闇の執行者
新たに仲間に加わった京極・・・・
一人になった治を尾行する影が・・・・
治と京極と香奈・・・・・
『Allends』に対抗すべき勢力と言えるグループが一応結成された。
果たして強大な組織の動きを止めて人間による「救世主」としての道は開けるのだろうか?
京極とアドレスを交換して、いつでも連絡が取れるようにした後、一応解散とし、その後で治は改めて香奈と落ち合った。
「どう思う?」
「どうって・・・・あたしはいい人だと思いましたけど・・・なにか?」
「何となく、軽すぎる・・・・というか、俺は・・・もしかしたら組織の罠じゃないかと・・」
それとなく疑っている事を香奈に話してみた。
「えー?・・・まぁたしかに軽ーいノリの方ではありましたねぇ・・・でも・・・」
「いや、完全に決めつけてる訳じゃあないんだよ。それに彼を疑うとなると、俺達だってそんなに付き合いが古いって訳でもないし・・・・・うん、とりあえず仲間って事で、でも、気を許し過ぎてはいけないよ!」
「はい!大丈夫ですよ・・・・あんなにかっこいいのに、組織の回し者な訳ないです♪・・・」
『・・・・やっぱり・・・・冷静に判断できてないな・・・こりゃ・・・』
もうあたりはうす暗くなっていた。香奈とも別れを告げ家路に、いや玲子宅への道を急ぐ治である。
電車を降り、駅からの道のりで、視線を感じ始めた。いつもと違う商店街を抜けてみたが・・・
やはり付けられている。意識を集中すると・・・・・・キーン・・・・キーン・・能力者の様である。そうやら一人になるのを待って接触してきたらしい。相手は一人のようなので様子を見て見る事にした。人通りの少ない方へ誘導する。
周りに一般人がいない事を確認した瞬間に治は加速した。
すぐに振り返り尾行者の確認をしに行くが・・・・・相手もすぐに加速したようだ。どこにも見つけられない。街灯もかなり暗い場所で対峙してしまった事に後悔したが今更仕切り直しをさせてくれる相手ではないだろう。目を凝らして見るがどうしても見つけられなかった。
「私を探しているんですよね?」
ビクッッ・・・と、反応した治だが・・・・相手の姿はまだ確認できない。
「あなたがイレギュラーの・・・・柴田治さんですね?」
声は続く・・・・見えない相手との会話は否が応でも緊張感が高まっていく。
「そうだ・・・・自己紹介は相手の姿を見てからのほうが・・・・気分がいいと思うんだが・・」
「申し訳ありません・・・・ですが、あなたを信用している訳ではないので、まだ顔を晒すつもりはありません。」
声の感じでは・・・・そう若い雰囲気はない。・・・が相変わらずどこから声がするのかさえ判らない。
「それはこちらもそうだ・・・あんたは能力者だという事は判っている。当然『Allends』のメンバーという事で間違いはないんだよな?」
「それも・・・今はお答えできません。すみません。」
「・・・・じゃあ何故俺に接触してきたんだ?俺の・・・イレギュラーの確認の為か?」
「それもあります。どんな人なんだろう?とは最初から思っていましたから・・・」
「他に何の用があるって言うんだ?」
しばらく間が空いた。
「とりあえず・・・・手合わせ願いますか・・・」
そう声がした瞬間に、治の周りの空気の温度が幾分か下がったような気がした。
治の胸の鼓動は危険を警告した。”ヤバイ”どうやら相手の能力に入っているようだ。
とにかく接近戦に持ち込むしか、今のところ治には方法はない。素早くその場から飛びのいた。
立ち止まらずに右に左にステップを踏みながら相手の気配を探る・・・・しかし、この辺りには誰もいないかのような錯覚に陥る。
ガツンッ・・・・
「っぐ!」
どこからか顔に打撃を受けた・・・・しかしやはりなんの気配も感じない。
バシーッ・・・・
今度は脇腹に打撃・・・・同じくいきなりで、なんの感知も出来ない。
「そんなものなんですか?イレギュラーというのは・・・」
そう相手の声がした瞬間に治の頭の横をなにか光るもの・・・光線状の放物線が通る。
バシーン!!
