ。君が自分の身を守れないとは思わないけど・・・大人として君を連れては行けないよ。」
「大丈夫です。絶対に迷惑はかけませんし、自分の身は守れます。まだ柴田さんにも凛にも見せていない能力もあるし・・・危険だったら離れますから・・・お願いします!」
それでもあまり気が進まない治ではあったが・・・決意の固そうな優斗をそれ以上説得できる自信はなかった。折れるように三人で出発する事になった。
統治者『凛』は、何と!香奈の家に「香奈」として普通に暮らしているという。
両親はもともと仕事で帰りも遅く、まじかで香奈と凛の入れ替わった姿も今までに見ているので、特別不審に思う事もないのだと、階堂は言うが・・・はたしてそうなのだろうか?
香奈には何か闇の部分があるように思えていた治は、両親の娘に対する無関心さも、多重人格が生まれた背景なのでは?と考えるようになった。
香奈の実家がある最寄駅につき、携帯のウォーキングナビを見ながら香奈の家を目指す。
気分は気が進まない遠足のような、なんとも思い空気だった。
しばらく進んだところで大きなショッピングセンターにさしかかる・・・・
何か、おかしい・・・空気が重いというか、とにかく治は胸がざわざわする気がした。
となりの優斗、そして後を歩く階堂もなにか感じたらしい、一斉に目があった。
「・・・おかしいよな?」
「確かに・・・あまりいい気持ちではありませんね・・・」
そう言いあった途端に昼間だというのに・・・まるでネオンサインのようにあたりが緑色に染まった。まぶしいわけでもなく、ほんの一瞬の間ではあるが、空から地面まで全てが間緑になったのだ!
「・・・な、なんだ?今の・・・」
そう階堂と優斗に聞いた治だが・・・・すぐに何が起きたか理解した。
さしかかったショッピングセンター全体が、緑色の・・・まるでアメーバーのような物体に覆われていた。
・・・・緑色のアメーバー?!どこかで見たような・・・