ある秋のパーティータイム・フィナーレ編
「おかえりなさい、お兄ちゃん!」
「ただいま、ミナト」
「たっだいまぁ!ミナトちゃん」
「おかえりなさい、サツキお姉さん!」
ミナト、おかえりなさいはおかしいぞ。
サツキに続いて、みぃ姉達がどんどん自宅へ上がり込んできた……総勢12人、かなりの団体だ。
よくもまあ、こんなに集まるよな……しかも人の家に……
「おじゃましまーす!と、こんばんは、ミナトちゃん!」
「こんばんはです!カイさんもレイさんもお仕事お疲れ様でした!」
「ありがとうございますミナトさん、お邪魔させていただきます」
少し前までカイやレイたちを怖がっていたのに、いつの間に歓迎するくらい慣れたんだ……成長を喜ぶべきか、警戒を強めるべきなのだろうか?
「あら、結構掃除されてるのね。埃は……そんなに無いみたい、なかなか清潔感のある家なのね」
典型的な姑発言だな、掃除を欠かせないで良かったかもな。
「ほお、ここがリュウイチの根城か……悪くない」
フューム、言い方が微妙に違ってるぞ。根城ってなんだ、根城って
「とりあえず、リビングまで入れ。玄関先でごった返すと近所に迷惑がかかるからな」
……さて、料理の準備をするか
次々と入ってくる客人たち全員がリビングへと移動し終わり、僕はキッチンで予め下準備しておいた料理をあれこれしている時、ユマリとキラが僕の元へ近づいてきた。
「兄さん、私も手伝うわ」
「良かったら僕にも何か手伝わせて下さい、ただ歓迎して頂くだけでは申し訳ないので」
「ならそうしてもらおう、さっそくだがキラは冷蔵庫からサラダを出してテーブルに運べ。ユマリはそこにある鍋でパスタを茹でてくれ」
「了解」
「了解です!」
キラとユマリにそう指示を出すと、二人はテキパキと動きだした。それと同時にミナトとアカリちゃんが歩み寄ってきた。
「お兄ちゃん、ミナトも手伝います!」
「私も!何かする事ない??」
ふむ、これで少しは負担が減りそうだ。
僕はミナト達に飲み物を運ぶよう声をかけ、二人もまた慣れた動きでお盆に乗せた飲み物をテーブルへと運ぶ。
「りゅういちお兄ちゃんは何飲む?運んでおいてあげるよ!」
「なら、お茶を貰おう。氷は入れなくていい」
僕がそう言うと、アカリちゃんは「はーい!」と元気声で返事をし、僕の席に僕専用のコップにお茶を入れる。
「はっ!!アカリさんに先を越されてしまいました!……お兄ちゃん、ミナトにも何か手伝わせて下さい!」
妹の競争意識が働いたのだろうか、ミナトはアカリちゃんに負けずと指示を仰いできた。
うむ、さすが僕の妹だ
「りゅうく~ん、このお茶飲んで良い?♪」
「だ、ダメですよサツキ先輩!それはりゅういちお兄ちゃんの分なんですから!飲むなら他のを!」
「そうよサツキ、変な事言ってないであんたはジュースでも飲んでなさい」
「兄貴!俺もなんか手伝いますよ!」
「キラ、私にも野菜サラダちょうだい!」
「リュウイチ、そっちが終わったら乾杯しようぜ。俺はそれまで待っている」
「リョウマに賛同する。リュウイチ、早くこっちに来い」
全く、騒がしいやつらだな……
ーー
ーー
ーー
料理を一通り終わらせ、テーブルには様々な料理で埋め尽くされている。こんなに大人数に料理を作ったのは初めてだ、流石にこれくらいになるか……
僕はリビングへ移動し、自分の席に座ると隣に座っているみぃ姉がコップを持たせて何かを促した……またか……
「……はぁ、じゃあお前たち自分のコップを持て……各自色々とご苦労だったな。皆んなの努力を祝して、乾杯」
『乾杯!!』
なんで僕がこんな事を……普通こういうの事は言い出しっぺがやるもんじゃないか?