「ッググ!」
ちょど治の斜め前、の何もなかった筈の場所でうずくまるもの・・・・男性の姿が見えた。
しかしその男は次々と流れてくる光線状のものを避けながら、
「残念ながら邪魔が入りました。あなたとのお話は別の機会にしましょう。」
「おい!待てよ!お前いったい誰なんだ!!」
「闇の執行者・・・階堂です。以後お見知り置きを!」
またもや気配が完全に消えてなくなった。
想像はついていたが・・・・・通りの向こうから現れたのは・・・・京極だった。
「助かったよ・・・」
「いえ・・・あれは?」
「闇の執行者と名乗っていたな。知っているのか?」
「僕と対をなす能力者です。実際に会うのは初めてですが・・・・」
「対?」
「はい、僕は正確には『光の執行者』という能力者なんです。まあ、誰かに聞いたわけじゃなく・・・力が使えるようになった時に自然と頭のなかに入ってきた記憶ですけどね。」
「そういえば、さっき闇を葬れるのは光である君だけって言ってたよな。」
「はい、その筈なんですけど・・・・どうすれば葬れるのか、いまだに判らないんです。さっきも言いましたけど、僕は単体で戦闘だけする役割じゃないみたいなので・・・」
「ところで・・・後を付けるっていうのは・・・趣味が悪いんじゃないか?」
「すみません、能力者が来ているのは判ってたんですけど・・・教えると相手に感ずかれるんじゃないかと・・・だまってさらに後ろをついて来てました。」
「まあ、今回は助けられたみたいだから・・・・」
「いえ・・・ところで柴田さん・・・あんなに敵が近くにいたのに・・・どうしてなにも反撃しなかったんですか?」
「・・・・近くに?おれには気配すら感じられなかったんだよ。君からは見えていたのかい?」
「はい・・・ひょっとすると、なにか目の前の相手にしか効かない能力なのかも知れませんね・・・」
「ああ、そうかもな・・・じゃ、もう帰るから・・・もうつけないでくれよ?」
「あはは・・もう能力者はいませんから・・・僕も帰らせてもらいます。」
もう一度別れを告げると二人は加速を解除して反対方向に歩きだす。
しかし・・・・5分もしないうちに、また例の気温が下がる気配がした。すぐに加速に入るが、またもや相手を見失っている。
「くそ!」
「落ち着いて下さい。まだ話さなければいけない事を話してません!」
「待ち伏せしておいて・・・なにが落ち着けだ!」
そう腹立たしく叫ぶ治だったが・・・今度は助けを期待できそうもない・・・何とか打撃を受ける瞬間に捕まえるしか手はない・・・・めを閉じて集中する。
何秒経過したのであろうか・・・いきなりポンと治は肩に手を置かれる。
『今だ!!』ドン!!
治はその手を掴み背負い投げの要領で、地面に相手を転がした。
「ううっ・・・待って下さい。」
「何を待つんだ。」
そこには恐らく治と同年代であろう・・・・階堂と名乗った男が尻もちを付いていた。立ちあがる相手をゆっくり身構えながら観察する。身長は治より若干高いように見える。
いつ相手が消えてもいいように治は掴んだ腕をまだ離さずに、袖をしぼって持っている。
「あー・・・痛い・・・さっき邪魔が入らなければ話せたんですが・・・光の執行者がついて来てるとは思わなかったので・・・」
「・・・で?話しってのは??また、組織の勧誘じゃあないだろうな?」
「何をいってるんですか?僕は組織に入ってませんよ?勧誘なんてする訳がないじゃないですか・・・」
「なんだって?しかし・・・組織の高倉という男は、おれを入れて3人だけがまだ組織に入っていないと・・・」
「そうです・・・あなたと私、そして風の能力者の女性だけが、組織の勧誘を断ったんです。」
「な、何だって?!」
階堂が言っている事は本当なのか?
京極と階堂・・・・どちらの言い分が正しいのか?