再会・・・
高倉との話をつけて何とか化け物退治だけは共闘する約束をとりつける治だが、統治者の正体はいまだ不明だった。
高倉と一応の休戦協定を約束した治は、すぐに階堂のまつ隠れ家に戻り香奈も交えて報告とこれからすべき事を話し合った。
「・・・なるほど・・・現状確認させて貰うと、組織に同調する事はない。しかし、例の化け物が出た場合だけは、高倉も協力・・・といか一緒に駆除活動する。と、こういう事ですね?」
「ああ、そういう事だ。」
「信用できるんですか?高倉・・・」
香奈が不審感をあらわにした。
「香奈ちゃん・・・信用するもしないもないんだよ・・・あれが出てきたら・・・高倉がいないとお手上げなんだ・・・」
「そうかも知れませんけど・・・」
「香奈さん・・・私も信用は出来ません・・・でも、柴田さんの言うとおり、それしかないと思いますよ。」
「・・・・・・判りました。ところで?統治者ってどんな人なのか情報は入ったんですか?」
香奈が治に向かって質問する・・・・が。
「ゴメン・・・・そこはやっぱり口が硬いんだよ・・・結局なんの情報も受ける事が出来なかった。」
「とにかく、私はここに籠って統治者の情報、それから例の化け物が出現した場合すぐに知らせる為に監視を続けていますから、お二人は出来るだけ通常の生活を続けて下さい。私はしばらく働かなくても食っていけるくらいの貯えはありますから、連載も現状断っていますので、しばらくはここにいます。」
ネットカフェから出た治は久し振りに街に出てみよう。そう思い繁華街に歩いて行った。
『ちょっとお姉さんのいる店にでも言っちゃおうかな・・・』
なんとも緊張感のたりない「救世主」である・・・
その手の店が並ぶ通りまで来た時に突然叫び声が聞こえる
「ドロボー!!誰か?!誰か捕まえてー!!」
女性の声が響いた後に目の前を二人乗りのバイクが通過する。見たところ黒づくめ(黒いヘルメット、黒い革の上下)の二人組だったが・・・後に乗っている方が持っているのは、明らかに女性もののブランド物のバッグであった。
『ひったくりかぁ・・・』
少し迷ったが、あたりは暗く人目に付く事もなかろうと・・・・加速した。
振り返ると10メートル程先にバイクはいた。加速したままぶっ飛ばしてもいいのだが、死なれでもするとめんどくさい事になる。治はまずバイクの後輪にバッグから出した鋼鉄製の警棒を挟み(毎回武器に困るので階堂に頼み手に入れて貰った。)その上で後輪を持ち上げて、加速を解いた。
ブウオーン、キーンッガキッ・・・ウオンオン
バイクはいきなり急停車をかけられて、二人とも前方に回転しながら飛んで行った。
治は二人が地面に落ちるのを確認してからバイクを横に投げ捨てた。
「・・・・痛ッ・・・・」
対して怪我はしていない様子で二人は起き上った。
「イッテー・・・・おい、大丈夫か?」
一人がもう一人に声をかける。
「ああ、なんだよ、なんか避けたのか?急ブレーキとか・・・」
「ちげーよ、ブレーキなんか掛けてねえって・・・・・おい!」
そこまで会話してその男はバイクの後輪に何か挟まっている事を確認。その上で近くに立っている治に向かって声をかけた。
「おい・・・テメー・・・まさかこれやってくれたのお前か?ああ?」
「・・・・だったらどうするんだ?ひったくりのにいちゃん?」
「なっ・・・てめえ・・・・」
もう一人の男も立ち上がり治に向かって近づいてきた。
「なんだ?この野郎がなんかやったのか?」
「それ見てみろ!」
「うわ!なんだこいつ?」
「それにこいつなんか見てたらしいし・・・・ボコってバイク代とろうぜ!」
「・・・へ〜・・・おまえ、めんどくせー事してくれたな!」
そういうなり一人は治に殴りかかってくる。かなり早い。初弾はかわせずに鼻っ柱に受けてしまった。おそらくボクシングのジャブのようだ。
「もうボコるって決めたから顔みせてもいいよな!」
もう一人がヘルメットを脱ぐ。若い・・・おそらく十代であろう。
「おめー死んだぞ!そいつはボクシング本格的にやってるし、俺も空手で段もちだからな・・・くくく。」
品のない笑い顔である。格闘技の経験者だというならば・・・多少本気を出しても死なないであろう(?)ほんの一瞬加速してボクシングの方の後ろにまわり延髄あたりに”トン”と手套を入れる。声も出さずにその場で昏倒した。
「おい!!お前今何した?」
空手野郎がなにか騒いでいる間に倒れた方のヘルメットを脱がす・・・・やはり十代であろう若い顔がそこにある。
「なにシカトしてんだよ!!」
振り向くと顔に回し蹴りが飛んできていた。手に持っているヘルメットで脚をはたく、まさかの反撃にバランスを崩しひるんだところを踏みこみ、顎にヘルメットで”コツン”と一撃。
やはりその場で気絶する。
まず警棒を回収してバッグになおし、二人ともズボンにベルトをしていたので後ろ手に縛りあげる。近くに落ちていた盗難品であろうヴィトンのバッグを拾い上げてから来た道を引き返す。
そこには警官に泣きついている女性がいた。
「あの・・・・」
警官と大声を張り上げている女性に割り込み声をかける。
二人ともキョトンとした顔でこちらを向く
「ひったくりでしょ?バッグの」
そう言って女性に見せると
「あ!あたしのバッグ!!」
「やっぱり・・・・ちょっと先で事故って転んでましたよ・・・多分犯人・・・」
そう言うと警官の一人が、もう一人に
「確認してきます!」
そういって走って行った。
「ありがとうございます・・・・・って治?」
「・・・・・・・・マリ?マリなのか?」
三年前に治を不幸のどん底に落としていった、元カノのマリとの再会である。
まさかの再会・・・・マリが判らない方は第一話をご覧ください。