その当の本人はガブガブと呑気に飲んでるし
「はい、リュウイチ。サラダとピザよ」
「どうも」
「兄さん、コップを……お茶のおかわり入れてあげる」
「ああ」
「りゅうくんこれ美味しいよ!今お皿に乗せてきてあげる♪ 」
「一応感謝する」
……なんか、落ち着いて食事ができないな。
「ふふ、リュウイチ君、人気者は辛い……だね!」
はぁ……今日一日で何回言われたか……
「良いじゃねぇか、みんなお前を慕ってるって事だ。素直に喜べよ」
「そうそう!素直になりなよりゅうくん♪ トモカちゃんと、は~ちゃんはもう素敵な相方がいるけど、それ以外の人はりゅうくんラブなんだから、喜んで良いんだよ~……じつはあたしもりゅうくんの事が大好きなんだ……きゃ~言っちゃったぁ!!♪」
何を言ってるんだお前は
「……何気にフューム様も人数に入れられてるみたいですが、良いんですか?」
「構わん、否定する理由が無いからな」
「そ、それってまさか、フューム様もリュウイチを!?……むぅ……!」
な、なんで僕を睨むんだよみぃ姉。睨むならフュームを睨め。
当の本人は鼻で笑い僕を面白いものを見るかのように視線をむけている。
「不愉快だわ……兄さんは誰にも渡さない」
「面白い、ならばリュウイチを賭けて我と勝負するか?」
「じゃあ私も!」
「私もよ!リュウイチは誰にも渡さないんだから!」
「アカリもみぃ姉もやるならあたしもやる〜♪」
戦犯が何を言ってるんだ、止めろよアホ!
「おい!こんな所で暴れるな!やるなら他の場所でやれ!」
「ならノンアルコールのサワーの一気飲み勝負よ、一番多く一気飲みできた者が勝ち……これでどう?」
ユマリの提案に賛同し、サワーの一気飲み勝負が始まった……アホだこいつら、景品にされているこちらの気持ちを無視して何が勝負だ……
「これは面白い余興ですね、見ててとても愉快です☆」
レイがそう言った途端、ユマリがホークを投げつけレイの額に命中した。
幸い持ち手の方だったので刺さってはいないが、ものすごい速度で投げつけた為か、レイはその場で倒れ気絶した
「レイったら相変わらず一言多いわね……キラ、私の許可無くあんたがこんな男みたいになったら承知しないわよ」
「えぇ?!まあ、あんな目に遭いたくはないから大丈夫……かな?あ、あはは……」
「ユキタカ君なら大丈夫だよね?」
「もちろんさ!俺は空気を読める男だからな!」
キラもミラーもトモカちゃんもユキタカも……バカップルだな……
「カイ、ハク、あの2組みたいなカップルにならないよう気をつけろよ」
「か、カップル!?い、いや、俺たちはまだそんな……って、お前からかってるだろ!?」
フッ……二人とも顔を真っ赤にしている、からかいがいのあるやつらだ。
「ま、まだまだ!ミナトは負けませーん!!」
おいおい、いつの間にミナトまで一気飲み勝負に参加してるんだ!?
「コラ、ミナト!お前まで参加してどうするんだ!」
「お、お兄ちゃんのお隣はミナトの特権です!さあ、行きますよ!!」
どんな特権だよ!?
「リュウイチ、俺たちも勝負しようぜ。炭酸ジュースの一気飲みで勝った方が飲み物代を全額払うってのはどうだ?」
「する訳ないだろ、僕は……」
「はっ!お兄ちゃん電波をキャッチしました!お兄ちゃん、頑張ってください!ミナトはお兄ちゃんを応援してます!!」
……
「だ、そうだぜ?可愛い妹の応援を無駄にする気か?」
「上等だ!カイ!キッチンに置いてある炭酸ジュースを箱ごと持ってこい!!」
「はいよ!……まったく、単純なんだかそうでないのか……たまに分からなくなるやつだよ、お前は」
「そうだね、でもリュウイチ君の周りにはたくさんの人たちがいる……良い意味でも悪い意味でも……リュウイチ君のおかげでカイ君と出会えたんだし……良い意味の方で良かった……」
「ハク……だな!」
「おい!早く持ってこい! 」
「私も手伝うよ、カイ君!」
「サンキュ!さぁてどっちが勝つかな??」
「決まっている、僕にが勝つ!さあ、行くぞ!!」
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