表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一つの物語【断章】  作者: 世界の一つ
ある秋のパーティータイム
8/14

ある秋のパーティータイム・当日編

ーーホーリーヘヴン・メインホールーー


「続いては、マスターからのご挨拶と開催宣言です。マスター、宜しくお願い致します」


「諸君、今回はヘヴンズパーティーに参加してくれてありがとう。この機会にーー」


あれから5日経ち、各隊の出し物も無事に決まり僕たちは豪華にセットされたメインホールでマスターの開催宣言を聞いている。

その中には東西南北の代表者やその他の関係者も混じっている、皆んな制服ではなくフォーマルな服装をしており、僕も今回は致し方なくそれにのっとた服装で参加している……着慣れないな……


「それでは、乾杯の挨拶を我が本部代表、リュウイチ・ナルミ君にしてもらう……さあ、リュウイチ君、こちらに……フフ」


はっ??


「彼があの特務執政官のリュウイチ隊長か!」


「素敵な方……後でご挨拶しないと」


「なるほど、確かに紳士的なお姿をされているな」


周りにいた者たちが一斉に僕の方へ目線を向けた……ごちゃごちゃとやかましいやつらだな、そもそも乾杯の挨拶なんて聞いてないぞ


「……なんだか不愉快ね、兄さんは私だけのものなのに」


「あら?いつからそうなったのかしら?リュウイチは"私"のものよ」


「恥ずかしい事を言うんじゃない! はぁ、仕方ない……」


僕はユマリやみぃ姉のやり取りを一蹴し、観念して壇へ向かって歩き出した。

面倒だな……


「マスター、ひとつ貸しですよ」


「はは、覚えておくよ」


僕はマスターからマイクを受け取り、それっぽい事を口にして早急に乾杯の挨拶を終えた。


一同

『乾杯!!』


僕は元いた場所に戻ると、カイがいつもの爽やかスマイルを浮かべながら近づいてきた。


「お疲れさん、リュウイチ!」


「社交的で素敵な挨拶でしたよ、リュウイチ様☆」


カイはともかく、レイはどことなく悪意を感じる……まあいい、とりあえずたこ焼きがあるかどうか探してみよう。


「僕はたこ焼きを探してくる、お前たちも適当に満喫して来い」


「は〜い!あたしはりゅうくんと一緒に探索しまぁす♪」


「あ、私も行きまーす!♪」


……やかましそうだ


「私も……って言いたいところだけど、自部隊でやってる出店の手伝いしなきゃいけないのよね……あんた達、リュウイチに変な事したらダメだからね!」


「は〜い♪」

「はーい♪」


多分分かってないな、こいつらは……


「兄さん、私もついて行けないけどナンパされないように気をつけてね」


どう気をつければ良いんだよ、既に多数の目線を感じるんだが?


「兄貴!俺もお供させてもらいます!たこ焼きを全力で探します!」


暑苦しいやつだな……って一人一人にツッコミを入れていたらキリがないし面倒だ、さっさと探しに行くか……と、その前に


「僕はたこ焼きを探し終えたら自部隊の手伝いに行かないといけないから、あまり長く歩き回れないからな」


「えぇ!?せっかくりゅうくんのためにこの衣装着てきたのにすぐバイバイしなきゃいけないのぉ!?」


「まあまあ、時間はたっぷりあるんですから、リュウイチ隊長の仕事が終わってからまたご一緒すれば良いじゃないですか」


キラがそう言ってサツキたちを宥めたが、サツキたちはジトっとした目でキラを威圧している。

僕の苦労が少しは分かるだろ?キラ。


「まあ、先のことはその時に決めるとして、僕はそろそろ行くぞ。またな」


「あぁ!!置いて行かないでよーりゅういちお兄ちゃん!」


「人気者は辛いわね、リュウイチ」


やかましいぞ、ミラー

僕は軽く手を振りメインホールを後にした。


ーー


ーー


ポン

『30階です』


エレベーターが開き、僕は自分の執務室に向かう。

サツキとアカリちゃんは自部隊の挨拶に行かなきゃいけないことになり、結局すぐに別れる事になった。

自分のスケジュールくらい把握しておけよと言いたかったが、我慢しておいてやろう。


「あ、リュウイチ様!お疲れ様です!」


「ご苦労……しかし元気だな、アンナ。顔がいきいきしてるぞ」


「そ、そうですか? お恥ずかしい限りです……」


「お疲れ様ですリュウイチ隊長! ……って、この匂い……こんな時でもたこ焼きですか?」


「うふふ、隊長らしいですね!」


たこ焼きは僕の生命エネルギーみたいなものだからな、これだけは外せない。


「言ってろよ……それにしてもすごい数の客だな、なんでこんなにいるんだ?」


「ほとんどのお客様は女性です……その内の何名かはリュウイチ様にお会いしに来たとか言ってましたよ」


「僕に?嬉しい繁盛なんだか、大変な繁盛なんだか……」


「リュウイチ様、予定通り裏方でお料理作りに専念しますか?それとも皆様のご期待に応えるため接客のほうに専念致しますか?」


どうするかな……接客は苦手だから裏方に専念しようと思っていたんだが、この数だと接客側も人員が不足してそうだ


「……仕方ない、2時間の内1時間は裏方で料理の方にまわって、残りの1時間は接客のほうにまわろう」


「了解しました!リュウイチ様用のエプロンはこちらでございます、ジャケットとネクタイは私がお預かり致しますね」


僕はアンナにジャケットとネクタイを手渡すと同時に自前のエプロンを受け取る……まさかこんな所で我が家のエプロンを使う日がこようとは……さすがに予想していなかったな。


「あ!リュウイチ様よ!リュウイチ様ー!」


「人気者は辛いですねぇ、隊長!」


本日二度目なんだが?


