死闘
どうやら雷撃にやられてあえなくダウンの治。
どうやって戦うのだろうか?
治の意識が戻った時、近くにいたのは。
小学生ぐらいの男の子だった・・・・・そう、たしか重力マスターの優斗という名前だった筈・・・
「気がつきましたか?」
「・・・・ああ、えっと・・・」
「今、雷撃使いのミョンさんと、風使いの人と・・・多分、闇使いなのかなぁ・・・戦ってます。」
「え?・・・そうなの?!あ、イテッ!!」
ガバッと起き上ると、背中に痛みが走る。どうやらしたたかに打ちつけたようだ・・・
「火傷はもう治ったみたいですけど・・・無理しない方が・・・」
「火傷?・・・そうか・・・俺、感電して気絶したんだな。」
「はい、ものすごい音がして・・・僕は隣の部屋にいたんですけど・・・黒こげになってましたよ・・・でも3分ぐらいかな?どんどん治ってきて・・・あなたやっぱりすごいんですね!」
「すごいって・・・ところで、三人はいったいどこで?」
「あなたがやられた瞬間に、ミョンさんが追い打ちをかけにやってきました。でも・・・・どうしても今回の作戦は納得がいかなかったので・・・・僕が邪魔させてもらいました。その間に闇使いさんが、風使いのお姉さんを助けて、二対一になりました。」
そう優斗が言った途端にドアがはじけて飛んできた。
「うわっ!!」
二人して飛び退く・・・・・・・優斗と目があい、訪ねる。
「どうして助けてくれたんだい?考え方が変わった・・・・とか。」
「いえ・・・そんな事はありません。最終的には人類は滅びたほうがこの世界の為です。」
「じゃあ・・・君は俺と戦うのかい?」
「・・・・いいえ!、今日は戦いません。人質を取るなんて・・・聞いていなかったし。味方は出来ませんけど・・・救出の邪魔はしません。」
「そうか・・・・ありがとう・・・で、いいのかな?」
入るべきか、入らざるべきか・・・・・・部屋の前で悩んでいると・・・
「柴田さん!約束が違いますよ!!はやく雷撃を抑えて下さい。とどめは私が刺しますから!!」
声だけが聞こえる。階堂がせかしにきたようだ。
「判ってる。」
さて・・・どうしたものか・・・・奥の手を使えば、あるいは簡単にしとめられるかもしれないが、まだ組織には手の内をさらしたくないのも事実だ。
考えがまとまらない。
「治さん!!しゃがんで!!」
香奈の声がして・・・反射的に指示通りしゃがんだ。
ズパッ!!ズバズバッ!!!
ドアのまわりの壁に切り込みがはいり、そのカマイタチのような衝撃波は、後の壁も切り裂いていった。
『あぶね〜・・・・・なんて威力だ・・・』
とにかく中に入らないと始まらない。もう一回黒こげになる覚悟で、治は雷撃使いミョンに向き合う。
「話し合い・・・・で解決なんて段じゃあ・・・ないよね?」
黒いスーツにロン毛・・・・髪の毛はまっくろ・・・・無口そうな雰囲気。そのミョンの右手はなんと言うか・・・・肘から先にかけて、バチバチと火花が散っている。おそらく放電しているのだろう。その右手を軽くこちらに向けた。
ドンッ!!!!
「うぐっ!!」
それだけで弾き飛ばされそうになる。近寄らねばなにも出来ない。治から向かって左手の方向にドレッサーがあり、その前にイス・・・・一メートル離れてソファーセットがある。しかもこちら側にシングルシートが二つ、向こう側にダブルシートの配置・・・・願ったりかなったりである。
もう一度ミョンがこちらに右手をかざした瞬間を狙い、ドレッサーのイスを左手でミョンに払って飛ばした。ミョンは構えていた右手から雷撃を飛ばし、一瞬でイスは黒こげである。
しかし、治はその瞬間を待っていた。その時にはソファーの一つを、ミョンに蹴り飛ばしていた。一瞬驚いた顔になったミョンだが・・・・落ち着いて今度は左手から雷撃を飛ばす。
ボンッ!!と爆発音がしてソファーも真っ黒になり床に落ちたが、その時に香奈がミョンの足元を狙ってカマイタチが飛ぶ。読んでいたようにミョンは飛び上りカマイタチを避ける。
しかし・・・・飛んだ瞬間に衝撃とともにミョンは壁に叩きつけられる。
治が狙い澄ましてもう一度けり放ったソファーに当たった為だ。
壁に叩きつけられた瞬間にミョンは雷撃を右手に溜め始めていた・・・・・が、その時には、階堂に身体の自由を奪われていて身動きが取れない。
治が猛然とダッシュしてミョンの顔に両足をめり込ませた。ドロップキックというやつだ。
グシャッ!!!完全に頭蓋骨を粉砕した音がした。
声も出せずに絶命したミョンの身体は・・・・黒い雨雲のような霧状の物体に変化して、バチバチとはじけて・・・・・消えていった。
警察沙汰になってもいい訳が出来ない為、そのまま非常口から階段で逃げるように降りた。
香奈は途中の階から飛び降りてしまう、滑空して少し離れたパーキングに降り立ったようだ。空が飛べない二人はとにかく転げ落ちるように階段を下りて行く。
「お手伝いしましょうか?」
階段の横をまるで透明なエレベーターにでも乗っているように優斗がゆっくり下りてきた。
二人して顔を見合わして・・・・・
『お願いします!!』
しばらく歩いて4人で加速の解除をして顔を合わせる。
「なあ、優斗君。もう一度聞くが・・・・俺達と一緒に戦わないか?」
「・・・・僕は、今回のやり方が気に食わなかっただけで、組織とともに歩いて行く決心は変わりません。ですから・・・次に会った時は本気で能力を使います。」
「しかし・・・今回の事で君は裏切ってしまった事にはならないのかい?」
「・・・いえ、僕はもともと今回彼らと行動を共にしていた訳ではありません。組織のリーダーに無断で今回の作戦指示した者に警告を与えに来ただけなんです。だから・・・どちらかといえば裏切り者はあなたがたにやられた者達です。まあ逃げおおせた奴もいるようですが。」
その幼さとは対照的に、ぞっとするほど冷徹にそう言い放つと・・・・
「とにかく・・・なれ合いはしませんから。」
そう言って姿を消した。加速して戻ったのだろう。
「追わなくてもいいの?」
香奈がそう聞いてきたが・・・・治も階堂はゆっくり首を振った。
奥の手・・・・なんとか温存できたが、もう限界の様である。重力マスターの優斗にすら全く及ばないのではないだろうか・・・・