「やかましい、お前もさっさと仕事に戻れ。アンナ、列の管理頼むぞ」


「了解しました!」

「了解致しました!」


さて……えっと……お手製焼きそばが5人分と手作りクッキーが8人分でーー……


ーー


ーー


「ケーキとクッキーは僕が作るから、お前たちは他の方を頼む」


『了解です!』


僕は生クリームをかき混ぜながら部下たちに指示を出した。もちろんちゃんとマスクはしている、簡易厨房だから熱気が酷い。マスクをしてるから尚更そう感じる……暑いのは苦手なんだよな、人の性格的にも自然の気温的にも……


「にしても流石隊長ですね、素晴らしい手際の良さです」


おだてても木には登らないぞ。



ーー



ーー




「リュウイチ隊長、1時間経ちましたよ!」


「はいはい……残念だがタイムアップのようだ。お前たち、練習の成果を発揮しろよ!客足はまだまだ減らないみたいだからな」


「頑張りなさいよ男性陣!良いところ見せてよねぇ!」


良い掛け声だ、みぃ姉も言っていたが確かに学生時代に戻った気分になるな。

僕はそう思いながら厨房を出て、接客をしていた部下の一人と交代した。


「お疲れ様です、リュウイチ隊長!申し訳ございませんが、あとは宜しくお願い致します」


「ああ、せっかくの機会だからお前もパーティーを楽しんでこい」


「ありがとうございます」と、元気よく返事をして隊員が廊下へと走り去って行った。僕は接客にまわり客の元へと歩き出す。


「わぁ!本当に本物のリュウイチ様だ!来てよかったぁ!」


「はいはい……浮かれるのは構わないがまず注文を言え」


「あ、騒いじゃってごめんなさい……じゃあ焼きそば二つお願いします!」


「焼きそば二つだな、少し時間かかるかもしれないからおとなしく待っててくれよ?」


『はーい!』


ーー


ーー


ーー


さて、次の客だな……ん?あいつは……


「フュームじゃないか、会うのは久しぶりだな」


「ああ、元気そうだな。それにだいぶ繁盛してるみたいじゃないか」


この客の数、20人以上は居る中で一際目立つ人物がいた。それがフュームである。

一応パーティードレスを身にまとっているが、2本の大剣がかなり異彩を放っていて美しいとは思えない


「まあな、そこそこありがたい繁盛だよ。それにしてもまさかお前がここへ来るとは思わなかったぞ」


「メインホールで目にしたんだが、途中で見失ってしまってな。他の隊員達から聞き出してここへ赴いたのだ」


聞き出してって……せめて尋ねたとか訊いたとか言えよ。


「そうかい、で?ご注文はお決まりかな?」


「特盛のお好み焼きを20人分……と言いたいところだが、他の者に迷惑をかけてしまいそうだから、3人分で良い」


それでも多いだろ、特盛の意味分かってるか?


「特盛のお好み焼きだな、時間かかるかもしれないからそこは多めにみろよ」


「フッ……良いだろう、お前のその姿に免じて我慢してやる」


あん?どういう意味だ?

と、疑問が浮かんだが押し寄せる客に対応するため、その疑問を解消できないまま他の客の接客を始める事にした。


「よく来たな、注文は?」


「リュウイチ隊長!あの方ってバーネルの女王陛下ですよね?あの方とどんな関係なんですか?!」


なんだやぶからぼうに……僕とフュームの会話を見ていた客の一人がそう問いかけてきた。注文を言え、注文を


「……ただの戦友だよ、それより注文は?」


「あぁ、良かった……!あ、私はクッキーセットを一つお願いします!」


「私はチョコレートケーキ一つお願いします」


「クッキーセットとチョコレートケーキだな、混んでいるから少し時間かかるのは勘弁しろよ」


『はい!♡』


はぁ……いつになったら落ち着くんだか……

僕は出入口付近とガラス張りになっている壁の方を見て、エレベーター付近まで混雑している様子が視界に入り、少しため息が出てしまった。


「隊長、悪い情報です……フロアの接客始めて約30分ですが、先程より客足が増えて来ています……」


「ここへ来たお客さんが、"リュウイチ隊長が接客してくれた"という情報が流れたみたいで、それを聞いたお客さんがどんどん集まって来てるみたいです……倍近く……」


「……総員、聞こえるか?帰る客に現情報をリークしないよう口止めしろ」


『り、了解しました』


「これで落ち着けば良いんですが……人気者は辛いですね、隊長……」


三度目だ……


ーー


ーー


ーー





次回は【あなたの物語〜分岐ポイント】です


該当キャラは以下の通りです


ミツキ、サツキ、ユマリ、アカリ、フューム


以上、5名の分岐ストーリーになります。

お好みのキャラを選択し、あなたの物語をお楽しみ下さい。


1、ある秋のパーティータイム・ミツキ編


2、ある秋のパーティータイム・サツキ編


3、ある秋のパーティータイム・ユマリ編


4、ある秋のパーティータイム・アカリ編


5、ある秋のパーティータイム・フューム編


6、ある秋のパーティータイム・フィナーレ編



各章は10月25日に同時投稿予定です、お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